ロビンフッド・チェーンで53件から1843万ドル超を抽出したとの分析、ローンチ時の例外権限が初期供給を集中させる構造が浮上

Last Updated on 2026年9月28日 by oba3

ロビンフッド・チェーン(Robinhood Chain)上で発行されたミームコインを巡り、匿名のオンチェーン分析者Wazzは9月27日、7月10日から9月21日までの53件のトークンローンチを単一の勢力に関連付け、少なくとも1843万ドル相当が抽出されたとする分析を公表した。報道機関による検証では、53件すべてと1843万ドルという総額までは独立確認されていない一方、対象のうち10件ではローンチ直後に特定ウォレット群が大量の供給を取得する仕組みがオンチェーン上で確認された。

重要なのは、被害総額だけではない。多くの対象トークンで利用されたポンズV2(Pons V2)には、一般の初期購入者へ最大99%のアンチスナイピング税を課す一方、発行者が指定した最大32アドレスをその税から除外できる仕組みがある。分析対象では、この例外権限と複数ウォレットへの一括購入を組み合わせることで、一般参加者が同じ条件で購入する前に供給の大半を取得できる状態が作られていた。

目次

何が起きたのか?

Wazzの分析では、53件のミームコインローンチで70から200程度のウォレット群が利用され、多くのケースでトークン供給量の70%以上を初期段階で取得したとされる。分析者は、あるローンチで回収された資金が次のローンチを準備するウォレットへ送られる資金経路などを追跡し、45件を連続した資金移動、4件を複数ローンチで利用された署名鍵、さらに4件を共通の回収ウォレットによって関連付けたとしている。

このうち報道機関が独自にオンチェーンデータを確認した10件では、ポンズV2を利用したローンチで類似した動きが確認された。特に8月下旬以降の9件では、発行者が15から25のウォレットをアンチスナイピング税の対象外に設定し、その1から3ブロック後に複数アドレス分の購入をまとめた一つの取引が実行された。

その結果、ボンディングカーブ上に用意された供給が短時間で購入され、トークンはユニスワップV4(Uniswap v4)の流動性プールへ移行した。確認された9件では、発行者と免税対象ウォレットを合わせて初期取引終了時に供給量の82%から86%を保有していた。

分析上の最大案件はCRUMBSで約312万ドル、次いでLEGSが約290万ドル、PINKが約144万ドルとされた。ただし1843万ドルという合計額はWazzによる推計であり、第三者が53件すべてについて同額を再計算して確認したものではない。現時点では、資金経路と一部のローンチ手法について独立した確認が進んでいる段階と区別する必要がある。

なぜ重要なのか?

ポンズV2のアンチスナイピング税は、本来は新規トークンの公開直後にボットが先回りして大量購入することを抑える仕組みだ。購入税はローンチ直後に99%から始まり、数秒で低下するため、一般のボットが最初のブロックを競争する経済的なメリットを小さくする。

一方、ポンズV2の公式仕様では、チームが複数ウォレットに分けて初期購入を行う用途を想定し、発行者が最大32アドレスをこの税から除外できる。今回確認されたケースでは、その例外機能を使ったウォレット群が税を負担せず、一般購入者より早い段階で大量の供給を取得した。

問題は、複数ウォレットへ分散されていることで、表面上は多数の参加者が買っているように見える可能性がある点だ。実際には同じ主体が管理するウォレット群であれば、アドレス数が多くても経済的な所有者は分散していない。新規トークン市場では、ウォレット数と実際の供給分散を同一視できないことが改めて示された。

市場構造への影響

新規トークンの価格形成では、誰が最初の供給を取得できるかが大きな意味を持つ。ボンディングカーブでは購入が進むほど価格が上昇するため、最初に大量取得できる主体ほど低い価格帯で供給を確保しやすい。その後に一般参加者が買えば、先行保有者には高い価格帯で売却する選択肢が生まれる。

今回確認された仕組みでは、一般参加者にはアンチスナイピング税という参入障壁がある一方、発行者が指定したウォレットにはその障壁が適用されない。同じ市場へ参加しているように見えても、ローンチ時点の取引条件が異なっていたことになる。

これは単純なスマートコントラクトの脆弱性とは異なる。例外機能自体はチームによる一括購入を可能にする正式な仕様として用意されている。市場設計上の問題は、その例外権限とウォレットの分散を組み合わせた場合、初期供給が少数主体へ集中していても外部から把握しにくくなることにある。

なお、ポンズはロビンフッド自身が運営するローンチパッドではない。ロビンフッド・チェーン上で第三者が展開しているプロトコルであり、今回の分析からロビンフッドが対象トークンを発行、運営、推奨したと判断することはできない。

資金・規制・流動性との関係

分析では、あるトークンで回収された資金が次のローンチの初期ウォレットへ流れる循環も指摘されている。具体例としてDRAFTでは、保有していた98ウォレットから合計179.88ETHが同じアドレスへ集められ、その後の送金経路を経て、別のDEEDローンチの発行者や初期購入ウォレットへの資金供給につながったことがオンチェーン上で確認された。

この構造が重要なのは、一度のローンチで得た資金を次の初期供給取得へ再投入できる点だ。成功したローンチから回収したETHを次の複数ウォレットへ分散し、再び初期供給を押さえることができれば、一つの市場操作が次の市場を立ち上げる資本になる。

また、分析者によれば資金の多くはETHとして保有されている。中央の発行者が特定残高を凍結できるステーブルコインとは異なり、ETH自体を発行者権限で停止することはできない。このため事故後の対応では、資金経路の追跡に加え、中央集権型取引所など管理主体のあるサービスへ資金が到達した地点での対応が重要になる。

一方、今回の分析だけで53件すべての運営主体や法的責任が確定したわけではない。複数ウォレットの関連性はオンチェーン上の資金経路や署名パターンから推定されており、ウォレットを実際に操作していた人物の身元までは公表されていない。

初心者向け補足

ボンディングカーブとは、トークンの購入量に応じて価格が自動的に変化する仕組みだ。ポンズV2では新しいトークンの全供給が最初にカーブへ置かれ、一定量が購入されると通常の分散型取引所の流動性プールへ移行する。

スナイピングとは、新規トークンの公開直後に自動化された取引によって先回り購入する行為を指す。一般ユーザーが存在を知る前に大量取得されれば、初期価格と供給が少数ウォレットに支配されやすいため、多くのローンチパッドがその防止策を設けている。

ポンズV2では公開直後の購入に非常に高い税をかけることでスナイピングを抑える一方、発行チームが複数ウォレットで初期購入する場合のために免税アドレスを登録できる。この例外は仕様として存在する機能であり、今回問題になったのは、その機能を利用すると特定のウォレット群だけが一般参加者とは異なる初期条件で供給を取得できることだ。

そのため新規トークンを見る際には、上位保有者が何人いるかだけでは供給分散を判断できない。複数ウォレットの資金源が同じか、同じ取引でまとめて購入されていないか、発行時の例外リストに含まれていないかといった関係まで見る必要がある。

Web3Timesの視点

今回を見る際に焦点となるのは、1843万ドルという推計額の大きさだけではない。より重要なのは、不公平な初期取得を防ぐためのアンチスナイピング機能に例外権限があり、その例外を複数ウォレットと組み合わせることで、供給集中を見えにくくできたという市場設計だ。

オンチェーン市場は取引履歴が公開されているため透明だと言われる。しかしアドレスが公開されていることと、経済的な所有者が分かることは同じではない。100のウォレットが存在しても、一人が100個を操作していれば実質的な供給分散にはならない。

特にローンチ直後は価格形成の基準となる最初の供給配分が決まる。そこで一般購入者と例外ウォレットの条件が異なれば、その後の公開市場はすでに大きく偏った保有構造から始まることになる。流動性プールへ移行した後だけを見ても、この初期条件は把握しにくい。

今後ローンチパッドを見る際には、アンチボット機能の有無だけでなく、誰がその制限を解除できるのか、例外アドレスを何件登録できるのか、ローンチ後に供給集中を可視化できるのかが重要になる。安全機能が存在していても、その例外権限が強ければ市場参加者の取引条件は均一にならない。

今回の分析が示すのは、新規トークン市場の健全性を決めるのがスマートコントラクトの安全性だけではないということだ。ローンチ時の権限設計、初期供給の配分、複数ウォレットの関連性まで含めて市場を設計しなければ、オンチェーンで取引が公開されていても価格形成は少数主体に偏る可能性がある。

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