ハーモニーがL1終了とONEのイーサリアム移行を提案、独自チェーンを維持する経済性とセキュリティ負担の再評価が焦点に

Last Updated on 2026年9月7日 by oba3

レイヤー1ブロックチェーンのハーモニー(Harmony)が、自社ネットワークを完全に終了し、ネイティブトークンONEをイーサリアム(Ethereum)上のERC-20トークンへ移行する案を示した。計画では最終ブロック時点の残高を記録し、対応するONEをイーサリアム上へ自動配布する。ハーモニーは国家主体やAIエージェントを含む高度な攻撃への防御負担を終了理由として挙げている。今回を見るうえで重要なのは、同社がAI動画事業へ軸足を移すことではない。独自L1を維持するためのバリデーター、セキュリティ、ソフトウェア保守のコストを負い続けるより、イーサリアムの既存セキュリティと流通基盤へ資産を移す選択肢が現実のものになった点だ。

目次

何が起きたのか?

ハーモニーは2026年9月6日、2019年から運営してきたL1ネットワークを完全に終了し、ONEをイーサリアムへ移行する非拘束的な提案を公表した。現時点では最終決定ではなく、最終ブロックの具体的な日時や既存のバリデーターガバナンスによる正式な採決方法も確定していない。

提案ではネットワーク終了時に、利用者ウォレット、ステーキング委任、バリデーター報酬、スマートコントラクト、中央集権型取引所が保有するONEを対象として最終スナップショットを取得する。その残高に対応するERC-20版ONEを、同じイーサリアムアドレスへ配布する計画だ。通常の保有者や委任者には個別の請求手続きを求めないとしている。

一方、流動性プールやオンチェーンアプリ、マルチシグなどの状態をそのままイーサリアムへ移行することはできないとして、ハーモニーは利用者に9月10日までにスマートコントラクト内の資産やポジションを整理するよう呼びかけている。

バリデーターは9月10日からノード停止を始められる。ハーモニーは、一定条件を満たしてネットワーク終了へ協力するバリデーター向けに約137万ドルの補償枠を用意した。ONEの総供給量と発行率は移行後も維持し、将来の発行分を新しいAI動画関連事業へ利用する案も示されている。

なぜ重要なのか?

ブロックチェーンは立ち上げれば終わりではない。独自L1を維持するには、バリデーターを確保し、クライアントソフトウェアを保守し、ネットワーク監視や脆弱性対応を続け、ブリッジやウォレットなど周辺インフラも守る必要がある。

ハーモニーは2022年にホライゾン・ブリッジ(Horizon Bridge)から約1億ドル相当が流出する大規模攻撃を経験した。さらに2026年8月にはクロスシャード処理を巡る不具合を悪用した大量の不正ONE生成が発生し、ネットワーク状態を攻撃前へ戻す対応が取られた。今回の終了提案は、こうしたセキュリティ問題が続いた直後に示されている。

ハーモニー自身は、国家主体やAIエージェントによる攻撃への防御負担が大きくなったと説明している。これは単純な利用者数やトークン価格の問題ではなく、独自のコンセンサスとネットワークを維持するだけの経済的・技術的合理性があるかという判断につながる。

市場構造への影響

これまで暗号資産市場では、新しい用途を作るたびに独自L1を構築する競争が続いてきた。しかしL1には、その用途とは別にネットワーク自体を守るための継続的な固定費が発生する。

ONEがイーサリアム上のERC-20へ移れば、ハーモニーは独自のバリデーター集合やコンセンサスを維持する必要がなくなる。その代わり、トークンの取引や移転はイーサリアムのセキュリティ、ウォレット、カストディ、取引所接続へ依存する形になる。

これは「イーサリアムがすべてのL1を吸収する」と直ちに結論付ける材料ではない。しかし、利用規模が十分に伸びないL1やセキュリティ保守負担が大きくなったネットワークにとって、独自チェーンを終了して既存の大規模チェーンへ資産だけを移す選択肢が現実的であることを示す事例にはなる。

今後は新しいL1を作れるかではなく、独自のコンセンサスを維持するだけの手数料収入、利用需要、開発者基盤、セキュリティ予算を長期的に確保できるかがより厳しく問われる。

資金・規制・流動性との関係

ネットワーク移行は技術だけでなく資金の移動でもある。取引所が新しいERC-20版ONEへ対応し、既存の預入・出金を切り替えられるかによって、移行後の流動性は大きく左右される。

特にスマートコントラクト内にあるONEや流動性プールは自動的に同じ状態へ移せないため、利用者自身による撤退が必要になる。チェーン終了時のスナップショットと、実際に利用者が引き出せる資産を一致させられるかは重要な運用課題だ。

また、独自L1を終了すればバリデーターへ支払っていたONEの役割も変わる。これまで新規発行はネットワークを守る経済的インセンティブだったが、提案では将来のONE発行を新事業へ振り向ける。この変更は、トークンの発行目的そのものがセキュリティ予算から事業資金へ変わることを意味する。

初心者向け補足

L1とは、取引を記録しネットワーク参加者が合意を形成する独立したブロックチェーンを指す。ハーモニーはこれまでイーサリアムとは別のL1としてONEを発行し、独自のバリデーターによってネットワークを維持してきた。

今回の提案が実行されれば、その独立ネットワークを終了し、ONEはイーサリアム上で動くERC-20トークンになる。トークン名が同じでも、ONEを動かすための基盤はハーモニーからイーサリアムへ変わる。

ただし現時点ではあくまで非拘束的な提案であり、終了日や正式な承認方法など確定していない項目が残る。利用者にとっては、特にスマートコントラクトや流動性プール内の資産がどのように扱われるかを公式情報で確認することが重要になる。

Web3Timesの視点

今回を「ハーモニーがブロックチェーンを諦めてAIへ転換する」という話題性だけで読むと、L1市場で起きている変化を見落とす。見るべきなのは、独自チェーンを持つこと自体が資産ではなく、継続的なセキュリティ費用を伴う事業判断になっていることだ。

L1は利用者が少なくなっても、攻撃者から見た防御難度が同じように下がるとは限らない。むしろトークン価格や手数料収入が低下すれば、セキュリティへ投入できる資金が減る一方で、ネットワークを維持する責任は残る。ハーモニーの提案は、この非対称性を独自L1の終了という形で処理しようとしている。

今後確認すべきなのはAI動画事業の成否だけではない。ONEのスナップショットとERC-20移行が安全に完了するか、取引所や利用者資産を取り残さず移せるか、そして他の小規模L1でも同様に既存大手チェーンへの移行が選択肢になるかが重要だ。

独自チェーン競争の次に来るのは、すべてのL1が永久に存続する市場とは限らない。用途を残しながらコンセンサスだけを大規模ネットワークへ委ねる動きが増えれば、ブロックチェーン市場では新規L1の立ち上げだけでなく、どのネットワークへセキュリティを集約するかという再編も重要なテーマになっていく。

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