フィデリティがCLARITY法案の上院通過を要請、取引・保管ルールの明確化が既存金融の事業設計を左右する

Last Updated on 2026年7月29日 by oba3

フィデリティ(Fidelity)が、米上院に対してCLARITY法案の通過を促す公式発信を行った。同社は、明確な規則が投資家の信頼を高め、市場参加者を保護し、デジタル資産分野における米国の競争力を支えるとの立場を示している。ブラックロックやゴールドマン・サックスなど複数の大手金融機関が法案を支持したとの報道もあるが、各社による正式な支持声明の形式や対象条文は個別に確認する必要がある。今回の焦点は著名企業の数ではない。暗号資産の取引、仲介、顧客資産保護をどの監督区分で運営できるかという、既存金融の事業基盤に直結する制度条件である。

目次

何が起きたのか?

フィデリティは2026年7月、公式ニュースルームに掲載した発信を通じ、米上院にCLARITY法案を通過させるよう求めた。発信では、投資家の信頼、市場参加者の保護、世界のデジタル資産市場における米国の主導力を支えるため、明確な規則が必要だとの考えを示している。

これは法案を紹介する市場解説ではなく、成立に向けた上院の行動を明確に促す内容である。ただし、フィデリティが上院修正文案の全条項へ無条件に賛成しているのか、特定の修正を求めているのかについて、発信では詳しい条件が示されていない。

上院銀行委員会は5月14日、下院を通過したH.R.3633を基礎とする上院修正文案を15対9で可決し、本会議へ送った。委員会側は、デジタル資産市場へ明確な規則を設け、投資家保護や不正行為への対応を整える法案だと説明している。

一方、本会議で扱われる最終文案と採決時期は確定していない。銀行委員会が扱う証券分野の規定と、農業委員会が扱ってきた商品市場関連の内容を調整する必要があるほか、倫理、分散型金融、マネーロンダリング対策などにも交渉課題が残る。

ブラックロック(BlackRock)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)、フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)については、法案への期待や分析を示した資料、支持したとする二次報道が存在する。ただし、企業として上院通過を正式に要請した一次発信を確認できない場合、フィデリティと同じ強さの支持表明として扱うべきではない。

なぜ重要なのか?

フィデリティは暗号資産市場を外部から評価するだけの企業ではない。同社は取引サービス、機関向けカストディー、投資商品に加え、2026年2月にはフィデリティ・デジタル・ドル(Fidelity Digital Dollar)を開始した。法案の内容は、同社がどの資産を取り扱い、どの登録区分で顧客へ提供できるかに直接関係する。

暗号資産事業では、資産の分類が決まるだけでは運営できない。顧客注文を受け付ける主体、取引を成立させる市場、資産を保管する事業者、発行者から情報を受け取る方法などを制度上で分ける必要がある。

フィデリティの発信は、暗号資産価格への期待より、こうした事業者の責任を予測可能にする規則を求めるものと読める。ただし、同社が顧客資産分別、資本要件、注文執行などの個別条項について具体的な提案を公表したとまでは確認できない。

企業の公式支持と、法案を分析した記事も分けなければならない。金融機関が法案の成立可能性や市場への影響を解説しても、それだけで企業として法案全体を支持したことにはならない。発信主体、掲載媒体、表現、対象となる法案の版を確認する必要がある。

市場構造への影響

CLARITY法案が目指しているのは、暗号資産を一律に証券または商品へ分類することではない。資産の発行方法や取引段階などに応じ、米証券取引委員会と米商品先物取引委員会の役割を整理し、デジタル商品を扱う仲介事業者や取引基盤へ規則を設ける方向である。

既存金融にとって重要なのは、自社が暗号資産を扱えるかという入口だけではない。注文を受け付けた後にどこで執行し、顧客資産をどの主体が記録し、問題が起きた場合に誰が責任を負うのかを一連の業務として設計できることが重要になる。

現在の制度では、資産の性質や提供方法によって、証券法、商品取引法、銀行規制、州法などの適用関係が変わる。金融機関は法務判断を重ねながら、取扱資産や提携事業者を個別に決めなければならない。連邦法で基本区分が定まれば、商品開発やシステム投資の前提を置きやすくなる。

一方、法案がすべての金融機関を一つの登録制度へ統合するわけではない。銀行、信託会社、証券会社、商品関連事業者は、それぞれ異なる監督制度の下で業務を続ける可能性がある。明確化とは規制の一本化ではなく、各制度の境界と接続方法を定める作業である。

また、顧客資産保護が制度へ組み込まれても、秘密鍵の具体的な保管方式まで法律が直接決めるとは限らない。法律が事業者の義務や記録保存を定め、その後に規制当局や監督機関が詳細な運用基準を作る構成が想定される。

資金・規制・流動性との関係

規制区分が明確になれば、金融機関はデジタル資産部門へ投入する資本、人員、システムを判断しやすくなる。特に取引やカストディーでは、顧客資産と会社資産の記録、送受信の承認、内部統制、監査対応が継続的な費用となる。

登録市場へ銀行、証券会社、資産運用会社、マーケットメーカーが接続しやすくなれば、注文と資金が規制下の基盤へ集まる余地がある。ただし、法案成立だけで流動性が増えるわけではない。取扱可能な資産、資本要件、報告義務、清算方法などの詳細が実際の参加判断を左右する。

規則への対応費用が大きい場合、すでに監査や法令順守の体制を持つ大手金融機関が有利になる可能性もある。明確な制度は新規参入を促す一方、固定費を負担できない小規模事業者を市場から遠ざけることがある。

フィデリティによる支持表明が、上院の日程や支持票を直ちに変えた事実は確認されていない。企業の働きかけは審議再開を促す材料にはなり得るが、本会議時間の確保、条文調整、討論を終えるための票数は別の政治条件である。

今後は支持企業の名前を増やして数えるより、公式書簡や経営陣発言の中で、どの業務に関する規則を求めているかを見る必要がある。取引、保管、ステーブルコイン、トークン化ファンドでは、同じ法案を支持する企業でも関心が異なる。

初心者向け補足

市場構造法は、暗号資産の価格や将来価値を決める法律ではない。どの当局が市場を監督し、取引所や仲介事業者がどの規則を守り、顧客資産をどのように扱うかを定めるものである。

カストディーとは、秘密鍵を保管する作業だけを指すものではない。顧客別の資産記録、送金承認、内部統制、監査、障害時の復旧などを含む資産管理業務である。会社が経営難に陥った場合の顧客資産の扱いは、カストディー規則だけでなく破産法などとも関係する。

企業が法案の通過を求めても、法律が成立したことにはならない。上院が法案を可決し、下院と同じ文面へそろえ、大統領が署名する必要がある。成立後も、規制当局が詳細な規則を作るまでには追加の手続きが続く。

Web3Timesの視点

今回の記事で重視すべきなのは、大手金融機関が暗号資産に強気になったかではない。一次情報として確認できるのは、フィデリティが上院に法案通過を促し、規則の明確化を投資家保護と米国の競争力へ結び付けたことである。

同社はすでに取引、カストディー、投資商品、ステーブルコインへ事業を広げている。規制区分が不明確な状態は、将来参入するかどうかではなく、既存サービスをどの法人、登録、管理体制で拡張するかという現在の経営判断に影響する。

一方、フィデリティの支持を、金融業界全体の総意として広げることはできない。ブラックロック、ゴールドマン・サックス、チャールズ・シュワブなどについては、法案への言及、市場分析、制度への期待、正式な通過要請を分けて確認する必要がある。

今後追うべきなのは支持企業数ではなく、発信日、発言主体、支持の形式、対象となる法案文、条件付きか全面支持かという情報である。そのうえで、各社の暗号資産事業と照合すれば、どの規則が実際の事業拡大を妨げ、どの制度が参入条件を整えるのかが見えてくる。

フィデリティの発信は、CLARITY法案を暗号資産業界だけの規制要望ではなく、既存金融が取引と資産管理を設計するための法的基盤として位置付ける動きである。ただし、その制度が幅広い競争を生むのか、大手企業への集約を促すのかは、最終条文と成立後の規則に左右される。

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