オープンOpen USD構想がUSDCの新たな競争相手として浮上、ステーブルコイン競争は流通網と収益分配も焦点に

Last Updated on 2026年7月16日 by oba3

ドル連動型ステーブルコインのオープンUSDが、2026年後半の稼働を予定する新たな構想として注目されている。オープンUSDは、企業連合であるOpen Standardのもとで発行が計画されているステーブルコインであり、すでに市場で流通している通貨ではない。

報道では、ビザ(Visa)、マスターカード(Mastercard)、コインベース(Coinbase)などを含む140社超がOpen Standardに参加し、ブラックロック(BlackRock)、グーグル(Google)、ストライプ(Stripe)などの関係も取り上げられている。ただし、各社の役割は同じではない。発行、準備資産管理、技術支援、流通、決済サービスへの組み込みなどは分けて見る必要がある。

今回のポイントは、オープンUSDがユーエスディーコイン(USD Coin・USDC)やテザー(Tether)のユーエスディーティー(USDT)を直ちに置き換えるという話ではない。むしろ、ステーブルコイン市場で、発行体の信用力だけでなく、流通網と準備資産収益の分配が新しい競争軸になり得ることを示している。

目次

何が起きたのか?

Open Standardは、複数の企業が同じドル連動型ステーブルコインを採用し、送金、決済、金融アプリに組み込めるようにする構想である。その中核として発行が予定されているのがオープンUSDだ。構想段階では、企業が自社サービス内でステーブルコインを使いやすくし、発行体だけでなく参加企業にも経済的な利点を持たせる設計が示されている。

オープンUSDの特徴として報じられているのは、準備資産から得られる収益を、管理手数料などを差し引いたうえで参加企業へ分配する仕組みである。これは、発行体が準備資産収益を大きな収益源とする従来型モデルとは異なる。

USDCを発行するサークル(Circle)は、利用者から受け入れたドル相当額を現金や短期米国債などで保有し、その準備資産から得られる利息を重要な収益源としている。たとえばサークルは2025年第3四半期に、準備資産収益として7億1100万ドルを報告している。金利が高い環境では、この収益がステーブルコイン事業の収益性を大きく左右する。

一方、オープンUSDはまだ発行前であり、実際の発行残高、対応チェーン、償還方法、準備資産、監査体制、採用企業の利用開始状況は確認が必要である。現時点では、USDC最大級の競争相手になったと断定するより、USDCやUSDTを中心とする市場に新しい競争条件を持ち込む可能性がある構想として読むべきだ。

なぜ重要なのか?

ステーブルコイン市場では、これまでUSDTとUSDCが中心的な存在だった。USDTはグローバルな取引所や新興国需要に強く、USDCは米国規制への適合性や透明性を前面に出してきた。オープンUSDは、この二大構造に対して、流通パートナーへの収益分配という別の入口から競争を仕掛けようとしている。

この違いは、決済企業やウォレット事業者にとって重要になる。ステーブルコインを自社アプリに組み込む企業は、単に価格が1ドルに連動しているかだけを見るわけではない。償還しやすいか、規制対応が整っているか、どのチェーンで使えるか、そして自社にどのような収益機会があるかも判断材料になる。

ただし、ここでいう収益分配は、一般利用者へ直接利息を払う商品とは限らない。現時点で中心となっているのは、準備資産から生まれる収益を参加企業や流通パートナーへ分ける設計である。利用者向け利回り商品と混同すると、制度上の論点を誤って理解する可能性がある。

市場構造への影響

オープンUSD構想が示しているのは、ステーブルコインの競争が発行体だけで完結しなくなっているということだ。どれだけ信頼性の高いステーブルコインでも、取引所、決済アプリ、ウォレット、DeFi、企業決済で使われなければ、実際の市場シェアは広がりにくい。

流通先を持つ企業が強くなると、発行体はその企業に採用してもらうための条件を整える必要がある。オープンUSDの収益分配モデルは、利用者接点を持つ企業に対して、自社サービスで採用する経済的な理由を作る仕組みといえる。

この設計が実際に機能すれば、ステーブルコイン市場では、発行体の準備資産管理能力と、流通パートナーを集める力の両方が問われるようになる。ただし、発行前の段階では、USDCやUSDTの寡占構造が崩れたとは言えない。実際に市場が変わるかどうかは、発行後の残高、対応サービス、償還実績、規制対応によって判断される。

また、収益を多く分配すれば流通先を集めやすくなる一方、発行体側の利益は薄くなる。準備資産管理、監査、コンプライアンス、償還対応には継続的なコストがかかる。成長を優先するあまり、発行体の持続性が弱くなれば、長期の信頼にはつながらない。

資金・規制・流動性との関係

ステーブルコインは、暗号資産市場の待機資金であり、オンチェーン決済の基盤でもある。利用者はビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)を売買するだけでなく、ドル連動資産としてステーブルコインを保有し、送金、取引所の証拠金、DeFi、企業決済に使う。

そのため、どのステーブルコインが主要な流通先を押さえるかは、市場の流動性に関わる。取引所やウォレットがオープンUSDを採用すれば、利用者の待機資金の一部が移る可能性がある。反対に、USDCやUSDTが既存の流動性、償還体制、規制対応で優位を維持すれば、新規通貨の成長は限定される。

規制面では、収益分配の設計が焦点になりやすい。発行体が一般利用者へ直接利息を払う場合と、参加企業へ準備資産収益を分配する場合では、制度上の扱いが同じとは限らない。誰が収益を受け取り、どの契約に基づいて支払われ、利用者にどのように表示されるのかが重要になる。

資金面では、ステーブルコイン発行体は短期米国債市場とも結びつく。発行残高が増えれば、準備資産として保有される国債や現金同等物も増える。オープンUSDが実際に大きな残高を集めるなら、暗号資産市場だけでなく、決済企業や金融アプリの収益配分にも影響が出る可能性がある。

初心者向け補足

Open Standardは企業連合や運営構想の名前で、オープンUSDはその構想の中で発行が予定されているドル連動型ステーブルコインである。会社名と通貨名が似ているため、分けて理解するとわかりやすい。

ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨と価格が連動するように設計された暗号資産である。1枚が1ドルに近い価値を保つように作られ、暗号資産取引、送金、決済、DeFiで広く使われている。

発行体は、利用者から受け取ったドルを準備資産として保有し、その裏付けとしてステーブルコインを発行する。準備資産が短期米国債などで運用される場合、金利収益が発生する。この収益を発行体だけが得るのか、流通に協力する企業にも分けるのかが、今回の競争のポイントになる。

ただし、オープンUSDは現時点では稼働前の構想である。新しい通貨名を見かけても、正式な発行元、対応サービス、償還方法、準備資産、監査情報が確認できるまでは、送金や保有を急いで判断すべきではない。

Web3Timesの視点

オープンUSDで注目すべきなのは、ステーブルコイン競争が発行体のブランドだけでは決まらなくなってきた点だ。USDCは規制対応と透明性で強い地位を築いてきたが、利用者の残高を実際に集めるのは取引所、決済アプリ、ウォレット、フィンテック企業である。

流通網を持つ企業が、発行体に対してより良い収益条件を求めるようになれば、ステーブルコイン市場の力関係は変わる。オープンUSDの収益分配モデルは、その変化を先取りする設計といえる。ただし、これはまだ計画段階の話であり、市場シェアの変化は発行後の利用実績を見なければ判断できない。

今後の焦点は、オープンUSDがいつ正式に発行されるのか、どのチェーンに対応するのか、準備資産と償還体制をどう示すのか、そして参加企業が実際に自社サービスへ組み込むのかである。発行前の構想では、流通網の大きさと実際の流動性は別物として扱う必要がある。

ステーブルコイン市場は、発行量、透明性、規制対応に加え、流通先への収益分配を競う段階に入りつつある。ただし、最終的に信頼を得るのは、発行後に償還が安定し、準備資産が透明で、利用者と企業の双方にとって使いやすい通貨である。オープンUSDはその候補として注目されるが、評価は実装後のデータで決まる。

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