CFTCが受動型取引ソフト開発者へ紹介ブローカー登録のノーアクション措置を拡大、コード提供と金融仲介を分けるDeFi規制の境界が具体化

Last Updated on 2026年9月19日 by oba3

米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)の市場参加者部門が2026年9月17日、一定条件を満たす「受動型ソフトウェア提供者」に対し、紹介ブローカーとして未登録であることを理由に執行措置を勧告しないノーアクション方針を公表した。対象は暗号資産ウォレットやDeFiフロントエンドに限らず、利用者をCFTC登録済みの先物取次業者、紹介ブローカー、指定契約市場へ接続するソフトウェア提供者に広く適用できる。重要なのはDeFi開発者を一律に規制対象外へしたことではない。利用者の注文を単に技術的に伝達する者と、資産を預かり、売買判断や注文執行へ介入する金融仲介者の境界を、具体的な条件で切り分け始めた点だ。

目次

何が起きたのか?

CFTC市場参加者部門はスタッフレター26-25を発行し、条件を満たす受動型ソフトウェア提供者とその関係者について、紹介ブローカーまたは紹介ブローカーの関連人物として登録していないことのみを理由に執行措置を勧告しないとした。

今回の措置は、2026年3月にセルフカストディ型暗号資産ウォレットを開発するファントム・テクノロジーズ(Phantom Technologies)へ個別に与えたスタッフレター26-09を、同様の条件を満たす事業者へ広げるものだ。従来はファントムだけがその個別レターへ依拠できたが、新方針では資格を満たすソフトウェア提供者が必要な通知や誓約を行うことで同様の扱いを利用できる。

対象となるソフトウェアは、市場データや保有ポジションを表示し、イベント契約、永久先物を含むCFTC監督下のデリバティブについて、利用者自身が登録事業者へ注文を送信できるフロントエンドなどを想定する。ソフトウェア提供者は取引量に応じた手数料を受け取ったり、特定の登録事業者や商品を案内したりすることも一定範囲で認められる。

ただしノーアクション措置には10の条件がある。利益相反やリスクの開示、利用者が登録事業者へ直接アクセスできること、広告・マーケティング規則への対応、記録保存、CFTCへの通知などが求められる。ソフトウェア提供者と接続先の登録事業者が、対象業務に関する法令違反について共同責任を負う旨を書面で誓約する条件も含まれる。

なぜ重要なのか?

DeFi規制では、スマートコントラクトやフロントエンドを作っただけで金融仲介業者として登録が必要になるのかが長く問題になってきた。従来の紹介ブローカー規制は、報酬を得ながら顧客を勧誘し、先物注文を受け付けたり仲介したりする事業者を想定している。

一方、ソフトウェアは同じ画面を提供していても、人間のブローカーと同じ役割を果たしているとは限らない。今回CFTCは、利用者が自分で注文を決め、ソフトウェアがその注文を登録市場へ機械的に送るだけなら、一定条件の下で登録仲介業者と同じ扱いをしない道を示した。

逆に、コード提供者という名称だけで免除されるわけではない。資産を保管したり、明示的な買い・売りシグナルを生成したり、注文をどの市場へ送るか裁量を持ったりすれば、今回の対象となる受動型ソフトウェアの範囲から外れる。

市場構造への影響

今回の方針が重要なのは、DeFiをプロトコル単位で「分散型か中央集権型か」と分類するのではなく、機能ごとに規制責任を分ける方向が見えることだ。

例えば一つのウォレットやフロントエンドが、利用者インターフェースだけを提供し、顧客資産は登録済み先物取次業者や清算機関が保管し、注文執行は指定契約市場が担う構造であれば、ソフトウェア開発会社自体がすべての仲介ライセンスを持つ必要性は小さくなる。

この分業が定着すれば、規制済みの市場インフラと新しいユーザーインターフェースを組み合わせやすくなる。暗号資産ウォレットからイベント契約や永久先物へアクセスするサービスでも、フロントエンド、顧客口座、取引所、清算を別々の事業者が担当する市場設計が可能になる。

ただし今回の措置は未登録市場へ自由に接続することを認めるものではない。対象となる取引は登録済みの先物取次業者、紹介ブローカー、指定契約市場との取引に限られ、規制された市場基盤へ接続することが前提になる。

資金・規制・流動性との関係

CFTCが線を引いたのは、顧客資産と注文執行を誰が支配するかという点だ。対象となる受動型ソフトウェア提供者は、デリバティブポジションを裏付ける顧客資産を保有・管理せず、注文のルーティングや執行について裁量を持たないことが求められる。

利用者の証拠金や担保は、指定契約市場の清算機関や登録済み先物取次業者など既存の規制された保管構造に残る。そのためCFTCは、フロントエンドの技術革新を認めながら、顧客資産保護や清算という金融上の責任は既存制度側へ維持する構造を選んでいる。

また今回のノーアクション措置は正式な恒久規則ではない。CFTCが将来、ソフトウェア開発者への紹介ブローカー登録義務について規則やガイダンスを施行するまでのスタッフ方針であり、市場参加者部門の見解にとどまる。CFTC全体を法的に拘束するものでもなく、条件変更や停止の余地も残る。

初心者向け補足

紹介ブローカーとは、米国のデリバティブ市場で顧客を勧誘したり注文を仲介したりする事業者の登録区分だ。自ら顧客資産を保管しない場合でも、取引を仲介する役割によって登録が必要になることがある。

ノーアクションとは、法律そのものを変更したり正式な免許を与えたりする制度ではない。一定条件を守る限り、担当部門が特定の登録違反について執行を勧告しないという行政上の方針を示すものだ。

今回の対象は暗号資産開発者だけではない。CFTCは受動型ソフトウェア提供者を暗号資産関連サービスに限定しておらず、条件を満たせば他のデリバティブ取引ソフトにも利用できる枠組みとしている。

Web3Timesの視点

今回をDeFi開発者への規制緩和としてだけ見ると、制度設計の重要な部分を見落とす。CFTCが示したのは、ソフトウェアを書くことと金融仲介を行うことの間に、機能ベースの境界を作る考え方だ。

その境界は比較的明確だ。コードを提供し、利用者自身が注文を決め、登録市場へ直接送信するだけなら受動型ソフトウェアとして扱う余地がある。一方、資産を預かり、売買判断を生成し、注文執行を支配すれば金融仲介者に近づく。

今後確認すべきなのは、どのウォレットやフロントエンドがスタッフレター26-25を利用するか、登録取引所がどこまで外部ソフトウェアとの接続を認めるか、そしてCFTCがこのスタッフ方針を正式な規則へ移す際に10の条件をどう変更するかだ。

DeFiの制度化では、プロトコル全体を一つの金融機関として扱う方法だけが選択肢ではない。コード、インターフェース、顧客資産、注文執行、清算を機能ごとに分け、それぞれ誰が支配しているかで責任を決める方法もある。今回のノーアクション方針は、米国がその後者の市場設計を具体化し始めた事例として見る必要がある。

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