Last Updated on 2026年9月22日 by oba3
ビザ(Visa)が、ミームコイン購入を通常のデジタル商品として処理していた決済経路について、暗号資産取引として扱うよう処理事業者へ是正を求めたと報じられた。対象となったのは、暗号資産インフラ企業クロスミント(Crossmint)がロビンフッド・ウォレット(Robinhood Wallet)やFomoへ提供していたカード購入機能だ。これまで一部取引は書籍や映画、デジタル画像などに使われる加盟店カテゴリコードMCC 5815で処理され、通常のカード利用と同様にポイントやキャッシュバックが付与されていた。今回の焦点は、暗号資産をカードで買えるかどうかではない。同じ購入でもどの商流コードでカード網へ流すかによって、報酬、リスク管理、取引条件が変わる決済インフラの構造にある。
何が起きたのか?
9月19日の報道によると、ビザは暗号資産決済を処理する事業者に対し、クロスミント経由のミームコイン購入をMCC 5815のデジタルメディア取引として扱わないよう求めた。決済処理を担うチェックアウト・ドットコム(Checkout.com)にも、現在の分類は適切ではないとの指示が伝えられたとされる。
発端となった調査では、ロビンフッド・ウォレットとFomoからWIFなどのミームコインをVisaやMastercardのクレジットカードで購入したところ、取引がMCC 5815として処理され、通常のカードポイントやキャッシュバックも付与された。JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)はVisa取引について暗号資産購入を示す分類が付いておらず、通常報酬の対象になるべきではないとの見解を示し、ビザへ確認を求めていた。
一方、クロスミントは対象となるデジタル商品について、関係するパートナーとの審査を経て分類しているとの立場を示してきた。今回の是正措置については報道段階の部分もあり、クロスミントはビザなどから正式な指針変更があれば対応すると説明している。
なぜ重要なのか?
ビザの2026年4月版加盟店データ基準では、暗号資産の直接購入は原則としてMCC 6012または6051を使用し、暗号資産取引であることを示す専用の取引情報も付与する必要がある。これに対しMCC 5815は、電子形式で提供される書籍、映画、音楽、デジタル画像などを対象とするコードだ。
つまり今回の争点は、ミームコインが証券に該当するかという証券規制の分類とは別に、カード決済網の中で何を購入した取引として扱うかという問題である。クロスミントは一部ミームコインをデジタル収集品に近いものとして説明してきたが、カードネットワークでは暗号資産購入に独自の分類基準が存在する。
商流コードが変われば、カード発行会社は暗号資産購入として報酬対象外にしたり、独自の利用条件を適用したりできる。利用者から見えにくいMCCが、実際には決済の経済条件を左右している。
市場構造への影響
暗号資産と従来型カード網の接続では、ウォレットの画面やApple Payの使いやすさだけで市場条件が決まるわけではない。その裏側で、販売者、オンランプ事業者、決済処理会社、カードネットワーク、カード発行銀行が取引データを受け渡している。
加盟店カテゴリコードは、その取引が飲食なのかデジタル商品なのか金融取引なのかをカード網へ伝える基本情報になる。ここが異なれば、報酬判定だけでなく、不正検知や発行銀行のリスク管理にも影響する。
今回の対応によって、ミームコインだけをデジタル商品として別経路へ流す余地が狭まれば、暗号資産購入は商品名にかかわらずカード網の金融取引ルールへ組み込まれやすくなる。暗号資産決済の普及が、既存金融から独立した商流を作るのではなく、既存の分類・監視制度へ統合される方向が見える。
資金・規制・流動性との関係
MCC 6051は非金融機関による暗号資産や外貨などの購入、MCC 6012は金融機関による金融サービスなどに使われる。どちらを適用するかは取引主体の性質によって異なるため、今回の報道だけからクロスミント関連取引がすべて一つのコードへ統一されるとは断定できない。
重要なのは、暗号資産購入であること自体を決済網へ正しく伝えることだ。発行銀行はその情報を使って、ポイント付与、利用制限、リスク管理などを判断する。チェースの報酬規約でも暗号資産を含む現金類似取引は通常ポイントの対象外とされており、正しい分類がなければカード会社側のルールを実行しにくくなる。
一方、分類の厳格化はカードによる暗号資産購入を禁止するものではない。オンランプは引き続き利用できても、暗号資産購入としての手数料や報酬条件が適用されるという違いが生じる。
初心者向け補足
MCCとは加盟店カテゴリコードのことで、カード会社が店やサービスの業種を識別するための番号だ。例えば飲食店と航空会社では異なるコードが使われ、カード会社はその情報をポイント付与や不正検知などに利用する。
今回問題になったMCC 5815はデジタルメディア向けで、通常の暗号資産購入に指定されているコードではない。そのためミームコイン購入がこの分類で流れると、カード発行会社には一般的なデジタル商品購入のように見える場合がある。
また、SECが一部ミームコインを収集品に近いものとして論じることと、Visaがカード決済上どのMCCを使わせるかは別の制度だ。証券法上の資産分類が、そのままカードネットワークの商流分類を決めるわけではない。
Web3Timesの視点
今回を見るうえで重要なのは、カード対応の有無よりも「カード網に何の取引として認識させるか」だ。暗号資産を数回のタップで購入できても、裏側では取引分類によって報酬やリスク管理の条件が変わる。
今後確認したいのは、猶予期間終了後にクロスミント経由の購入へどのMCCと専用取引情報が適用されるのか、カード発行会社が報酬や手数料をどう扱うのか、Mastercardが同様の対応を取るのかである。
暗号資産の利用体験が一般的なデジタル商品購入へ近づいても、決済インフラ側では金融取引として識別する仕組みが残る。今回の是正は、暗号資産とカード網の統合が進むほど、表面のUXではなく加盟店コードや取引識別子といった既存金融のデータ標準が経済条件を決めることを示している。
