ソーファイが年換算250億ドル超のカード取引をSoFiUSD決済へ移行、Mastercard網の清算レールにステーブルコインが組み込まれる

Last Updated on 2026年9月23日 by oba3

ソーファイ(SoFi)は2026年9月22日、マスターカード(Mastercard)のグローバル決済ネットワーク上で、ドル建てステーブルコインのソーファイUSD(SoFiUSD)を使ったカード取引の決済を開始した。対象はソーファイ銀行のデビットカードとクレジットカード事業で、年間換算250億ドルを超える取引量を見込むカードプログラム全体を段階的にブロックチェーン決済へ移行する。重要なのは、消費者が店頭でステーブルコインを支払う仕組みではない。利用者や加盟店のカード体験を大きく変えず、その裏側で金融機関同士が資金を清算するレールにステーブルコインを組み込む点にある。

目次

何が起きたのか?

ソーファイとマスターカードは、ソーファイ銀行のカード取引についてソーファイUSDによる決済を本番環境で開始した。両社は2026年3月に提携を発表しており、それまで計画段階だった仕組みが約6カ月で実運用へ移ったことになる。

ソーファイによると、同社のカードプログラムは年間換算で250億ドルを超える取引を処理する見込みで、この全体をソーファイUSD決済へ移行する方針だ。250億ドルはすでにステーブルコインで決済済みの累計額ではなく、対象カード事業が今後処理すると見込む年間換算取引量である。

ソーファイUSDはソーファイ銀行が発行し、米通貨監督庁の監督を受けるドル建てステーブルコインで、1ドルに対して1対1で償還できるよう主に現金で準備される。なお、発行体が銀行であってもソーファイUSD自体は銀行預金ではなく、FDIC保険の対象でもない。

なぜ重要なのか?

従来のカード決済では、消費者がカードを使った瞬間と、発行銀行や加盟店側へ最終的な資金が移る時間は一致しない。カードネットワークは取引情報を処理した後、銀行間で決済資金を移動させる必要がある。

今回ステーブルコインが入るのは、この裏側の資金決済部分だ。カード利用者が暗号資産ウォレットを用意したり、加盟店がソーファイUSDを直接保有したりすることを前提としていない。既存のカード利用体験を残しながら、金融機関間の資金移動にブロックチェーンを使う。

これまでステーブルコインは送金や暗号資産取引所の決済資産として利用される場面が多かった。今回のように既存カード網の清算へ入れば、ステーブルコインの用途が消費者向け暗号決済から金融機関のバックエンド処理へ広がる。

市場構造への影響

マスターカードはすでにUSDC、PYUSD、RLUSD、ソーファイUSDなど複数の規制対応型ステーブルコインを決済選択肢として支援する方針を示している。対応ネットワークもイーサリアム(Ethereum)、ソラナ(Solana)、ポリゴン、XRPレジャーなど複数へ広げている。

この設計では、カード網をブロックチェーンに置き換える必要はない。加盟店獲得、本人認証、不正検知、カード受付といった既存の機能をマスターカード側に残し、最終的な資金移動の一部だけをトークン化されたドルへ変更できる。

そのため競争軸も、どのステーブルコインを消費者が使うかだけではなくなる。既存の銀行、カード発行会社、加盟店が業務を変えずに、どのデジタル決済資産を裏側へ接続できるかが重要になる。

資金・規制・流動性との関係

ステーブルコイン決済の利点の一つは、銀行営業時間に依存しにくい資金移動だ。ソーファイは、加盟店が同社の法人銀行サービスを利用する場合、決済資金をソーファイ銀行口座で受け取り、24時間いつでも現金へ移せる仕組みを提示している。

これは週末や祝日にも取引が発生するカード事業にとって、資金待機時間や流動性管理を変える可能性がある。ただし、250億ドル全体が常にオンチェーンで即時決済されることや、すべての加盟店が同じ条件で即時入金を受けられることまで意味するものではない。

今後はソーファイ自身のカード事業だけでなく、同社の金融技術基盤ガリレオ(Galileo)を利用する他のカード発行会社にもソーファイUSD決済を提供する構想がある。実際に外部金融機関へ広がれば、銀行発行ステーブルコインがカード網の共通決済資産になるかを検証する段階へ進む。

初心者向け補足

カード決済でいう清算・決済は、店舗でカードをかざす操作そのものとは別だ。利用者の支払いが承認された後、カード会社や銀行の間では最終的に誰が誰へいくら支払うかを計算し、実際の資金を移す必要がある。

今回ソーファイUSDが使われるのは主にこの裏側である。そのため、利用者がスーパーでソーファイUSDを直接送金するサービスが始まったという意味ではない。

またステーブルコインを使えば自動的に決済コストが下がるとも限らない。ブロックチェーン利用料、現金への交換、準備資産管理、規制対応なども含めて、従来の銀行決済と比較する必要がある。

Web3Timesの視点

今回のポイントは、ステーブルコインがカードの表側へ登場したことではなく、既存カード網の内部へ入り込んだことだ。消費者が暗号資産を意識しなくても、裏側の決済資産だけが銀行預金や従来型の資金移動からトークン化ドルへ変わる構造が現実の取引で動き始めた。

今後見るべきなのはソーファイUSDの発行残高だけではない。250億ドル規模のカードプログラムのうち実際にどれだけがオンチェーン決済へ移るのか、決済時間や必要流動性がどう変わるのか、ガリレオ経由で他の発行銀行へ採用が広がるのかが重要になる。

さらにマスターカードが複数のステーブルコインとブロックチェーンを並行して支援すれば、一つのトークンがカード網を独占するというより、カードネットワークが複数のデジタル決済資産を吸収する構造になる可能性がある。

ステーブルコインの普及を測る指標は、ウォレット利用者数だけではなくなっている。既存のカード、銀行、加盟店が表側の仕組みを維持したまま、裏側の清算資産をどこまでオンチェーンへ移せるか。ソーファイとマスターカードの今回の本番導入は、その変化を年間250億ドル超のカード事業で検証する段階に入ったことを示している。

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