Last Updated on 2026年7月31日 by oba3
韓国政府は、暗号資産の譲渡や貸付で得た所得への課税を2027年1月1日から予定通り始める方針を改めて示した。年間の損益を計算した後、250万ウォンを超える部分に国税と地方税を合わせて22%を課す。注目すべきなのは税率の高さだけではない。同じ年の暗号資産取引では損益を通算できる一方、年間損失を翌年以降へ持ち越せないため、利益を得た年だけを切り取って課税する制度になる点である。
何が起きたのか?
韓国のク・ユンチョル(Koo Yun-cheol)経済副首相兼企画財政相は7月29日の国会審議で、暗号資産課税を2027年から実施する方針を説明した。現行法では、2027年1月1日以降に個人が暗号資産を譲渡または貸し付けて得た所得をその他所得として扱い、ほかの所得と分けて課税する。
課税対象は、売却価格などの収入から取得費用や一定の必要経費を差し引き、同じ課税年度内の暗号資産同士の利益と損失を合算した金額である。そこから年間250万ウォンの基礎控除を差し引き、残額へ所得税20%と地方所得税2%を合わせた22%を適用する。
2027年中に発生した所得については、原則として2028年5月の申告と納付が最初の手続きになる。制度は当初2022年の開始を予定していたが、取引情報を集める仕組みや投資家保護制度の整備などを理由に3回延期されてきた。
政府は現時点で再延期より実施を優先し、開始後に必要な部分を補完する考えを示している。ただし、国会では損失繰越を認めるべきだとの意見や、現在の制度のままでは国内利用者が海外交換所や分散型取引所へ移るとの懸念も出ている。
なぜ重要なのか?
課税制度を評価する際は、22%という表面上の税率だけでは実際の負担を把握できない。重要なのは、どの期間の利益と損失を一つにまとめられるかである。現行制度では、同じ年に発生した暗号資産の利益と損失は通算できるが、年末時点で損失が残っても翌年の利益から差し引けない。
例えば、ある年に1000万ウォンの損失を出し、翌年に500万ウォンの利益を得た場合、2年間では500万ウォンの損失である。しかし現行制度では、前年の損失を翌年へ持ち越せないため、翌年の利益から250万ウォンを差し引いた残額が課税対象になる。
値動きの大きい暗号資産では、利益と損失が別の年に発生することは珍しくない。損失繰越がない制度では、長期的な純利益よりも各年の実現利益が税額を決めるため、売却時期や年末のポジション調整にも影響が及ぶ。
市場構造への影響
韓国国内の交換所は、本人確認済み口座や取引履歴を通じて税務当局が所得を確認しやすい場所にある。課税が始まれば、利用者は取得価格、売却価格、手数料、交換履歴を記録し、複数の国内交換所を使った場合も年間損益をまとめる必要がある。
一方、海外交換所、自己管理ウォレット、分散型取引所、個人間取引を組み合わせると、取引履歴と取得費用の確認は複雑になる。海外で取引すれば韓国の納税義務がなくなるわけではないが、国内事業者だけで取引する場合より、税務当局が情報を収集する難度は高くなりやすい。
この差が大きいまま課税を始めれば、国内交換所を利用する人ほど取引情報を把握されやすく、国外や分散型サービスを使う人との間で申告環境に差が生じる可能性がある。制度への不満が取引場所の変更につながれば、韓国ウォン建て市場の注文量や交換所収益にも影響する。
ただし、利用者が一斉に海外へ移ると断定することはできない。韓国の交換所にはウォン入出金、国内法に基づく顧客対応、本人確認、使いやすい税務資料といった利点がある。実際の移動を決めるのは税率だけでなく、海外取引情報の報告制度、送金時の確認、申告支援、法令違反のリスクを含む総合的な負担である。
資金・規制・流動性との関係
損失繰越を認めない制度では、投資家が利益を確定する時期を調整しやすくなる。年内に利益が出ている場合、含み損のある資産を同じ年に売却して損益を相殺する動きが増える可能性がある。反対に、年をまたいで損失を確定すると翌年の利益には使えないため、年末付近の売買行動が税制の影響を受ける。
こうした取引は市場全体への新規資金流入ではなく、税負担を調整するための売却と買い直しである。特定銘柄の流動性が薄い場合、年末に損失確定の注文が集中すると売買価格の差が広がることも考えられる。
交換所側には、利用者ごとの取得費用と年間損益を正確に記録し、申告に使える資料を提供する役割が重くなる。別の交換所や自己管理ウォレットから入庫した暗号資産では、元の取得価格を国内交換所だけで判断できない場合がある。取得費用の証明が不足すれば、利用者と税務当局の間で課税所得の計算をめぐる争いが生じ得る。
政府にとっては、国内市場の課税を始めるだけでは十分ではない。海外交換所や分散型サービスを利用した取引をどのように申告させ、国内交換所との情報差を縮めるかが制度の公平性を左右する。監視を強めすぎれば自己管理や国際送金の負担が増える一方、確認手段が弱ければ国内事業者へ取引が集中しない可能性がある。
初心者向け補足
損益通算とは、同じ期間に出た利益と損失を差し引いて税額を計算する仕組みである。韓国の予定制度では、同じ年の暗号資産取引による利益と損失は合算できる。
損失繰越とは、ある年に使い切れなかった損失を翌年以降の利益から差し引く制度を指す。韓国の現行制度では暗号資産所得について、この繰越が認められていない。そのため、複数年を通じて損失が残っていても、利益が出た年には税金が発生する場合がある。
また、暗号資産を保有しているだけで直ちに課税される制度ではない。基本的には売却、交換、貸付などによって所得が確定した時点が対象になる。ただし、取引形態ごとの具体的な計算方法や証明資料については、施行前の追加指針を確認する必要がある。
Web3Timesの視点
今回の焦点は、韓国が22%の税率を採用したことだけではない。投資家の実質的な収益を一年度ごとに区切り、過去の損失を翌年へ持ち越せない設計が、売却時期と取引場所の選択を変える点にある。
国内交換所にとっては、税務情報を簡単に作成できることが新たな競争力になる。複数銘柄や複数口座の損益を自動でまとめ、外部ウォレットから入った資産の取得価格を記録できれば、利用者が海外へ移る理由を減らせる。反対に、申告手続きが複雑なままなら、手数料や取扱銘柄だけでなく税務上の使いやすさでも国外事業者と比較される。
今後確認すべきなのは、損失繰越を認める修正が行われるか、海外交換所の取引情報をどこまで把握できるか、取得費用を証明できない資産をどう評価するかである。ステーキング報酬、エアドロップ、分散型金融で得た収益など、譲渡や貸付以外の所得をどう扱うかも施行前に整理する必要がある。
課税開始そのものは制度整備の一歩だが、国内で取引した人だけが把握されやすい仕組みでは市場の公平性を保ちにくい。韓国市場への影響を判断する基準は税率ではなく、年間損益をどこまで正確に反映し、国内外の取引場所へ同じ申告義務を適用できるかにある。
