クラリティ法案の成立見通しが低下したと市場分析、未成立時はSEC・CFTCによる暫定的な制度整備の比重が高まる可能性

Last Updated on 2026年8月4日 by oba3

米国の暗号資産市場構造を定めるクラリティ法案(CLARITY Act)について、第119議会での成立確率が低下しているとの分析が相次いでいる。マーケットウォッチ(MarketWatch)は2026年7月末、調査会社キャピタル・アルファ・パートナーズ(Capital Alpha Partners)や金融サービス会社TDコーウェン(TD Cowen)が、成立可能性を30%前後またはそれ以下とみていると報じた。背景には上院日程の逼迫、政府高官と暗号資産事業の利益相反、ステーブルコイン保有への報酬を巡る銀行業界の反対がある。ただし、法案の不成立は確定しておらず、米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission・SEC)と米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)が法案停滞を理由に包括規則を加速すると公式発表したわけでもない。焦点は、立法が遅れた場合に既存法による解釈や個別規則が市場実務の空白をどこまで埋めるかである。

目次

何が起きたのか?

下院は2025年7月17日、デジタル資産市場明確化法案であるH.R.3633を294対134で可決した。法案は一定の暗号資産をデジタル商品として扱い、現物取引市場を含む監督権限をCFTCへ与える一方、証券や投資契約に関係する取引をSECの管轄へ置く枠組みを示している。

上院では下院通過文をそのまま採決するのではなく、銀行委員会と農業委員会の所管に応じて独自案の調整が進められている。上院案では、単純にステーブルコインを保有するだけで得られる利息に近い報酬、取引や決済に連動する特典、分散型金融、資金洗浄対策、顧客保護などが争点となっている。

さらに、現職大統領を含む政府高官が暗号資産を発行、支援、保有する場合の利益相反をどこまで制限するかについて、民主党側がより強い規定を求めている。上院の日程も人事承認や対ロシア制裁などに割かれ、8月休会と2026年中間選挙を前に審議時間が限られている。

こうした状況を受け、複数の市場分析は第119議会が終了する2027年1月までの成立可能性が下がったと評価した。ただし、予測会社や市場参加者が示す確率は議会の公式判断ではなく、法案の廃案を意味するものでもない。

なぜ重要なのか?

クラリティ法案の重要部分は、CFTCへ現物デジタル商品市場の包括的な登録・監督権限を新たに与える点にある。現行法の下でCFTCは商品デリバティブ市場を直接監督し、現物市場では詐欺や相場操縦への執行権限を持つが、暗号資産現物取引所全体を継続的に登録・監督する権限は限定されている。

SECも既存の証券法を解釈し、規則や免除を通じて暗号資産取引への適用を明確化できる。ただし、議会が定めた証券の範囲を自由に変更できるわけではなく、個別の解釈や規則は裁判所の審査対象となる。

したがって、法案が成立しなくても規制が消えるわけではないが、行政機関が議会の代わりに同じ包括制度を作れるわけでもない。立法が止まった期間は、SECとCFTCによる暫定的な制度形成の比重が高まる一方、現物市場監督などの空白は残る可能性がある。

市場構造への影響

SECは2026年3月17日、連邦証券法を暗号資産へ適用する際の解釈を公表した。デジタル商品、デジタル収集品、デジタルツール、ステーブルコイン、デジタル証券などを整理し、非証券の暗号資産であっても、販売方法や契約関係によって投資契約に関係する場合があることを示した。

CFTCは同じ解釈へ参加し、自らが所管する商品取引法をSECの整理と整合的に運用するためのガイダンスを加えた。これは両機関が完全に同じ文書を共同発行したというより、SECの証券法解釈へCFTCが商品法上の運用方針を接続した構成である。

両機関は3月11日、商品定義の調和、共同規則策定、二重登録事業者の負担軽減などを進める連携覚書も締結した。ただし、この覚書は法定権限を拡大したり、SECとCFTCの管轄を統合したりするものではない。

包括法が遅れれば、発行、カストディ、取引、ステーキング、ラッピングなどが、異なる解釈や規則によって順番に整理される可能性がある。企業は一つの法律に沿って参入するのではなく、商品と取引方法ごとに複数の行政判断を確認することになる。

資金・規制・流動性との関係

個別規則による制度形成は、対応できる企業とできない企業の費用差を広げる可能性がある。複数の登録、顧客資産管理、開示、監査、法務対応へ投資できる大手金融機関は、制度が分かれていても商品ごとに参入しやすい。

一方、小規模事業者は、どの機関へ登録し、どの取引を制限し、どの免除を利用できるかを個別に判断しなければならない。具体的な退出件数は確認されていないが、対応費用が大きければ米国向け商品を減らす可能性がある。

流動性も暗号資産そのものが単純に証券市場と商品市場へ二分されるとは限らない。現物、投資契約を伴う販売、デリバティブ、顧客区分などが異なる規制経路へ分かれ、注文や顧客資産が複数の取引基盤へ分散する場合がある。

行政規則は提案、意見募集、最終化を経る必要があり、法的根拠が不十分なら裁判で無効となる可能性もある。企業にとっては規制対応費だけでなく、政権交代や司法判断によって制度が変更される不確実性も投資判断へ加わる。

初心者向け補足

SECは証券の発行や取引を監督し、CFTCは商品先物やオプションなどのデリバティブ市場を監督する。ビットコイン(Bitcoin)が商品と扱われていても、CFTCがすべての現物ビットコイン取引所を銀行や証券取引所と同じように監督できるわけではない。

法律は議会が新しい権限や制度の境界を定める。行政規則は、議会が既存法で与えた権限の範囲内で、SECやCFTCが具体的な運用条件を決める手続きである。

暗号資産そのものが非証券であっても、資金調達時の契約や販売方法が投資契約と判断される場合がある。発行時に自動的に証券となり、その後に自動的に商品へ変わるという単純な仕組みではない。

クラリティ法案が成立しなくても既存の証券法と商品取引法は残る。ただし、どの市場をどの機関が継続監督するかについて、包括法が与える明確さは得られない。

Web3Timesの視点

今回の分析を、クラリティ法案が成立するか消えるかという二択で読むべきではない。立法が遅れるほど、SECとCFTCによる解釈、免除、個別規則が、企業の上場商品や登録方法を先に決める場面が増える可能性がある。

ただし、制度形成の主導権が議会から行政機関へ完全に移るわけではない。両機関が既存権限で埋められるのは一部であり、CFTCによる現物市場の包括監督など、新たな権限を必要とする部分には引き続き立法が必要となる。

今後確認すべきなのは、予測市場の成立確率だけではない。上院銀行委員会と農業委員会の条文調整、倫理規定とステーブルコイン報酬の妥協、SEC・CFTCが正式に提案する規則や免除の内容が重要になる。

法案が第119議会で成立しない場合、米国の暗号資産制度が白紙へ戻ることはない。一方で、包括法の代わりに安定した市場区分が直ちに完成することもない。議会による法定権限の整備を待ちながら、行政機関による暫定対応の比重が高まるという二重構造が続く可能性がある。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Web3をやさしく解説するOba3

目次