Last Updated on 2026年9月20日 by oba3
コインベース(Coinbase)傘下のコインベース・デリバティブ(Coinbase Derivatives)が2026年9月18日、米国上場株やETFを対象とする永久先物の上場ルールを米規制当局へ提出した。米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)の公開記録では単一株永久先物が承認待ちとなっており、アップル(Apple)が代表的な契約例として示されている。報道では将来的にテスラ(Tesla)やエヌビディア(NVIDIA)、マイクロソフトなど50〜60銘柄程度が検討されている。これは現物株式を暗号資産取引所で販売する計画ではない。株主にならず、満期のない先物を通じて個別企業の株価へ継続的な価格エクスポージャーを持つ市場を、米国の証券先物制度へ持ち込む試みだ。
何が起きたのか?
コインベース・デリバティブは9月18日、個別株式とETFに連動する現金決済型先物の新ルールを米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission・SEC)へ提出すると同時に、CFTCへ承認を申請した。SEC資料ではCFTCによる承認はまだ得られておらず、CFTCの登録画面でも単一株永久先物は承認待ちと表示されている。
契約には固定された満期日がない。通常の先物のように特定日に最終決済する代わりに、永久先物で広く使われるファンディングの仕組みを通じ、先物価格を参照する株式価格へ近づける設計だ。
取引時間は原則として米東部時間の日曜午後8時から金曜午後5時までで、週末を除きほぼ24時間取引できる。基礎となる現物株が規制上の取引停止になれば、対応する永久先物も停止する。企業の株式分割、合併、特別配当などについてもポジションの経済的な価値を調整するルールが用意される。
なぜ重要なのか?
永久先物は暗号資産市場では主要なデリバティブ商品になっているが、米国の個別株市場では異なる規制枠組みが必要になる。今回の商品は単なる暗号資産型の合成トークンではなく、米証券法上のセキュリティー・フューチャーズ商品として扱われる。
そのためSECとCFTCの双方が関係する。コインベース・デリバティブは9月1日に証券先物商品を扱うための通知登録をSECへ行い、今回さらに具体的な上場基準、取引、清算、決済、ファンディングなどの規則を提出した。
承認されれば、暗号市場で発達した「満期を持たず、ファンディングで参照価格との乖離を調整する」という商品設計が、米国の個別株デリバティブへ正式に移植されることになる。
市場構造への影響
今回の商品で利用者は原株を購入しない。永久先物は現金決済で、保有してもアップルやテスラの株主にはならず、議決権や株式そのものの所有権も得ない。
これはトークン化株式とは異なる市場だ。トークン化株式が法的な株主権や株式所有記録をブロックチェーンへ移す方向を目指すのに対し、永久先物は現物を所有せず株価変動だけへ接続する。
コインベースの提案では、対象となる株式にも厳しい条件が設定される。初期上場時には原則として時価総額1000億ドル以上、過去6カ月の平均日次売買代金4億5000万ドル以上などが必要となる。大規模で流動性の高い銘柄から始めることで、永久先物側の価格形成が現物市場から大きく離れるリスクを抑える設計だ。
資金・規制・流動性との関係
現物株と最も異なるのは資金の使い方だ。投資家は株式代金の全額を支払って保有するのではなく、証拠金を差し入れて先物ポジションを作る。このため同じ株価へのエクスポージャーでも必要資金やリスク管理は現物取引と異なる。
ただし、米国向け商品でどの程度のレバレッジが認められるかは現時点では確定していない。SECへの提出資料では顧客証拠金について別途規則を提出するとされており、海外で提供されている株式永久先物のレバレッジ条件をそのまま米国商品へ当てはめることはできない。
永久先物ではさらにファンディング支払いが発生するため、長期間ポジションを保有するコストも現物株とは異なる。市場が拡大すれば、現物株、オプション、通常の株式先物に加え、満期のない株価エクスポージャーという新しい流動性の層が形成される可能性がある。
初心者向け補足
永久先物とは、満期日が設定されていない先物契約だ。一般的な先物には決済日があるが、永久先物では証拠金やファンディング条件を満たしている限りポジションを維持できる。
例えばアップル永久先物を買ってもアップル株を保有するわけではない。株価が上昇・下落した際の経済的な損益へ接続するデリバティブであり、株主総会での議決権などは持たない。
また今回の商品はまだ提供開始が確定していない。CFTCでは承認待ちで、証拠金を含む一部の制度詳細も今後の手続きに残されている。
Web3Timesの視点
今回の動きを「コインベースが米国株取引へ参入する」とだけ捉えると、市場設計の違いを見落とす。コインベースが持ち込もうとしているのは現物株の売買ではなく、暗号市場で定着した永久先物という価格接続方式だ。
注目すべきなのは、現物市場が閉じている時間帯にも先物側で価格形成が続くとき、翌日の株式市場とどのように価格が収れんするかだ。さらにファンディング、証拠金、取引停止、企業行動を、既存の証券先物制度の中でどこまで安定して処理できるかも重要になる。
承認された場合、個別株へのアクセス方法は現物所有、オプション、期限付き先物、トークン化証券に加え、永久先物という別の層を持つことになる。焦点は株式を暗号資産化することではなく、現物を持たずに株価リスクだけを継続的に売買する市場を、米国の規制された取引所と清算制度の中へ組み込めるかにある。
