ペイワードがハイパーリキッド上で米国向け永久先物を計画、CFTC登録基盤とオンチェーン注文板を接続する市場設計が浮上

Last Updated on 2026年9月17日 by oba3

暗号資産取引所クラーケン(Kraken)の親会社ペイワード(Payward)が、ハイパーリキッド(Hyperliquid)の公開ブロックチェーン上で米国顧客向けのオンチェーン永久先物市場を展開する計画を公表した。中核になるのは、ペイワードが2026年5月に買収を完了したビットノミアル(Bitnomial)の米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)登録基盤だ。ビットノミアルが市場の作成・運営と清算を担い、顧客口座は登録先物取次業者を通じて管理する一方、注文の照合と記録にはハイパーリキッドのオンチェーン基盤を利用する。これは米国で既存のハイパーリキッド市場をそのまま開放する計画ではない。規制ライセンスを持つ中央集権的な金融仲介機能と、公開ブロックチェーン上の取引基盤を組み合わせる新しい市場設計である。

目次

何が起きたのか?

ペイワードは2026年9月16日、米国顧客向けにオンチェーン永久先物を展開する意向を発表した。最初の展開先として予定しているのが、ハイパーリキッドのHIP-3を使った市場だ。提供開始には規制上の承認が必要であり、現時点で米国顧客がこの仕組みを使って取引できるわけではない。

計画では、ビットノミアル・エクスチェンジがHIP-3市場のデプロイヤーとなり、契約を作成、所有、管理する。ビットノミアル・エクスチェンジはCFTCに登録された指定契約市場で、ビットノミアル・クリアリングハウスは登録デリバティブ清算機関として取引の清算と決済を担当する。

顧客口座を担うのは、ペイワード傘下のニンジャトレーダー・クリアリング(NinjaTrader Clearing)だ。同社はCFTC登録の先物取次業者で、全米先物協会にも加盟している。米国顧客は同社で先物口座を開設し、ニンジャトレーダーとビットノミアル双方の許可リストに登録された口座だけが対象市場へアクセスできる計画だ。

ペイワードは2026年5月1日にビットノミアルの買収を完了している。この買収により、先物取次業者、指定契約市場、デリバティブ清算機関という米国デリバティブ取引に必要な主要ライセンスをグループ内に持つ体制を構築した。今回のハイパーリキッド計画は、その規制基盤をオンチェーン市場へ接続する次の段階に位置付けられる。

なぜ重要なのか?

永久先物は満期を持たず、ファンディングなどによって参照資産の価格との乖離を調整するデリバティブだ。暗号資産市場では大きな取引市場を形成してきたが、米国では商品設計、取引所登録、清算、顧客資産管理などの規制条件を満たす必要がある。

今回の計画で特徴的なのは、DeFiプロトコルを米国向けに全面的に中央集権化するのではなく、規制が必要な部分を登録事業者が引き受けながら、注文処理には公開ブロックチェーンを利用しようとしている点だ。

ハイパーリキッドのHIP-3は、外部の事業者が独自の永久先物市場を展開できる仕組みで、デプロイヤーは対象商品、オラクル、レバレッジ上限などを管理する。ペイワードの計画では、この仕組みを利用しながら米国向け市場だけに本人確認とアクセス制御を加えることになる。

市場構造への影響

実現した場合、従来の中央集権取引所とDeFi市場を分けてきた境界が変わる。顧客確認、規制責任、清算、口座管理は登録された企業が担当する一方、注文板と取引記録はハイパーリキッドの公開ブロックチェーン上で動くためだ。

重要なのは、現在のハイパーリキッドのグローバル市場を米国利用者へそのまま開放する仕組みではないことだ。米国向けにはビットノミアルが別の契約を作り、同社の取引所規則と清算制度の下で提供する。オンチェーン技術を利用していても、契約上の責任主体は明確に残る。

またHIP-3自体は外部デプロイヤーが市場を作れる開放的な仕組みだが、今回予定される米国市場への参加は許可制となる。プロトコルの公開性と、規制市場へのアクセス制御を別の層として組み合わせる設計だ。

この方式が定着すれば、DeFiプロトコル側が米国で取引所や清算機関を一から取得しなくても、登録事業者が規制上の入口となってオンチェーン取引技術を採用する経路が広がる可能性がある。逆に既存の取引所側も、自社システムだけで注文板を構築するのではなく、公開ネットワークを取引基盤として利用する選択肢を持つことになる。

資金・規制・流動性との関係

この市場設計では、どこで取引を照合するかと、誰が金融上の責任を負うかが分離される。ハイパーリキッドのオンチェーン注文板で取引が記録されても、米国顧客との契約、証拠金管理、清算、顧客保護についてはビットノミアルやニンジャトレーダーが規制義務を負う。

そのため、オンチェーン市場に存在する流動性を米国利用者が無条件に共有できると考えるのは早い。どの商品を上場できるか、どの程度のレバレッジを認めるか、どの参加者が取引できるかは規制承認とビットノミアル側の市場設計に左右される。

HIP-3ではデプロイヤーが市場仕様やオラクル、証拠金条件などを管理できる。ペイワードの計画が承認された場合、こうしたオンチェーン上の設定とCFTC登録市場としてのリスク管理をどのように一致させるかが重要になる。

ペイワードはハイパーリキッドを最初のプロトコルと位置付けており、同じ規制基盤を使って将来ほかのオンチェーン商品を提供する考えも示している。実現すれば、買収によって取得したライセンスが一つの取引所だけのためではなく、複数のDeFi市場を米国金融制度へ接続する共通基盤として使われることになる。

初心者向け補足

今回の計画は、米国でハイパーリキッドの既存サービスが全面解禁されるという意味ではない。米国顧客向けに新しい永久先物契約を作り、登録済みの取引所、清算機関、先物取次業者を経由して取引できるようにする構想だ。

またオンチェーンだから規制主体が存在しないわけでもない。ブロックチェーンは注文と取引履歴を処理する技術として使われるが、米国側ではビットノミアルが市場を作成・管理し、清算まで担当する。

永久先物の提供もまだ確定していない。ペイワードは計画を発表している段階で、実際の上場は規制当局の承認が条件となっている。対象銘柄、開始時期、レバレッジなどの最終条件も今後確認する必要がある。

Web3Timesの視点

今回を見る際、永久先物が米国で取引できるようになるかだけを追うと、市場設計の変化を見落とす。ペイワードが持ち込もうとしているのは、CFTC登録ライセンスをオンチェーン市場への入口として使う仕組みだ。

ビットノミアルが商品を作り、清算し、ニンジャトレーダーが顧客を管理する。その裏側でハイパーリキッドの注文板が取引を照合・記録する。この役割分担が成立すれば、中央集権型取引所かDeFiかという二択ではなく、規制責任は企業が持ち、取引技術は公開ネットワークを利用する第三の形が具体化する。

今後確認すべきなのは取引高だけではない。CFTCがこの構造をどの条件で認めるのか、既存のハイパーリキッド市場と米国向け市場の流動性をどこまで接続できるのか、証拠金と清算をオンチェーン処理とどう整合させるのかが重要になる。

ペイワードによるビットノミアル買収の価値も、ここで別の意味を持つ。ライセンス取得そのものが目的ではなく、その規制スタックを使って外部のオンチェーン市場を米国へ接続できるなら、金融インフラの競争軸は自社取引所の利用者数だけでは決まらなくなる。誰が規制された入口を持ち、そこへどのプロトコルの取引技術と流動性を接続できるかが、次のデリバティブ市場を形作る要素になっていく。

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