Last Updated on 2026年8月25日 by oba3
ソラナ(Solana)で、SOLの新規発行ペースを引き下げる案と、取引手数料からバーンするSOLを大幅に増やす案についてガバナンス投票が始まった。手数料改革案では、現在1日約650SOLのバーンがネットワーク利用状況によって最大7500〜9000SOL程度へ増えると試算されている。もう一方ではインフレ率の低下速度を2倍にし、最終的な1.5%のインフレ率へ到達する時期を2032年ごろから2029年ごろへ前倒しする。注目すべきなのはSOL価格への影響ではない。ネットワークを支えるステークと投票によって、通貨発行量、手数料の処理方法、バリデーターの収益条件まで変更できる制度が実際に動き始めたことだ。
何が起きたのか?
今回投票対象となっている中心案は、SGP-0002に対応するSIMD-0550と、SGP-0003に対応するSIMD-0553だ。SIMD-0550はSOLの年間ディスインフレ率を現在の15%から30%へ引き上げ、新規発行量の減少を加速させる。提案側の試算では、今後6年間で約1890万SOLの追加発行を抑え、最終インフレ率1.5%への到達を約3年前倒しする。
SIMD-0553は取引手数料の構造を変更する。現在は署名ごとに5000ランポートの基本手数料が設定され、その半分がバーン、残り半分がブロック生成者へ配分される。新方式では2500ランポートの基本包含手数料をバリデーターへ払い、取引が要求する計算量やデータ利用量などに応じたリソース手数料を新設し、その部分を100%バーンする。
リソース手数料は段階的に引き上げる設計で、最終段階では現在約648SOLとされる1日当たりのバーンが、ネットワーク利用状況を前提に7500〜9000SOL程度になると試算されている。ただし現在の新規発行は1日約6万SOL規模とされており、この手数料改革だけでSOL全体が直ちにデフレ資産になるわけではない。
なぜ重要なのか?
今回の二つの提案は、供給の入口と出口を同時に変更する。SIMD-0550は新しく発行されるSOLを減らし、SIMD-0553はネットワーク利用時に消滅するSOLを増やす。どちらもSOLの長期的な供給量に直接関係するため、通常の技術アップデートより金融政策に近い性格を持つ。
さらに手数料改革では、バーン量だけでなく誰が手数料を受け取るかも変わる。新しいリソース手数料はブロック生成者へ渡さず全額を消滅させる一方、基本包含手数料と優先手数料はバリデーター収益として残る。つまり供給削減とネットワーク運営者への報酬設計を一つの制度の中で調整することになる。
市場構造への影響
ソラナでは、新しいガバナンス制度によって重要提案にステーク加重投票を利用する仕組みが整えられている。提案はまずネットワーク全体の15%に相当するステークから支持を集めると正式投票へ進み、その後はステーク量に応じて投票力が配分される。
ただし単純にバリデーター運営企業だけが決める制度ではない。ネイティブにSOLをステークしている委任者は、自分が委任しているバリデーターの票を上書きし、自らのステーク分について直接意思表示できる仕組みも導入された。通常はバリデーターが大きな投票主体となる一方、最終的な投票権はステークを提供している保有者側にも残されている。
この制度が重要なのは、ネットワークの技術仕様だけでなく通貨発行まで同じガバナンス経路で変更できる点だ。中央銀行型の通貨では政策委員会が金利や供給条件を決めるが、ソラナではネットワーク参加者のステークを基準に、発行率と手数料処理を変更する。オンチェーンネットワークにおける金融政策が、コードだけで固定された仕組みから投票可能な制度として扱われ始めている。
資金・規制・流動性との関係
発行削減はバリデーターとステーカーの収益にも影響する。SIMD-0550の試算では、名目ステーキング利回りは現在の約5.84%から、変更後1年目に約4.34%、2年目に約3.00%、3年目に約2.25%へ低下する可能性がある。供給増加を抑える代わりに、ネットワークを守る参加者へ新規発行から配られる報酬も小さくなる。
そのため発行削減は、SOL保有者だけでなくバリデーターの採算性にも関係する。大規模なステークを集め、手数料収入を確保できる運営者と、小規模なバリデーターでは影響が異なる可能性がある。提案側は短期的に採算割れへ移るバリデーター数は限定的との試算を示しているが、実際の影響はSOL価格、ステーク量、ネットワーク利用、優先手数料収入によって変わる。
手数料側では、計算資源を多く要求する取引ほど負担が増える設計になる。単純にすべての取引へ同じ手数料を上乗せするのではなく、ネットワーク資源を多く消費するアプリケーションほど多く支払わせ、その追加分をバーンする。これは供給政策であると同時に、ブロックスペースの使い方へ価格を付ける仕組みでもある。
初心者向け補足
暗号資産のインフレ率とは、新しいトークンがどれだけ発行されて供給量が増えるかを示す割合だ。ソラナではネットワークを安全に維持するバリデーターやステーカーへの報酬として新しいSOLが発行されるため、発行を急激に減らせば供給増加は抑えられる一方、ネットワーク参加者の報酬も減る。
バーンはその逆で、すでに存在するSOLを永久に利用できない状態へ移す仕組みだ。今回の案では、取引時に支払われるリソース手数料を市場へ戻さず消滅させる。新規発行量とバーン量の差が、長期的なSOL供給の増減を左右することになる。
Web3Timesの視点
今回の投票を供給減少による価格材料だけで見ると、ソラナで始まったガバナンスの変化を見落とす。より重要なのは、SOLの発行率と手数料配分というネットワーク経済の根幹を、ステーク加重の意思決定で変更する仕組みが実際に使われ始めたことだ。
発行を減らせば保有者にとって希薄化は小さくなる一方、バリデーターへの報酬原資も縮小する。バーンを増やせばネットワーク利用が供給削減へつながる一方、取引ごとの資源消費に応じて利用者負担も変わる。どちらか一方だけを最大化すればよい問題ではなく、保有者、利用者、アプリケーション、バリデーターの間で負担と報酬をどう配分するかという設計になる。
さらに投票力がステーク量に連動する以上、大規模なバリデーターや委任先が金融政策へ強い影響を持ち得る。一方で委任者が投票を上書きできる仕組みは、その集中を緩和するための重要な要素になる。今後見るべきなのは提案が可決されるかだけではない。誰が実際に投票へ参加し、どの程度のステークが発行政策を決め、報酬低下後も十分に多様なバリデーターが残るのかだ。ソラナの金融政策は、固定されたコードの数字から、ネットワーク参加者が継続的に選択する制度へ踏み込み始めている。
