スタンダードチャータードがSkyを「DeFiの連邦銀行」と位置付けSKYの調査を開始、銀行アナリストの企業分析型モデルがオンチェーン金融へ拡張

スタンダードチャータードがSkyを「DeFiの連邦銀行」と位置付けSKYの調査を開始、銀行アナリストの企業分析型モデルがオンチェーン金融へ拡張

Last Updated on 2026年9月13日 by oba3

スタンダードチャータード(Standard Chartered)が、旧メーカーダオ(MakerDAO)から発展した分散型金融プロトコルSkyについて新たに調査対象とし、ガバナンストークンSKYのカバレッジを開始した。同行はSkyを「DeFiの連邦銀行」に近い存在と位置付け、ドル建てステーブルコインUSDSの発行、ガバナンスによる金利設定、外部の資本配分主体への資金供給を一つの金融モデルとして分析している。価格目標も示されたが、今回Web3Timesが見るのはその数字ではない。大手銀行のデジタル資産アナリストがDeFiプロトコルを、トークンの値動きではなく収益、資本バッファ、貸出残高、金利、資本還元という企業・金融機関に近い評価軸へ組み込み始めた点だ。

目次

何が起きたのか?

スタンダードチャータードのデジタル資産調査責任者ジェフ・ケンドリック(Geoff Kendrick)氏は2026年9月11日付の調査でSkyのカバレッジを開始した。同行はSkyについて、ステーブルコインを発行し、ガバナンスルールを設定し、資金を借りる主体へ卸売金利に近い形で資本を供給することから、オフチェーン金融でいえば中央銀行や資金供給機関に似た構造を持つと説明している。

分析の中心に置かれたのがUSDSだ。SkyではUSDSを基礎的な資金として、Spark、Grove、Obexといった独立した資本配分主体が借り入れ、それぞれ暗号資産融資、RWA、専門的な投資戦略などへ配分する。スタンダードチャータードによると、主要3主体のUSDS借入額は合計約59億ドルで、設定されている借入上限は合計175億ドルに達する。

Skyはこれらの資金供給から金利収入を得るほか、USDCを利用したペッグ安定化機能や従来のDAI関連融資などからも収益を得る。Sky自身の説明ではUSDSはプロトコルの主要な資本供給単位であり、USDSを借りた各主体が運用から得る収益とSkyへ支払う金利の差を管理する構造になっている。

スタンダードチャータードはUSDSの成長や借入利用の拡大によってプロトコル収益が増え、その一部がSKYのステーキング報酬や買い戻しへ回るという分析モデルを採用した。同行は価格目標も提示しているが、これは将来予測であり確定した価値ではない。同行自身も、利回りを提供するステーブルコイン市場の成長が想定より鈍ければ分析の前提が崩れることを主要リスクとして挙げている。

なぜ重要なのか?

これまで機関投資家向けの暗号資産調査では、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)の需給、ETF資金フロー、ネットワーク利用などが主要な分析対象になってきた。DeFiトークンについては、より暗号資産市場内部の専門領域として扱われることが多かった。

今回のSky分析は少し性質が異なる。USDSという負債に近い役割を持つ資産、その資金を配分する主体、プロトコルが得る金利収入、損失を吸収する準備資本、トークン保有者への価値還元を組み合わせ、一つの金融事業として評価しているからだ。

つまりDeFiを見る際の質問が「このトークンに需要があるか」から、「どれだけ資本を調達し、誰へ貸し出し、どの程度の利ざやを得て、損失に備える資本をどれだけ持ち、余剰収益をどう配分するか」へ変わる。銀行やノンバンクを分析するときに近い視点がオンチェーン金融へ入り始めている。

市場構造への影響

Skyの構造では、プロトコルがすべての資金を直接運用するわけではない。USDSを発行し、ガバナンスで資金供給条件を設定し、複数の独立した資本配分主体へ資金を渡す。その主体が実際の融資やRWAなどへ資本を配置する。

この構造をスタンダードチャータードは、中央的な資金供給主体と商業銀行に似た関係として分析した。もちろんSkyは法的な中央銀行でも商業銀行でもなく、預金保険や中央銀行制度を持つわけでもない。今回の表現は経済的な機能を説明するための比喩として使われている。

それでも、大手銀行がこうした機能分解を使ってDeFiを分析する意味は大きい。オンチェーンプロトコルの評価が、総預かり資産やトークン価格だけではなく、貸出残高、資本効率、金利収益、準備資本、収益還元といった比較可能な金融指標へ近づくためだ。

同じ手法が他のDeFiへ広がれば、レンディング、ステーブルコイン、オンチェーン信用市場などを、銀行や資産運用会社と並べて分析するための共通言語が増える可能性がある。

資金・規制・流動性との関係

スタンダードチャータードの分析では、Skyが保有する損失吸収用の資本バッファも重要な要素になっている。同行の調査時点では約9000万ドルのバッファがあり、これを1億5000万ドル程度まで積み上げた後には、より多くの余剰収益をSKYのステーキング報酬や買い戻しへ回せるとの想定が置かれている。

ここでも銀行分析との共通点が見える。収益が増えたかだけではなく、その利益をまず損失吸収能力の強化へ回すのか、それとも資本提供者へ還元するのかを見るためだ。ただしSKYは銀行株ではなく、保有者の法的権利やガバナンス構造も株式とは異なるため、同じ評価方法をそのまま適用できるわけではない。

また分析の成否はUSDSへの需要に大きく依存する。主要な資本配分主体には現在の借入額を大きく上回る利用枠が設定されているが、枠が存在することと実際に借り入れ需要が生まれることは別だ。USDS供給、借入需要、金利差、信用損失のすべてを継続して確認する必要がある。

機関投資家にとっては、このようなデータをオンチェーンで継続観測できる点も特徴になる。貸出残高や担保、ステーブルコイン供給などの一部を高頻度で確認できれば、四半期決算中心の企業分析とは異なる調査手法が形成される余地がある。

初心者向け補足

Skyは以前メーカーダオとして知られていたDeFiプロトコルで、USDSやDAIなどのドル連動型ステーブルコインを中心に金融機能を提供している。SKYはその仕組みのガバナンスなどに関係するトークンだ。

今回スタンダードチャータードがSkyを「DeFiの連邦銀行」と表現したからといって、Skyが米連邦準備制度や認可銀行になったわけではない。USDSを発行し、資金の利用条件を設定し、他の主体へ資本を供給する機能が似ているという分析上の比喩だ。

また銀行がSKYのカバレッジを開始したことは、顧客資金でSKYを購入したことや、機関投資家による採用が確定したことを意味しない。調査部門が評価モデルを作り、投資家向け分析の対象へ加えたという段階である。

Web3Timesの視点

今回を見るうえで重要なのは、スタンダードチャータードが示したSKYの価格目標ではない。大手銀行のアナリストがDeFiプロトコルを、金融機関と同じように収益源、資本配分、準備資本、金利、トークン保有者への還元まで分解して評価し始めたことだ。

これは機関投資家が暗号資産を見る際の対象範囲を広げる可能性がある。ビットコインを希少資産、イーサリアムをネットワークとして分析するだけでなく、DeFiをキャッシュフローを生み出すオンチェーン金融事業として比較する枠組みが加わるためだ。

今後見るべきなのは価格目標へ到達するかではない。USDS供給がどこまで伸びるか、SparkやGroveなどへの資本配分が収益を生むか、信用損失をどのバッファで吸収するか、そしてオンチェーンで確認できる数字を銀行アナリストが継続的な評価モデルとして利用できるかが重要になる。

DeFiが機関市場へ入る条件は、単に規制された取引所へ上場することだけではない。伝統金融の調査部門が理解できる収益構造とリスク指標に翻訳され、他の金融事業と比較可能になることも一つの入口になる。スタンダードチャータードによるSkyの新規カバレッジは、DeFiが銀行の外側にある実験的市場から、銀行アナリストが継続的に分析する金融セクターへ入り始めた事例として見ることができる。

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