Last Updated on 2026年8月2日 by oba3
テザー(Tether)は2026年第2四半期に約15億ドルの純営業利益を計上した一方、USDTの準備資産が負債を上回る超過額は約41億1000万ドルとなった。第1四半期末の約82億3000万ドルからほぼ半減している。利益を生み続けていることと、償還時の損失を吸収する余力が増えることは同じではない。今回見るべきなのは利益額の大きさではなく、短期米国債やレポ取引を中心とする流動資産に、金、ビットコイン、担保付き融資などを加えた準備構成が、価格変動時にどれだけの余裕を残すかである。
何が起きたのか?
テザー・インターナショナル(Tether International)は7月31日、BDOが保証業務を行った2026年第2四半期の準備金報告書を公表した。6月30日時点の総資産は約1877億5100万ドル、総負債は約1836億4200万ドルで、資産が負債を約41億1000万ドル上回った。
負債のうち約1836億2200万ドルは発行済みデジタルトークンに関係する。USDTなどの総発行額は約1845億8900万ドルで、テザー自身が保有するトークンなどを調整した金額が報告上の負債として計上されている。
テザーによると、第2四半期の純営業利益は約15億ドルだった。主な収益源は米国財務省短期証券とレポ取引である。短期金利から継続的な収益を得る事業構造は維持されたが、超過準備金は3月末の約82億3000万ドルから6月末には約41億1000万ドルへ減少した。
報告書は、第1四半期末から第2四半期末までの超過準備金減少を一つの項目だけで説明していない。資産の時価変動、グループ内の資本移動、準備構成の変更などを分けて確認する必要があり、15億ドルの営業利益がそのまま超過準備金へ積み上がったわけではない。
なぜ重要なのか?
超過準備金は、USDT保有者への償還に必要な負債額を超えて保有している資産である。準備資産の市場価格が下落した場合や、資産を現金化する際に費用が発生した場合に、負債超過へ陥るまでの緩衝材となる。
約41億1000万ドルの超過額が残っているため、報告日時点では資産総額が負債総額を上回っている。ただし、約1836億ドルのトークン関連負債に対する割合は約2.2%であり、第1四半期末より余裕は小さくなった。絶対額だけでなく、発行残高に対する比率で見ることが重要になる。
一方、利益が続いている点も無視できない。米国債とレポ取引から得る収益は、超過準備金を将来積み直す原資になり得る。問題は利益をどの程度準備金に残し、金やビットコイン、株式、他の事業投資へどれだけ配分するかである。
市場構造への影響
6月末の準備資産のうち、米国財務省短期証券は約1149億6100万ドル、翌日物レポは約186億2600万ドル、期間付きレポは約69億9300万ドルだった。現金、短期国債、レポなどを合計した短期流動資産は約1406億4300万ドルで、総資産の約75%を占める。
この構成は、大規模な償還が発生した際に短期間でドルを用意するうえで重要である。特に米国債短期証券は満期までの期間が短く、レポ取引も短期間で決済されるため、長期債や未上場投資より現金化しやすい。
一方、準備には約188億3800万ドルの金、約58億200万ドルのビットコイン(Bitcoin)、約37億6100万ドルの上場株式、約52億4500万ドルのその他投資も含まれる。これらは価格上昇時に超過準備金を押し上げる一方、相場が下落すれば資産額を減らす要因になる。
テザーは第2四半期に金保有を約14トン増やし、合計146トン超とした。金は米国債とは異なる値動きを持つため分散効果を期待できるが、ドルで償還されるUSDTの負債に対し、金価格と為替の変動を引き受ける資産でもある。超過準備金が薄くなるほど、こうした非ドル資産の値動きが準備余力へ与える影響は大きくなる。
資金・規制・流動性との関係
USDTの信用を支える第一の条件は、会計上の総資産が負債を上回ることだけではない。利用者から償還請求が集中した際、準備資産を大幅な値下がりなしで現金化できるかが重要になる。
テザーは担保付き融資を第2四半期に約23億8000万ドル減らし、残高を約134億5400万ドルとした。融資には担保と清算措置が設定されていると説明されているが、米国債と比べると、借り手、担保価格、清算手続きに関する信用リスクが加わる。融資残高の削減は、準備資産の現金化しやすさを高める方向の変化と評価できる。
ただし、短期流動資産だけでトークン関連負債の全額を覆っているわけではない。大規模な償還が長期間続けば、金、ビットコイン、株式、融資などを含む資産構成全体が問われる。平常時の総資産額と、危機時に短期間で換金できる金額は区別して考える必要がある。
BDOの報告も、6月30日という一時点の資産と負債について保証を提供したものであり、その前後の残高や継続的な取引すべてを監査したものではない。また、異常な市場環境や主要な保管先、取引相手が流動性を失った場合には、報告上の評価額で資産を直ちに換金できない可能性があると記載されている。
規制当局や機関投資家が注目するのは、利益額より、短期流動資産の比率、超過準備金、関連当事者への資金移動、担保付き融資、価格変動資産の上限である。ステーブルコインが銀行決済や証券取引へ広く組み込まれるほど、準備金の質と開示頻度は個別企業の問題ではなく、暗号資産市場全体のドル流動性に関わる。
初心者向け補足
USDTは、利用者が1USDTをおおむね1ドルとして使えるよう設計されたステーブルコインである。テザーは発行したトークンに対応する資産を保有し、条件を満たす顧客から償還請求を受けた場合にドルを支払う。
超過準備金とは、発行したUSDTなどに関する負債より多く持っている資産の部分を指す。例えば100ドルの負債に対して103ドルの資産があれば、3ドルが超過準備金となる。この3ドルが市場価格の下落や費用を吸収する余裕になる。
利益と超過準備金は同じ数字ではない。会社が利益を得ても、配当、資本移動、別事業への投資、保有資産の値下がりがあれば、準備金の余剰は増えないことがある。反対に、金やビットコインの価格上昇によって、営業利益とは別に資産評価額が増える場合もある。
また、今回公表されたのは一定の基準に基づく保証報告であり、一般的な上場企業の完全な連結財務諸表監査とは範囲が異なる。準備資産の存在と評価を確認するうえで重要な資料だが、テザー関連企業のすべての事業や資金移動を示すものではない。
Web3Timesの視点
今回の決算を15億ドルの利益という数字だけで評価すると、USDTを支える余力の変化を見落とす。第1四半期から第2四半期にかけて超過準備金が約41億ドル減少した事実は、利益を確保できることと、その利益が償還用の緩衝材として残ることが別であると示している。
ただし、余剰が半減したからといって、直ちにUSDTの裏付け不足を意味するわけではない。6月末時点では資産が負債を約41億1000万ドル上回り、準備の約4分の3は短期米国債やレポなどで構成されている。短期償還への対応力を見るうえでは、超過額だけでなく、この流動資産の規模も合わせて確認すべきである。
次の報告で見るべきなのは、四半期利益が増えたかではない。超過準備金が再び積み上がったか、金とビットコインの比率がどう変わったか、担保付き融資の削減が続いたか、USDT発行量の増加に短期流動資産が追い付いているかが重要になる。
テザーの収益力は短期金利と米国債保有から生まれている一方、信用の土台は利益率ではなく、いつでも償還に応じられる資産構成にある。USDTの評価を左右するのは、会社がどれだけ稼いだかより、稼いだ資金を準備金へ残すのか、値動きのある資産や他事業へ振り向けるのかという配分方針である。
