Last Updated on 2026年8月29日 by oba3
ソラナ(Solana)で、新規SOLの発行増加率をより速く低下させる提案SGP-0002が可決された。提案は現在15%となっている年間ディスインフレ率を30%へ引き上げ、最終的なインフレ率1.5%へ到達するまでの期間を約5.7年から約2.8年へ短縮する。賛成率は67%で、必要だった3分の2の基準をわずか約0.33ポイント上回った。今回見るべきなのはSOLの供給量が減るという結果だけではない。バリデーターと委任ステーカーによる投票が、ネットワークの発行量、ステーキング収益、将来の資金配分を直接変更する金融政策決定へ発展した点だ。
何が起きたのか?
ソラナの初の本格的なオンチェーン・ガバナンス投票で、SGP-0002が可決された。この提案はSIMD-0550と連動し、SOLの年間ディスインフレ率を15%から30%へ倍増させる。
最終投票では賛成が約67%、反対が約25.16%、棄権が約7.84%となり、投票参加率は対象ステークの約60.7%だった。SOL数量では約1億7629万SOLが賛成、約6619万SOLが反対、約2063万SOLが棄権に回った。可決には66.67%以上の支持が必要だったため、結果は極めて僅差だった。
終盤には大手暗号資産取引所クラーケン(Kraken)の投票変更も結果に影響した。当初反対へ投じられた同社の大部分のステークが最終盤に賛成へ移り、提案は必要な基準を超えた。一方、フィグメント(Figment)など一部の大規模ステーキング事業者は反対票を投じた。
ただし投票成立と同時に発行量が変わるわけではない。SGP-0002はSIMD-0550の実装を支持するガバナンス決定であり、実際の変更にはクライアントへの実装とネットワーク上での機能有効化が必要になる。
なぜ重要なのか?
今回変更されるのはインフレ率そのものを一度に半減させる仕組みではない。ソラナでは新規SOLの発行率を毎年一定割合ずつ下げ、最終的に1.5%へ近づける設計が採用されている。その低下速度を15%から30%へ引き上げる。
提案者のモデルでは、従来の仕組みなら最終インフレ率1.5%へ到達するまで約5.7年かかるところ、新方式では約2.8年に短縮される。今後6年間では、新たに市場へ発行されるSOLが従来計画より約1890万SOL少なくなる試算だ。
つまり既存保有者の希薄化は小さくなる一方、バリデーターやステーカーが新規発行から受け取る報酬もより速く低下する。供給削減とネットワーク運営者の収益をどこで釣り合わせるかが今回の議論の核心だった。
市場構造への影響
ソラナではSOLの新規発行がステーキング報酬としてネットワーク参加者へ配分される。そのため発行量の変更は単なるトークン供給の問題ではなく、バリデーターへ支払われるセキュリティ予算にも影響する。
SIMD-0550の試算では、名目ステーキング利回りは従来より速く低下し、現在の想定約5.84%から1年後に約4.34%、2年後に約3%、3年後には約2.25%へ下がる。実際の収益はステーク比率、手数料、MEV、バリデーター手数料などにも左右されるため、この数字がそのまま全参加者の利回りになるわけではない。
重要なのは、新規発行というネットワークからの補助を減らしながら、取引手数料やMEVなど実際の利用から生まれる収益でバリデーター経済を支えられるかだ。ソラナの利用量が十分に増えなければ、小規模バリデーターにとって報酬低下が重くなる可能性もある。
資金・規制・流動性との関係
新規SOLの発行量が減れば、ステーカーへ毎年配られる新しいSOLも減る。これは市場へ供給され得る資産量を抑える一方、ステーキングによって受け取れる収益も縮小させる。そのため同じ政策変更でも、長期保有者とバリデーターでは影響の受け方が異なる。
特に大手取引所やカストディアンは、多数の利用者から委任されたSOLをまとめて投票できる。今回クラーケンの投票変更が結果を左右したことは、オンチェーン・ガバナンスで巨大な委任ステークを持つ事業者の影響力を示した。
一方、ソラナの新しいガバナンスでは、SOLを委任している保有者が自分のステーク分についてバリデーターとは異なる投票を行える仕組みも設けられている。今後はステーキング事業者を選ぶことだけでなく、委任者自身が金融政策の意思決定へ参加する重要性も増す。
初心者向け補足
インフレ率とは、新しいSOLがどれくらい増えるかを示す割合だ。ディスインフレ率は、そのインフレ率を毎年どれだけ小さくするかを示す。今回30%になるのはSOLの発行量そのものではなく、発行率が低下していく速度である。
例えば発行率が一定割合ずつ低下して最終的に1.5%へ到達する仕組みなら、低下速度を速めるほど毎年追加されるSOLは早く少なくなる。一方、新規SOLはステーキング報酬にも使われるため、供給を減らすほどバリデーターやステーカーの報酬も早く縮小する。
Web3Timesの視点
今回の可決をSOLの供給削減ニュースだけとして読むと、重要な変化を見落とす。ソラナでは新規発行量というネットワークの金融政策を、オンチェーン投票で変更する仕組みが実際に動き始めた。
しかも結果は67%対66.67%という極めて小さな差で決まった。発行量を減らしたい保有者、ステーキング収益を維持したいバリデーター、利用者から大量のSOLを委任されている取引所など、異なる経済的利害が同じ投票へ集約されている。
今後見るべきなのはSOL価格ではない。SIMD-0550がいつ機能有効化されるのか、ステーキング報酬の低下によってバリデーター数や委任先がどう変わるのか、取引手数料やMEVが新規発行の減少をどこまで補えるのかが重要になる。ソラナのガバナンスはコード変更を承認するだけの仕組みから、誰が新規通貨発行の利益を受け取り、ネットワークの安全性をどの資金源で支えるかを決める金融政策の場へ踏み込んだ。
