Last Updated on 2026年8月29日 by oba3
SBIホールディングス(SBI Holdings)が、インドネシアの総合投資プラットフォームAjaibグループ(Ajaib Group)へ戦略出資し、株式20%を取得した。Ajaib側によると出資額は2億7000万ドルで、同社はSBIの持分法適用関連会社となる。注目すべきなのは大型出資そのものではない。SBIは日本で円建てステーブルコインJPYSCを発行し、シンガポールなどでもデジタル資産事業を広げている。そこへ株式、暗号資産、ステーブルコイン、決済を扱うAjaibが加わることで、日本円のオンチェーン流動性を東南アジアへ届ける販売・決済網を構築できるかが焦点になる。
何が起きたのか?
SBIは2026年8月28日、子会社を通じてAjaibグループへ戦略出資し、約20%の株式を取得したと発表した。SBIの公表資料では出資額は明示されていないが、Ajaibは2億7000万ドルの投資を受けたと説明している。今回の資金調達により、Ajaibが2019年以降に集めた資金は累計5億ドルを超えた。
Ajaibはインドネシアでオンライン証券から事業を拡大し、現在は国内外株式、債券、投資信託、ETF、暗号資産、ステーブルコイン、コモディティ、外国為替に加え、決済や預金サービスも提供する。法人や機関投資家向けにはOTC型のステーブルコイン決済と流動性サービスも展開している。
SBIは日本でSBI VCトレードを運営し、英国では暗号資産マーケットメーカーのB2C2、シンガポールではデジタル資産関連事業を展開している。今回Ajaibを加えることで、東南アジアを中心にデジタル資産取引所や金融サービスを結ぶSBI APACデジタル経済圏構想を拡張する。
なぜ重要なのか?
SBIは2026年6月、スターテイル・グループ(Startale Group)と共同開発した円建てステーブルコインJPYSCの提供を開始した。発行者はSBI新生信託銀行で、SBI VCトレードが流通を担う。信託型の電子決済手段として設計され、将来的には国内外のパブリックブロックチェーン上で利用できる体制への移行を目指している。
ただし現時点のJPYSCはSBI VCトレードの口座内利用が中心で、外部ウォレットへの自由な移転はまだ始まっていない。Ajaibへの出資によってJPYSCが直ちにインドネシアで提供されると正式決定したわけでもない。このため今回の出資は、円ステーブルコインの海外流通そのものが開始されたニュースではなく、そのための顧客接点と金融インフラを先に確保する動きとして見る必要がある。
市場構造への影響
ステーブルコイン市場では、トークンを発行することより、どこで入手し、何に使い、どこで法定通貨へ戻せるかが重要になる。SBIは日本でJPYSCの発行・流通基盤を持つ一方、Ajaibは東南アジア最大級の人口を持つインドネシアで数百万人規模の個人投資家と法人顧客への接点を持つ。
この二つが接続されれば、円建て資金を日本国内だけに閉じず、暗号資産取引、投資商品、企業決済、将来的なRWA取引へ利用する経路を作れる。SBIがシンガポールで進めるオンチェーン日本株ファンドやデジタル証券事業とも組み合わせれば、日本で発行された金融資産と円建て決済手段を同じ地域ネットワークへ載せる構造も考えられる。
資金・規制・流動性との関係
円ステーブルコインが海外へ広がるには、日本で発行できるだけでは不十分だ。現地でステーブルコインを扱える規制事業者、法定通貨との交換手段、顧客確認、流動性提供、法人決済などが必要になる。Ajaibはすでに暗号資産とステーブルコインを扱い、法人向けOTC決済も提供しているため、こうした機能を持つ現地拠点としてSBIとの相性が良い。
一方、JPYSCをインドネシアで実際に流通させるには、日本側だけでなく現地規制への対応も必要になる。今回の発表では導入時期、対象顧客、交換通貨、具体的な決済用途は示されていない。今後はAjaibの既存サービスへJPYSCを直接組み込むのか、法人決済やRWAの決済資産から利用を始めるのかが確認点になる。
初心者向け補足
ステーブルコインは、円やドルなどの法定通貨と価値を連動させるデジタル資産だ。しかし発行されただけでは広く使われない。銀行口座から購入できる場所、売買できる市場、送金先、現金へ戻す窓口が必要になる。
今回のAjaibへの出資は、この流通部分を作る動きと考えると分かりやすい。SBIが円建てのデジタル資産を作り、Ajaibのような現地金融プラットフォームが利用者や企業との接点を持てば、日本円をブロックチェーン上で国境を越えて利用する経路を増やせる。
Web3Timesの視点
今回見るべきなのは、SBIがインドネシアのフィンテックへ2億7000万ドルを投じたという企業投資だけではない。SBIはJPYSC、暗号資産取引所、マーケットメイク、RWA、オンチェーン証券、金融向けブロックチェーンを個別に整備しており、Ajaibはそれらを東南アジアの利用者へ届ける流通拠点になり得る。
特に重要なのは、円ステーブルコインの競争が発行残高だけでは決まらない点だ。ドル建てステーブルコインが強い理由の一つは、世界中の取引所、ウォレット、決済市場へ広く接続されていることにある。円建て資産が対抗するには、同じように複数国へまたがる入口と出口が必要になる。
今後注目すべきなのはJPYSCがAjaibでいつ扱われるかだけではない。SBI VCトレード、シンガポールのデジタル資産拠点、Ajaibの顧客基盤、B2C2の流動性、RWA商品がどこまで一つのネットワークとして結ばれるかが重要になる。SBIが構築しようとしているのは単独の円ステーブルコインではなく、発行した円をアジア各国の投資・取引・決済へ循環させる金融流通網だ。
