ロンドン証券取引所とペイワードが英国主要100株のトークン化を計画、24時間型の株式流通と規制取引所を接続する新市場が焦点に

Last Updated on 2026年9月2日 by oba3

ロンドン証券取引所(London Stock Exchange・LSE)と、クラーケン(Kraken)の親会社ペイワード(Payward)が英国株のトークン化で提携した。ペイワードはロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100社を、原株式で1対1に裏付ける「xStocks」として提供する計画だ。さらに規制当局の承認を条件として、2027年にはロンドン証券取引所の新市場「LSE 24」でxStocksを扱う構想も示された。見るべきなのは株価に連動するトークンが増えることだけではない。既存証券取引所の市場基盤と、暗号資産市場で発展した24時間型のオンチェーン流通をどこまで一つの株式市場として接続できるかが重要になる。

目次

何が起きたのか?

ロンドン証券取引所とペイワードは2026年9月1日、英国株式市場のトークン化を進める提携を発表した。ペイワードは今後数週間をめどに、ロンドン証券取引所に上場する最大手100社の株式をxStocksとしてトークン化し、対象地域の投資家へ提供する。

xStocksは公開企業の株式を1対1で裏付けるトークン化商品で、中央集権型取引所だけでなく、自己管理型ウォレットやオンチェーンアプリケーションの間を移動できる設計となっている。ペイワードによると、今回の英国株xStocksは110以上の市場の適格利用者へ提供する予定だ。一方、現時点でxStocksは英国居住者には提供されておらず、米国や米国人も対象外となっている。

さらにロンドン証券取引所は、規制当局の承認を前提として2027年からxStocksを「LSE 24」に上場させる計画を示した。LSE 24は通常のメイン市場とは別に運営される新しい取引市場で、月曜日から金曜日までほぼ連続して取引できる24時間型の市場を目指している。顧客テストは2026年末までに始め、2027年前半にはまず上場取引型商品を扱う予定だ。

なぜ重要なのか?

今回の計画には二つの段階がある。最初に提供されるxStocksは、既存株式を裏付け資産として保有し、その価格を反映するトークン化商品だ。これとは別に両社は将来、ロンドン証券取引所の市場参加者が株式そのものをオンチェーンで発行・管理できる仕組みも検討する。

後者では、従来の株式と同じ権利を持ち、通常株式と完全に交換可能なトークン化株式を目指すとしている。この違いは大きい。原株を裏付けるデジタル商品を流通させる段階から、企業が発行する正式な株式そのものをブロックチェーン上で扱う段階へ進めるかどうかが、今後の焦点になるためだ。

ロンドン証券取引所は同時に、デジタル証券の発行、記録、移転、資産管理、決済を担うデジタル証券預託基盤も開発している。今回の提携はトークンを発行するだけの実験ではなく、取引所、決済、資産管理、オンチェーン流通を組み合わせる取り組みの一部として位置付けられる。

市場構造への影響

従来の英国株はロンドン市場の取引時間、証券会社の口座、既存の決済インフラを中心に流通してきた。一方、xStocksは対応する暗号資産取引サービスやウォレットを通じ、対象地域では24時間365日の移転や取引が可能になる。この二つをロンドン証券取引所自身が接続しようとしている点が今回の特徴だ。

特に注目したいのは、英国企業の株式を海外の投資家へ届ける経路だ。ペイワード側では110以上の市場へオンチェーンで配布し、ロンドン証券取引所側では将来的にLSE 24という規制市場で受け入れる構想になっている。実現すれば、株式の流通範囲は「企業が上場した国内取引所の営業時間」という枠から離れ、異なる時間帯やデジタルウォレットをまたぐ形へ広がる余地が出てくる。

ただし、xStocksが24時間365日利用できることと、ロンドン証券取引所そのものが週7日稼働することは同じではない。LSE 24は現時点では月曜日から金曜日の近連続取引を想定しており、規制承認もまだ得ていない。この違いを分けて見る必要がある。

資金・規制・流動性との関係

株式を24時間動かせるようにするには、注文を成立させるだけでは足りない。証券と資金を同時に受け渡す決済、所有者記録、企業行為、マネーロンダリング対策などを時間外でも処理できる基盤が必要になる。

ロンドン証券取引所グループは、トークン化証券の決済と資産管理を担うデジタル証券預託基盤に加え、オンチェーンと既存決済網の双方に対応するデジタル・セトルメント・ハウスも開発している。商業銀行マネーを使った即時決済を組み合わせることで、株式側だけをトークン化して資金決済が従来時間に残る問題を減らそうとしている。

これらが実際に接続されれば、取引時間を延ばすだけでなく、異なる地域に分散している株式の注文や資金を一つの市場へ集めやすくなる可能性がある。一方で、24時間化によって流動性が自動的に増えるわけではない。時間帯ごとの参加者数やマーケットメーカーの配置によっては、流動性が分散する課題も残る。

初心者向け補足

今回最初に提供されるxStocksは、ロンドン証券取引所に上場している株式そのものをブロックチェーンへ移す仕組みではない。原株式を1対1で裏付けとして保有し、その株式の値動きを反映するトークン化商品だ。

そのため「xStocksが登場すること」と「正式な株主権を持つ株式がオンチェーン化されること」は分けて考える必要がある。ロンドン証券取引所とペイワードは、将来的には通常株式と同じ権利を持つネイティブなトークン化株式も検討するとしているが、これはまだ構想段階にある。

今回のニュースが特徴的なのは、その将来構想に既存の大手証券取引所自身が参加していることだ。暗号資産企業が株式連動トークンを販売するだけだった段階から、株式を上場させている取引所側がオンチェーン市場との接続方法を設計する段階へ対象が広がっている。

Web3Timesの視点

今回を「英国株100銘柄がトークン化される」というニュースだけで読むと、重要な部分が抜け落ちる。Web3Timesが注目するのは、取引所公認の株式市場と24時間型のオンチェーン流通がどこで結び付くかだ。

ペイワードはxStocksによって、証券会社の口座に閉じていた株式エクスポージャーをウォレットやオンチェーンアプリへ持ち出せる仕組みを構築してきた。一方、ロンドン証券取引所はLSE 24、デジタル証券預託基盤、デジタル決済基盤を整えようとしている。今回の提携では、この二つの方向が一つの計画に入った。

さらに重要なのは、その先に通常株式と同じ権利を持つトークン化株式まで検討されていることだ。そこまで実現すれば、株式のトークン化は価格連動商品を暗号市場で売買する仕組みから、発行、所有、取引、決済を一体で再設計する段階へ進むことになる。

今後見るべきなのはトークン化される100銘柄の値動きではない。LSE 24への上場が規制当局から認められるか、オンチェーン市場と規制市場の間で同じ資産をどこまで移動できるか、そして正式な株主権を持つネイティブ株式まで実現するかだ。その境界が薄くなれば、世界の株式市場は取引時間だけでなく、投資家へ届く経路そのものを再設計する局面に入る。

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