CLARITY法案の上院通過に必要な支持確保が再び不透明に、SECとCFTCの監督区分を恒久法へ固定する交渉が正念場

Last Updated on 2026年9月14日 by oba3

米国の暗号資産市場構造法案であるデジタル資産市場明確化法案(Digital Asset Market Clarity Act・CLARITY Act)の成立見通しが再び不透明になっている。上院共和党は9月10日に改訂文を提示し、DeFiや信用組合に関する条項を修正したが、9月15日に予定される手続き採決で必要な60票を確保できるかは確認されていない。今回見るべきなのは法案が来週可決されるかという短期予想ではない。米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission・SEC)と米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)の暗号資産監督権限を、政権交代でも容易に変わらない連邦法としていつ固定できるかという問題だ。

目次

何が起きたのか?

上院共和党は9月10日、約630ページに及ぶCLARITY法案の新しい改訂文を提示した。シンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員は、民主党側から求められた114を超える項目を取り込んだと説明している。

改訂案では、実質的な管理主体を持つDeFi取引プロトコルについてCFTCへの登録を求める仕組みを追加し、DeFi保護条項が予測市場などへ意図せず広がらないよう対象範囲も修正した。信用組合が暗号資産関連サービスを扱う権限についても文言が整理されている。

一方、改訂後も重要な政治的争点は残った。政府高官と暗号資産事業の利益相反を巡る倫理規定、ステーブルコインへの利回りや報酬、マネーロンダリング対策などについて、民主党議員や銀行業界との合意は成立していない。

上院では9月15日に法案審議へ進むための手続き採決が予定されており、前進には60票が必要となる。共和党は上院で53議席を持つため、全共和党議員が賛成したとしても超党派の支持が必要だが、9月13日時点で60票が固まったとは確認されていない。

なぜ重要なのか?

9月15日の採決はCLARITY法案の最終可決ではない。60票を得れば正式な本会議審議や修正手続きへ進めるという段階であり、その後も追加修正と最終採決が必要になる。

それでもこの採決が重要なのは、米国が暗号資産市場の監督区分を議会制定法として確立できるかを左右するからだ。CLARITY法案では、一定のデジタル商品について現物市場をCFTCの監督へ置き、証券として発行・販売される資産や証券市場についてSECの権限を残す構造が中心となっている。

現在でもSECとCFTCはそれぞれ規則制定や執行を進められる。しかし行政機関による規則は、政権や委員長が変われば政策方針も変化し得る。議会が管轄区分を法律として定めれば、企業にとってより長期的な事業判断の基準になる。

市場構造への影響

法案が停滞した場合、米国で暗号資産取引が直ちに無規制になるわけではない。SEC、CFTC、財務省など既存の規制当局は現在の権限に基づいて監督を続ける。

問題は、新しいデジタル資産が証券なのか商品なのか、現物取引所がどの当局へ登録するのか、DeFiの管理主体をどこまで金融仲介業者として扱うのかについて、包括的な一つの法律がない状態が続くことだ。

その結果、企業は行政規則、個別の登録判断、司法判断を組み合わせて事業モデルを設計する必要がある。CLARITY法案の意味は暗号資産を単純に緩和することではなく、どの市場を誰が監督するかという基礎的な市場構造を恒久化することにある。

資金・規制・流動性との関係

今回の交渉を難しくしているのは、SECとCFTCの管轄だけを決めれば終わらない点だ。銀行業界はステーブルコイン保有者への報酬が銀行預金を流出させ、地域銀行の融資原資を弱める可能性を問題視している。

民主党側では、政府高官が暗号資産事業から経済的利益を得る場合の倫理規定も主要論点となっている。DeFiについても、管理主体を持たないソフトウェア開発者を保護しながら、実質的にサービスを支配する事業者へどこまで登録やマネーロンダリング対策を求めるかという調整が残る。

つまり60票を集めるための交渉は、暗号資産業界だけの規制条件を決める作業ではない。銀行預金、ステーブルコイン、DeFi、法執行、政府倫理といった複数の制度を一つの市場構造法へ配置する作業になっている。

初心者向け補足

SECは主に株式や債券などの証券市場を監督し、CFTCは商品先物やデリバティブ市場を監督する米国の規制機関だ。暗号資産では、一つのトークンがどちらの制度に入るのかが長く争点になってきた。

CLARITY法案は、この境界を法律で整理しようとするものだ。法案が成立すればすべての暗号資産がCFTCへ移るわけではなく、証券として扱われる資産には引き続きSECの権限が残る。

また上院で9月15日の手続き採決を通過しても、それだけで法律にはならない。上院が最終文を可決した後、すでに法案を通している下院との文言を一致させ、両院が同一内容を承認したうえで大統領の署名が必要になる。

Web3Timesの視点

今回を見るうえで、CLARITY法案の成立確率を日々追うことだけでは制度の本質を捉えにくい。重要なのは、SECとCFTCが現在それぞれ進めている暗号資産監督を、いつ議会制定法として固定できるかだ。

行政機関によるルール形成だけでも市場は前へ進める。しかし次の政権で解釈が変われば、企業は再び登録方法や商品分類を見直す必要が生じる。機関投資家や大手金融機関が長期間の資本を投入するには、こうした政策変更リスクを小さくする恒久法の意味が大きい。

今後見るべきなのは9月15日に何票集まるかだけではない。倫理規定、ステーブルコイン報酬、DeFi、銀行業界との調整をどの条文で処理し、その結果としてSECとCFTCの管轄区分が最終文にどう残るかが重要になる。

CLARITY法案が停滞すれば、米国の暗号資産規制が止まるわけではない。しかし包括的な市場構造を行政規則ではなく恒久法へ移す時期はさらに後ろへずれる。今回の上院交渉は暗号資産への賛否というより、デジタル金融の監督権限を誰に与え、その境界をどこまで政権交代から切り離せるかを決める局面として追う必要がある。

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