コインシェアーズが欧州向けUCITS基盤を開始、暗号資産運用会社が機関投資家の既存ファンド制度へ接続

Last Updated on 2026年7月22日 by oba3

暗号資産運用会社コインシェアーズ(CoinShares)は2026年7月21日、欧州の規制対応ファンド市場へ参入するため、新たなUCITS基盤を開始した。第1号商品として、ビットコイン採掘企業の株式へ分散投資するコインシェアーズ・ビットコイン・マイニングUCITS ETFを投入し、ドイツ取引所クセトラで取引を開始した。

注目点は、ビットコイン(Bitcoin)関連ETFが一つ増えたことだけではない。これまで暗号資産連動商品を保有しにくかった欧州の年金基金、保険会社、プライベートバンクなどに対し、既存の運用規程で採用しやすいファンド形式を用意した点にある。暗号資産業界が独自の商品枠を広げるのではなく、伝統的な資産運用制度の中へ販売経路を作る動きといえる。

目次

何が起きたのか?

コインシェアーズが開始したのは、今後複数のUCITS適格ファンドを組成できる共通基盤である。UCITSは欧州で広く利用されている投資信託の規制枠組みで、運用、資産分散、情報開示、資産管理などに一定の要件を設けている。

同社によると、欧州のUCITS市場は2026年4月時点で純資産総額26兆3000億ユーロに達している。コインシェアーズは、この市場へ第1号商品を投入すると同時に、今後のデジタル資産関連戦略やテーマ型ファンドを同じ運営基盤から展開する方針を示した。

最初の商品はアイルランド籍で、アイルランド中央銀行の認可を受けたUCITS ETFである。上場するビットコイン採掘企業で構成されるコインシェアーズ・ビットコイン・マイニング指数に連動し、構成銘柄を実際に保有する現物完全複製方式を採用する。ティッカーはMINE、年間経費率は0.65%とされた。

同ETFはビットコインそのものを保有する商品ではない。採掘能力、収益性、財務体質、環境効率、企業統治などを基に選定された上場採掘企業へ投資し、ビットコイン関連産業への間接的な投資機会を提供する。

なぜ重要なのか?

欧州では、暗号資産を裏付けとするETPがすでに取引されている。しかし、債務証券として設計された暗号資産ETPは、金融機関の内部規程や顧客との運用契約によって保有比率を制限されたり、投資対象から外されたりする場合がある。

一方、UCITS適格ファンドは、欧州の年金、保険、銀行系運用サービスで広く使われている。機関投資家が暗号資産関連市場への投資を検討していても、既存の運用 mandate が債務証券型ETPを認めていなければ資金は動かない。今回の基盤は、投資家の関心ではなく、商品形式が資金流入を妨げていた部分を埋める狙いを持つ。

コインシェアーズにとっても、これは販売商品の追加にとどまらない。先にファンド運営、認可、管理の共通構造を整備することで、次の商品を一から設計する負担を減らし、複数の戦略を継続的に投入できる体制を作った。

市場構造への影響

暗号資産運用会社の競争は、ビットコインやイーサリアム(Ethereum)への価格連動商品を早く上場する段階から、どの投資制度へ商品を組み込めるかを争う段階へ広がっている。米国では現物ETFが機関資金の主要な入口となったが、欧州ではETFという名称だけでなく、法的な商品構造や投資信託規制への適合が重要になる。

UCITS基盤を持つことで、コインシェアーズは暗号資産の直接保有商品に限らず、採掘企業、ブロックチェーン関連株式、デジタル決済、トークン化資産などをテーマとするファンドを展開しやすくなる。投資対象が暗号資産そのものでなくても、デジタル資産経済に関係する企業やインフラを既存の株式ファンドとして組み込めるためだ。

これは、暗号資産運用会社と伝統的な資産運用会社の境界を薄くする。専門会社が暗号資産の知識を提供し、UCITS制度が投資家保護と販売網を提供する形になれば、競争軸は暗号資産の保管能力だけでなく、指数設計、企業分析、販売網、ファンド管理へ移っていく。

資金・規制・流動性との関係

機関投資家の資金は、投資対象への期待だけで動くわけではない。運用契約で認められた商品形式、保管体制、リスク上限、日次の価格算定、換金手続きなどを満たす必要がある。UCITSはこうした要件を共通化し、多数の販売会社や資産管理サービスが扱える状態を作る。

コインシェアーズは、既存の暗号資産ETP事業とUCITS基盤を並行して運営する。これにより、暗号資産を直接裏付けとする商品を利用できる投資家と、株式型またはファンド型の商品しか保有できない投資家へ、異なる経路から接触できる。

流動性の面では、クセトラへの上場により取引時間中の売買が可能になる。ただし、上場していることだけで十分な取引量が生まれるとは限らない。実際の市場規模は、運用資産残高、売買価格の開き、マーケットメーカーの参加、欧州各国での販売登録によって決まる。

第1号ETFは、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、イタリアでの越境販売に向けた通知が行われている。制度面の入口は整ったが、年金基金や保険会社が実際に資金を配分するかは、商品の運用実績、リスク管理、取引規模を確認する必要がある。

初心者向け補足

UCITSは、欧州連合で広く流通できる投資信託の共通ルールである。一つの国で認可されたファンドを、一定の手続きを通じて複数の欧州諸国へ販売しやすくする仕組みを持つ。

ETFは証券取引所で売買できるファンドを指し、UCITSはファンドが従う規制制度を指す。そのため、すべてのETFがUCITS商品というわけではなく、UCITSファンドの中にも取引所へ上場しない商品がある。

今回の商品はビットコイン現物ETFではない。ビットコインを採掘する上場企業の株式へ投資するため、値動きにはビットコイン価格だけでなく、電力費、設備効率、負債、経営判断、株式市場全体の動きも影響する。

Web3Timesの視点

今回見るべきなのは、ビットコイン採掘ETFの個別テーマより、コインシェアーズが繰り返し商品を組成できるUCITS基盤を確保した点である。ETFは一つの商品だが、ファンド基盤は将来の商品群と販売経路を支える。

暗号資産への機関資金導線は、米国型の現物ETFだけではない。欧州では、年金、保険、銀行の運用規程に適合するUCITSファンドが大きな役割を持つ。投資家が暗号資産を直接保有できなくても、関連企業やインフラを組み込んだ規制対応ファンドなら検討対象にできる場合がある。

一方、26兆3000億ユーロのUCITS市場へ制度上接続したことと、その資金がコインシェアーズの商品へ流入することは別である。今後は第1号商品の運用資産残高に加え、追加ファンドの投入速度、販売地域、年金や保険などの採用状況を確認する必要がある。

暗号資産運用会社が次に競うのは、単一銘柄への価格連動商品だけではない。既存金融の制度、販売会社、資産管理、投資審査へ自社の専門性を組み込めるかが問われる。コインシェアーズのUCITS参入は、暗号資産商品を特別な投資枠へ閉じ込めるのではなく、欧州の一般的なファンド制度へ移す試みとして位置付けられる。

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