トークン化RWA預金が74億ドルへ3倍超に拡大、DeFi縮小局面でもオンチェーン資金は利回り資産へ再配分

Last Updated on 2026年8月11日 by oba3

トークン化された現実資産(RWA)のオンチェーン利用が、暗号資産市場全体とは異なる方向に伸びている。コインシェアーズ(CoinShares)とトークン・ターミナル(Token Terminal)が2026年8月6日に公表した調査によると、レンディング市場や分散型取引所に預けられたトークン化RWAは、2025年第2四半期の23億ドルから2026年第2四半期には74億ドルへ3倍超に拡大した。同じ期間にDeFi全体の預金は約15%減少している。見るべきなのはRWAだけが成長したという対比ではない。オンチェーンから資金が一様に退出したのではなく、暗号資産中心の運用から国債、ファンド、プライベートクレジットなど収益を生む資産へ資金の使われ方が変わっている点だ。

目次

何が起きたのか?

コインシェアーズとトークン・ターミナルの調査は、2025年第2四半期から2026年第2四半期までのデータを分析した。ここでいうRWAには、ブロックチェーン上で移転可能なトークン化ファンド、株式、コモディティなどが含まれる。

調査期間中、RWAがレンディングプラットフォームや分散型取引所へ預けられた金額は23億ドルから74億ドルへ増加した。一方、DeFi全体の預金は約15%減った。暗号資産価格の下落や利用者による資金引き揚げがDeFi全体を押し下げる中でも、RWAを担保や取引資産として使う資金は増えたことになる。

74億ドルの中心を占めるのは、トークン化された米国債や複数資産を組み合わせたファンドだ。JTRSY、ブラックロック(BlackRock)のBUIDL、sUSDSなどに加え、JAAA、syrupUSDT、syrupUSDC、PRIMEといったプライベートクレジット関連商品、デルタニュートラル戦略のsUSDeなどが主な構成資産として挙げられている。

資金の配置先にも偏りがある。RWA預金の約70%はイーサリアム(Ethereum)上のレンディング市場に置かれており、アーベ(Aave)、モルフォ(Morpho)、カミノ(Kamino)など流動性が比較的厚い既存市場へ利用が集中している。

なぜ重要なのか?

これまでRWA市場では、何十億ドル分の資産がトークン化されたかという発行残高が注目されやすかった。しかし資産をブロックチェーン上に発行しただけでは、それが金融インフラとして使われているとは限らない。

今回の74億ドルは、単にウォレットへ保有されているRWAではなく、レンディングや取引の場へ預けられた資産を示す。国債ファンドなどを保有したまま担保として利用し、その上で別の資金を借りることができれば、トークン化資産は保有商品からオンチェーン金融の部品へ役割を広げる。

さらに特徴的なのは、この拡大がDeFi全体の成長と同時に起きていないことだ。市場全体へ大量の新規資金が流れ込み、その一部がRWAへ向かっただけなら、DeFi全体とRWAは同じ方向に増えやすい。今回はDeFi預金が減る一方でRWA預金が増えており、既存のオンチェーン資金が別のリスクと収益源を求めて移動している可能性を示している。

市場構造への影響

オンチェーン市場では長く、ビットコインやイーサリアム、ステーブルコイン、暗号資産を担保とした信用取引が中心だった。RWAが担保として増えれば、その構造に米国債やプライベートクレジットなど、現実世界のキャッシュフローを持つ資産が加わる。

これはDeFiから伝統金融への資金流出というより、同じオンチェーン市場の中で担保構成が変化していると見る方が分かりやすい。暗号資産価格への依存度が高い担保だけでなく、国債利回りなど別の収益源を持つトークンが利用できれば、利用者はブロックチェーン上から離れずに資産配分を変更できる。

取引データにも同じ方向が見える。調査によると、2025年第2四半期から2026年第2四半期にかけて、暗号資産中心のスポットDEX取引量は約70%減少した一方、トークン化RWAのスポット取引量は約220%増加した。ただしRWA側はまだ小さな市場からの成長であり、取引規模が暗号資産市場を上回ったという意味ではない。

重要なのは、オンチェーン金融の利用対象が暗号資産だけではなくなっていることだ。市場が低調な局面でも国債、金、株式、クレジットなど別の資産クラスを同じ決済基盤で扱えるなら、ブロックチェーンの利用量が暗号資産相場だけに左右されにくくなる余地が生まれる。

資金・規制・流動性との関係

RWA預金が増えている背景には、収益を生む資産を担保として使える経済的な利点がある。現金性の高いトークンだけを担保としてロックする場合、その資金は担保として置かれている間に別の収益を生みにくい。一方、国債ファンドやクレジット商品であれば、基礎資産からの収益を得ながらオンチェーン融資にも利用できる場合がある。

この仕組みは資本効率を高める一方、RWA特有の制約も持つ。トークン自体は24時間移転できても、裏付けとなる国債やファンドには運用時間、償還条件、本人確認、譲渡制限などが存在する。オンチェーン上で流動性があるように見えても、基礎資産まで同じ速度で換金できるとは限らない。

また、今回の74億ドルは市場全体に均等に分散しているわけではない。約70%がイーサリアム系のレンディング市場に集まるなど、担保として利用できる場所は限られている。RWAの発行残高が増えることと、いつでも売買や借り入れに使える流動性が増えることは分けて考える必要がある。

今後、規制対応済みのRWAとDeFiの接続が増えれば、本人確認やホワイトリストを持つ資産をどのように既存のレンディング市場へ組み込むかが重要になる。資金が74億ドルからさらに増えるかは、発行量だけでなく、担保として利用できる市場と償還経路をどれだけ増やせるかにも左右される。

初心者向け補足

RWAとは、米国債、株式、ファンド、金、プライベートクレジットなど現実世界に存在する資産や金融商品を、ブロックチェーン上のトークンとして扱う仕組みを指す。今回の調査では、その中でも外部ウォレットへ移動できるトークン化資産が主な対象になっている。

ここでいう預金は銀行預金とは異なる。RWAトークンをレンディングサービスや分散型取引所へ預け、担保や取引資産として利用している金額に近い。したがって74億ドルという数字は、RWA全体の時価総額を表しているわけではない。

この違いは重要だ。トークン化された資産が100億ドル存在しても、その大半がウォレットで保有されるだけならオンチェーン金融との接続は限定的になる。逆にレンディング市場へ預けられれば、その資産を担保に借り入れたり、別の取引へ利用したりできるようになる。

Web3Timesの視点

Web3Timesが今回注目するのは、RWA預金が74億ドルまで増えたという規模だけではない。より重要なのは、その期間にDeFi全体の預金が約15%減っていたことだ。

これは「DeFiが縮小し、RWAが代わりに成長した」という単純な世代交代ではない。同じブロックチェーン上で、資金が暗号資産中心のリスクから国債やファンドなど別の収益源へ組み替えられていると読むことができる。オンチェーン資金が外へ出るのではなく、オンチェーンに残ったまま保有する資産の種類を変えられる環境が整いつつある。

特に見るべきなのは、RWAが発行市場から担保市場へ進んでいる点だ。トークン化された国債を保有できるだけでなく、それをアーベやモルフォなどへ預けて別の金融取引に使えるなら、RWAは伝統資産をデジタル化した商品から、DeFiの信用創造を支える担保へ役割を変える。

今後追うべき数字はRWAの時価総額だけではない。74億ドルの預金がどこまで増えるのか、担保利用がイーサリアム以外にも広がるのか、RWAスポット取引量の増加が継続するのか、そして預けられた資産に対して実際にどれだけ借り入れが発生するのかが重要になる。DeFiの次の成長を測るなら、暗号資産の価格だけでなく、オンチェーン資金がどの種類の担保へ再配分されているかを見る必要がある。

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