セキュリタイズが決算未達で時間外取引20%超下落、RWA残高拡大を継続収益へ変える事業モデルが問われる

Last Updated on 2026年8月13日 by oba3

トークン化証券基盤を展開するセキュリタイズ(Securitize)が2026年第2四半期決算を発表し、トークン化資産残高と取引量が拡大した一方、売上高が市場予想を大きく下回った。売上高は1440万ドルで前年同期比5%減となり、純損失は2170万ドルへ拡大。発表後の株価は時間外取引で20%を超えて下落した。今回の決算が示したのは、RWA市場が成長していても、その資産を管理するインフラ企業の収益が同じ速度で伸びるとは限らないという現実だ。今後の焦点はオンチェーン上に何十億ドルの資産が載っているかではなく、その残高や取引を継続的な手数料収入へどこまで変換できるかに移る。

目次

何が起きたのか?

セキュリタイズは2026年8月12日、6月30日までの第2四半期決算を発表した。四半期売上高は1440万ドルとなり、前年同期の1530万ドルから5%減少した。市場では約2060万ドルの売上高が予想されていたため、大幅な未達となった。

純損失は2170万ドルで、前年同期から大きく拡大した。希薄化後1株当たり損失は2.37ドルとなった。調整後EBITDAも550万ドルの赤字で、前年同期の180万ドルの黒字から悪化している。決算発表後、セキュリタイズ株は時間外取引で約20%から21%下落した。

一方、事業規模を示す数字は縮小していない。第2四半期の平均トークン化運用資産残高は43億ドルで前年同期比16%増となり、過去最高を記録した。四半期の総取引量も53億ドルと前年同期比147%増加した。

しかし、トークン化関連売上は約784万ドルで前年同期比12%減少した。資産管理関連売上は約660万ドルへ増えたものの、トークン化資産残高や取引量の伸びが四半期売上全体の成長には結び付かなかった。セキュリタイズは2026年7月に特別買収目的会社との統合を経てニューヨーク証券取引所へ上場しており、今回が上場後初の四半期決算となった。

なぜ重要なのか?

RWA市場では、オンチェーン化された米国債、ファンド、プライベートクレジットなどの残高が主要な成長指標として使われることが多い。セキュリタイズもブラックロック(BlackRock)など大手金融機関へトークン化基盤を提供しており、管理する資産残高の拡大は事業基盤の成長を示す重要な数字だ。

ただし企業として利益を生み出すには、資産をブロックチェーン上へ載せるだけでは足りない。発行時のトークン化手数料、継続的な資産管理料、投資家管理、取引手数料、名義管理などを通じ、残高や利用量を売上へ転換する必要がある。

今回の決算では平均トークン化資産が16%増え、取引量が147%増えたにもかかわらず、売上高は5%減少した。この数字の組み合わせは、RWA市場全体の規模とインフラ企業の収益性を同じものとして見てはいけないことを示している。

特に大型機関案件では、数十億ドル規模の資産をトークン化しても、その残高全体に高い手数料率を設定できるとは限らない。顧客規模が大きくなるほど料金交渉力も強くなり、資産残高の増加率と売上高の増加率に差が生じることがある。

市場構造への影響

トークン化市場の初期段階では、「どれだけの資産がオンチェーン化されたか」が成長を示す分かりやすい指標だった。しかし上場企業として決算を開示するセキュリタイズが登場したことで、その次の評価軸が見えるようになった。

今後重要になるのは、トークン化された資産1ドル当たりからどれだけ継続的な売上を生み出せるかだ。例えば同じ43億ドルの資産残高でも、発行時に一度だけ収益が発生するモデルと、毎年管理料を得られるモデルでは企業価値が大きく異なる。

取引量についても同様だ。53億ドルの取引が発生していても、取引手数料が極めて低い場合や、一部の取引が収益化対象ではない場合には、出来高の増加がそのまま売上増にはならない。RWA市場が成熟するほど、「オンチェーン化した金額」から「その資産を使ってどのサービスが繰り返し利用されるか」へ競争軸が移る。

この変化はセキュリタイズだけの問題ではない。今後、銀行、取引所、カストディー企業、資産運用会社がトークン化基盤へ参入すれば、発行インフラそのものは価格競争に入りやすくなる。その場合、投資家管理、二次流通、担保利用、決済など、資産発行後のサービスをどれだけ取り込めるかが差別化要因になる。

資金・規制・流動性との関係

セキュリタイズの事業では、トークン化資産残高だけでなく取引頻度が収益構造を左右する。米国債ファンドのように投資家が長期間保有する商品では、大規模な残高が存在していても二次取引が頻繁に発生するとは限らない。その場合、取引手数料より資産管理やサービス収入の重要性が高くなる。

一方、トークン化証券が担保、決済、売買へ繰り返し利用されるようになれば、一つの資産から複数の収益機会を作ることができる。RWAインフラ事業者にとって、発行残高を増やすだけでなく、その資産を金融取引の中で動かす仕組みを持つことが重要になる。

規制対応もコストになる。セキュリタイズは証券の発行、名義管理、ブローカーディーラー機能など複数の規制領域に関わるため、一般的なブロックチェーン開発企業とは異なるコンプライアンス体制が必要になる。第2四半期には営業費用も増加しており、事業規模の拡大と同時にどこまで固定費を吸収できるかが収益性を左右する。

その意味では、RWA市場の資金流入を見る際もオンチェーン残高だけでは足りない。資産の発行、管理、取引、決済のどこで手数料が発生し、その収益をどの事業者が受け取るのかを見る必要がある。

初心者向け補足

RWAはリアル・ワールド・アセット(Real World Asset)の略で、米国債、不動産、プライベートクレジット、ファンドなど現実世界の資産をブロックチェーン上で管理できる形にする考え方を指す。セキュリタイズは、こうした資産をデジタル証券として発行・管理するための基盤を金融機関へ提供している。

運用資産残高が増えることと企業の売上が増えることは同じではない。例えば100億ドルの資産を管理していても、管理手数料が非常に低ければ収益は限定される。逆に資産残高が小さくても、取引や管理サービスから継続的に料金を得られる事業は高い売上を作れる場合がある。

今回の決算で重要なのもこの違いだ。セキュリタイズのトークン化資産と取引量は増えているため、RWA利用そのものが縮小したわけではない。一方、その成長を売上と利益へ転換する点では課題が残っていることが数字として表れた。

Web3Timesの視点

Web3Timesが今回注目するのは、株価が20%下落したことそのものではない。RWA市場で長く使われてきた「オンチェーン資産残高」という指標が、インフラ企業の収益性を説明するには不十分であることが見え始めた点だ。

43億ドルの平均トークン化資産と53億ドルの取引量は、セキュリタイズの基盤が実際に使われていることを示す。一方で売上高は1440万ドルにとどまり、前年同期を下回った。ここには、トークン化市場の成長と、トークン化企業の利益成長の間に別の工程が存在する。

その工程とは、オンチェーンへ載せた資産を継続的に利用される金融サービスへ変えることだ。発行後も名義管理、資産管理、売買、担保、決済などで収益を得られるなら、資産残高の拡大が長期的な売上へつながりやすくなる。逆に発行時の収益への依存が大きければ、新規案件の時期によって四半期業績が振れやすくなる。

今後見るべき数字は、RWA全体の時価総額だけではない。セキュリタイズが管理資産1ドル当たりからどれだけ収益を得られるのか、取引量増加を手数料へ変換できるのか、そして発行後の管理や流通から継続収入を増やせるのかが重要になる。トークン化市場の次の競争は、資産をオンチェーンへ載せる技術だけでなく、その資産を持続的な事業収益へ変える能力を競う段階へ進んでいる。

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