フェアミントCEOがトークン化株式の台帳乱立に警鐘、誰の株主名簿を最終記録とするかがオンチェーン証券市場の分岐点に

Last Updated on 2026年8月23日 by oba3

トークン化株式の普及が進む一方、取引所、特別目的事業体、トークンのラッパー、独自台帳が別々に増えれば、株式の所有権記録と市場流動性が分断される恐れがある。オンチェーン証券インフラ企業フェアミント(Fairmint)の共同創業者兼CEO、ジョリス・デラヌー(Joris Delanoue)がこうした問題を指摘した。焦点は、株価に連動するトークンを何種類発行できるかではない。同じ企業の株式を示す複数のトークンが存在したとき、発行会社が認める株主名簿の上で誰が正式な所有者なのか。トークン化株式が金融市場の基盤になるには、この記録を市場横断で一致させる仕組みが必要になる。

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何が起きたのか?

デラヌーは2026年8月22日に報じられたインタビューで、現在のトークン化株式市場が1960年代後半のウォール街で起きた「ペーパー危機」をデジタルな形で再現する恐れがあると警告した。当時は株式取引の急増に紙の株券を使った事務処理が追いつかず、決済遅延や記録上の混乱が広がった。これが後に証券保管・決済インフラを集約する動きにつながった。

今回デラヌーが問題視しているのは、同じ株式への経済的な権利を、取引所、特別目的事業体、カストディー型ラッパー、独自ブロックチェーン台帳などが別々に記録する構造だ。市場が拡大しても、それぞれの記録が相互に接続されなければ、所有権確認のために複数システムを照合する必要が残る。

米証券取引委員会(SEC)も2026年1月、トークン化証券には複数の形態があると整理している。発行企業自身が株式をトークン化し、そのブロックチェーン記録を正式な株主記録へ組み込む方式がある一方、第三者が株式を保管して別のトークンを発行する方式や、株価への経済的エクスポージャーだけを提供する合成型の商品も存在する。

なぜ重要なのか?

同じ企業名やティッカーを表示するトークンでも、保有者が同じ法的権利を持つとは限らない。発行会社が認める株式そのものを保有する場合もあれば、カストディアンが保管する株式への間接的な権利を持つ場合、単に株価へ連動する契約を持つ場合もある。

この違いは配当、議決権、企業行動、破綻時の扱いに直結する。ブロックチェーン上で残高が確認できても、その記録が発行企業または正式な名義書換機関の株主名簿と結び付いていなければ、オンチェーン残高だけで正式な株主であるとは判断できない。

市場構造への影響

トークン化の目的の一つは、証券取引をより速くし、24時間利用できる市場や効率的な決済を実現することにある。しかし同じ株式が複数の閉鎖された市場へ分かれれば、買い手と売り手も分散する。あるチェーンでは売買が活発でも、別のラッパーでは流動性が薄いという状態が起こり得る。

さらに厄介なのが台帳間の調整だ。一つの株式について発行会社の株主名簿、カストディアンの記録、取引所内部の台帳、ブロックチェーン上の残高が並立すれば、企業行動のたびにどの記録を基準とするかが問題になる。高速なブロックチェーンを導入しても、最後に複数台帳を照合する作業が残れば、従来市場の事務負担を別の形で再現しかねない。

資金・規制・流動性との関係

所有権記録の分断は流動性にも影響する。同じ企業の株価に連動する商品であっても、相互に交換できなければ注文は一つの市場へ集まらない。価格差を埋める裁定取引にも、ラッパーの償還手続き、取引時間、カストディー、チェーン間移転など追加の条件が発生する。

規制面では、SECが示したように、トークンの技術形式ではなく実際にどの権利を持つ商品なのかが重要になる。第三者が発行するトークンの場合には、その事業者の信用や破綻リスクまで加わる場合がある。共通の技術規格だけでなく、どの記録が法的に所有権を確定させるのかを明確にする制度設計が欠かせない。

初心者向け補足

株主名簿とは、企業の株式を誰が保有しているかを記録する正式な帳簿だ。ブロックチェーン上に株式らしいトークンが存在していても、そのトークンの保有者が株主名簿上でも株主として認められるとは限らない。

例えば第三者が100株を保管し、それを裏付けとして100個のトークンを発行する方式では、トークン保有者が直接企業の株主になるのか、第三者に対する権利を持つだけなのかは商品の契約によって異なる。一方、発行会社の正式な株主記録そのものとブロックチェーンが接続されていれば、トークン移転と株式所有権の移転を同じ記録として処理しやすくなる。

Web3Timesの視点

トークン化株式市場で見るべき数字は発行額だけではない。より重要なのは、最終的にどの台帳が「この人が株主である」と認めるのかだ。トークンを増やすことと、株式そのものをオンチェーン化することは同じではない。

フェアミントの警告が示すのは、ブロックチェーンを導入するだけでは市場の分断は解消されないということだ。各取引所や発行事業者が独自のラッパーと台帳を作れば、紙の株券は消えても、照合しなければならない記録は再び増える。

次の競争軸は、どのチェーンが多くのトークン化株式を発行するかだけではなく、発行会社、名義書換機関、取引所、カストディアンをまたいで所有権を一貫して認識できるかになる。相互運用性と正式な株主記録が結び付かなければ、24時間取引という利便性の裏側で流動性と株主権が細分化される。トークン化株式が本格的な証券市場へ成長できるかは、最終的な所有権の記録を誰が保証するのかという地味だが根本的な問題にかかっている。

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