コインベースがベース上で米国株4銘柄のトークン化を開始、1対1保管と株主権を備えた証券が24時間オンチェーン流通へ

Last Updated on 2026年8月25日 by oba3

コインベース(Coinbase)が、アップル(Apple)など米国上場株式を1対1で裏付けたトークン化株式をベース(Base)上で提供開始した。対象はまず4銘柄で、利用者は対応地域で自己管理ウォレットに保有し、24時間取引やDeFiでの利用が可能になる。今回重要なのは、株価への連動だけを目的とした合成商品ではない点だ。実際の株式を規制下のカストディーで保有し、トークン保有者がその株式への直接的な請求権を持つ構造が採用された。証券をオンチェーン化する競争は、価格データをコピーする段階から、株式の所有権と保管記録そのものをブロックチェーンへ接続する段階へ入っている。

目次

何が起きたのか?

コインベースは2026年8月24日、同社が発行するトークン化株式をベース上で稼働させた。初期対象はアップルのAAPLc、エヌビディア(NVIDIA)のNVDAc、メタ(Meta)のMETAc、アルファベット(Alphabet)のGOOGLcの4銘柄。米国外の対象地域にいる利用者向けに提供され、米国内の利用者は対象外となる。

仕組みでは、認証を受けた機関投資家などの参加者が実際の株式を取得し、その株式を規制対象のブローカー兼カストディアンであるアルパカ(Alpaca)が保管する。保管資産はコインベースから分離された破綻隔離構造に置かれ、実際の株式1株に対して対応するトークンを1対1で発行する。

コインベースによると、トークン保有者は裏付けとなる株式への直接かつ優先的な請求権を持つ。配当や株式分割についてもオンチェーン上の仕組みで反映される。ただし一次発行と償還を誰でも直接行えるわけではなく、本人確認を済ませた機関パートナーや認定参加者に限定されている。

なぜ重要なのか?

トークン化株式には大きく分けて二つの構造がある。一つは株価だけを追跡するデリバティブや合成商品で、もう一つは実際の株式を保有し、その権利をトークンへ結び付ける方式だ。今回のコインベース商品は後者を目指している。

この違いは、発行事業者に問題が起きたときや配当などの企業行動が発生したときに重要になる。価格がアップル株と同じように動くだけでは、アップル株を保有していることにはならない。誰が現物株を保管し、トークン保有者がその資産にどの権利を持つのかまで確認して初めて、オンチェーン証券の構造が見えてくる。

市場構造への影響

今回の仕組みでは、発行後のトークンはB20規格としてベース上を移転できる。利用者はコインベースの口座内だけで保有する必要がなく、自己管理ウォレットへ移し、対応する分散型取引所や融資サービスなどで利用できる。ベースはエアロドローム(Aerodrome)などでの取引や、株式を担保として利用するオンチェーン金融への接続を想定している。

これによって証券の保有場所と取引場所が分離する可能性がある。従来は証券会社の口座で購入し、その証券会社や接続された市場インフラの中で保有・決済することが基本だった。トークン化株式では、正式な裏付け資産を保管する金融機関を残しながら、流通部分を公開ブロックチェーンへ広げられる。

ただしオンチェーンで自由に移転できることと、法律上どこでも自由に販売できることは別だ。今回の商品はレギュレーションS(Regulation S)に基づく枠組みで提供され、対象地域にも制限がある。技術的な移転可能性と証券規制上の適格性をどう共存させるかは、今後も重要な課題となる。

資金・規制・流動性との関係

コインベースは8月11日、アブダビ・グローバル・マーケット(Abu Dhabi Global Market)の金融サービス規制当局から金融サービス許可を取得し、国際的なトークン化事業の拠点を設置した。今回の株式商品も、この規制枠組みを利用して発行されている。

流動性については、米国株式市場が閉まっている夜間や休日でもベース上ではトークンを取引できる。ただし24時間取引できることは、常に現物株式市場と同じ厚さの流動性が存在することを意味しない。米国市場の時間外では価格差が広がる可能性があり、オンチェーン価格を現物株へ近づけるマーケットメーカーと償還機能が重要になる。

また、チェーンリンク(Chainlink)が価格情報を提供し、DeFi側で株式価格を参照できるようにする。現物保管、発行・償還、価格情報、オンチェーン流動性という複数の仕組みが組み合わさって初めて、1対1の経済的な対応関係が維持される。

初心者向け補足

例えば1AAPLcが発行される場合、その裏側には対応するアップル株が規制された保管先に存在するという設計だ。利用者が持つのは単にアップル株の価格を表示する暗号資産ではなく、保管された株式に結び付いた権利を表すトークンになる。

一方、オンチェーンのトークン保有者の名前がそのままアップルの通常の株主名簿へ直接記載されるという単純な構造ではない。保管、信託、発行者を介して株式への権利を結び付けるため、議決権や配当など具体的な株主権の行使方法は各商品の法的文書と提供地域の条件を確認する必要がある。

Web3Timesの視点

コインベースの参入で見るべきなのは、トークン化された米国株が4銘柄増えたことではない。株式を保管する規制金融機関と、証券を24時間流通させる公開チェーンが一つの商品の中で役割分担を始めたことだ。

特に1対1の裏付けと破綻隔離は重要になる。トークン化証券が大きくなるほど、「このトークンはいくらで取引されているか」より「その裏側の株式は誰が保管し、発行者が破綻しても保有者がどの権利で回収できるか」が市場の信頼を決める。

さらに自己管理、24時間取引、DeFi担保化まで組み合わされれば、株式は証券会社の口座内で静的に保有する資産から、複数の金融サービスが直接利用できるプログラム可能な資産へ変わる余地がある。ただし、その市場が成立するにはオンチェーン残高と現物株式の所有記録を常に一致させなければならない。トークン化株式の競争は発行数ではなく、最終的な株主権と保管資産を壊さずに公開チェーン上へ流通を広げられるかという証券インフラの競争へ移っている。

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