POSCOインターナショナルが貿易債権をAvalanche基盤でトークン化、企業の売掛金を運転資金へ変える貿易金融がオンチェーン化へ

Last Updated on 2026年8月26日 by oba3

韓国の大手総合商社POSCOインターナショナル(POSCO International)の米国法人が、実際の貿易取引から発生した売掛債権をトークン化し、ブロックチェーン上で資金調達につなげる取引を完了した。無形の資産を単にデジタルトークンへ置き換えた実証ではない。請求書や発注書、船積み書類を照合して債権の存在を確認し、その所有権と状態をオンチェーンに記録したうえで、実際の資金提供まで行った。企業が商品を販売してから代金を受け取るまでの信用を、より流通しやすい金融資産へ変えられるかが今回の核心になる。

目次

何が起きたのか?

POSCOインターナショナル・アメリカ(POSCO International America)は2026年8月25日、貿易金融企業オレア(Olea)、資産担保金融基盤を提供するインテイン(Intain)と共同で、貿易債権をオンチェーン化する取引を完了したと発表した。

対象となったのは、POSCOインターナショナルの実際の貿易活動から発生した売掛債権だ。インテインは請求書、発注書、クレジットノート、船積み書類などの情報を照合し、債権の内容と状態を確認した後、トークン化されたデジタル資産として登録した。取引はアバランチ(Avalanche)技術を利用するインテイン独自のレイヤー1上で実行された。

今回の特徴は、技術的に債権を記録しただけで終わっていない点にある。実際の資金を使った債権取得まで行われ、貿易金融の既存フローとトークン化基盤を接続した。具体的な債権額や資金調達額は公表されていないため、現時点では市場規模よりも取引工程が実運用に近づいたことを確認する段階となる。

なぜ重要なのか?

企業は商品を納品しても、代金をすぐ受け取れるとは限らない。支払いまで30日、60日、90日と期間が空けば、その間も仕入れ、給与、物流などの資金が必要になる。そこで利用されるのが売掛債権を基にした貿易金融だ。

従来は銀行や金融会社が請求書や取引内容を確認し、債権が実在するか、二重に融資されていないかなどを調査する必要がある。取引先ごとに記録が分かれていれば照合作業も増える。今回の仕組みでは、その債権の確認結果と所有状態を共通台帳へ記録し、資金提供者が参照できるようにした。

市場構造への影響

RWA市場では国債やファンドのトークン化が先行してきたが、売掛債権は企業の日常的な事業活動から継続的に生まれる。ここが国債とは異なる。企業が商品を売るたびに新しい債権が発生し、それを検証、資金化、返済まで処理できれば、オンチェーン市場へ供給される金融資産の種類と頻度が大きく広がる。

一方、ブロックチェーンに記録しただけでは債権が本物であることは証明できない。重要なのは記録前の検証だ。今回インテインが請求書だけでなく発注書や船積み書類まで照合したのは、現実世界の取引とオンチェーン資産を一致させるためである。RWAではチェーン性能以上に、誰が元の債権を確認し、その所有権を保証するかが市場の信頼を左右する。

資金・規制・流動性との関係

売掛債権をトークン化する経済的な目的は、企業が代金回収日まで待たずに資金へアクセスできるようにすることにある。資金提供者が確認済みの債権を取得できれば、企業側は債権を運転資金へ変換しやすくなる。資産の所有状態や処理履歴を共通台帳で確認できれば、複数の関係者による照合作業を減らせる余地もある。

POSCOインターナショナル、オレア、インテインは今後、トークン化貿易金融だけでなくデジタル財務管理やステーブルコインを使った越境決済も検討する。債権と決済資金の双方がデジタル化されれば、企業が債権を資金化し、その資金を国境を越えて移動させるまでの工程を同じ金融基盤へ近づけられる。

ただし現時点では継続的な市場として稼働しているわけではなく、取引規模や投資家数も明らかになっていない。今後は単発の取引から反復可能な資金調達へ移れるかが重要になる。

初心者向け補足

売掛債権とは、企業が商品やサービスを提供した後、取引先から代金を受け取る権利だ。例えば1000万円の商品を販売し、代金が60日後に支払われる契約なら、その1000万円を受け取る権利が売掛債権になる。

企業はこの債権を金融会社などへ売却し、支払日前に現金を得ることができる。今回のトークン化は、この債権の存在や所有状態をブロックチェーン上で扱える形にしたものだ。トークンそのものが価値を生むのではなく、裏側にある実際の企業間取引と支払い義務が価値の源泉になる。

Web3Timesの視点

今回見るべきなのは、POSCOがアバランチ上に新しいRWAを発行したという点だけではない。企業の運転資金を生み出してきた貿易債権市場の処理基盤が、オンチェーンへ移り始めていることの方が重要だ。

企業金融では、商品を売ってから現金を回収するまでの時間が資金繰りを左右する。売掛債権を迅速に検証し、資金提供者へ移転できれば、ブロックチェーンは投機資産の取引基盤ではなく企業のキャッシュフローを支える台帳として使われる。

POSCOインターナショナルは前月にも別のブロックチェーン基盤を使った売掛債権の実証を行っており、現時点では特定チェーンへ一本化するより複数方式を比較している段階とみられる。今後の焦点は、どのチェーンが採用されるかだけではない。債権の真偽確認、所有権移転、資金提供、返済、越境決済までをどこまで一体化できるかだ。RWA市場が企業金融へ広がるかどうかは、資産をトークン化する技術より、現実の売掛金を継続的に資金へ変えられる市場を作れるかにかかっている。

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