暗号資産投資家が時価総額順位から収益・利用実績の評価へ、トークン価値を実需と価値捕捉で測る流れが強まる

Last Updated on 2026年8月17日 by oba3

暗号資産の評価方法に変化が見え始めている。2026年8月、ビットワイズ(Bitwise)、ウィンターミュート(Wintermute)、アービトラム財団(Arbitrum Foundation)などの業界関係者は、投資家が単純な時価総額順位ではなく、プロトコルの利用量、収益、対象市場、そして生み出した経済価値がトークン保有者へどう還元されるかを見るようになっていると指摘した。特に機関投資家やウェルスマネージャーの参入では、時価総額上位だから投資対象になるという従来型の選び方だけでは不十分になっている。焦点は「何位のトークンか」から、「実際に誰が使い、何を稼ぎ、その収益がトークン価値へどう接続するのか」へ広がっている。

目次

何が起きたのか?

暗号資産市場では2026年に入り、トークンをファンダメンタルズから評価しようとする動きが目立っている。業界関係者が挙げる評価項目は、ネットワーク利用量、手数料収入、プロトコル収益、市場機会、ユーザー定着、供給構造、そしてトークンへの価値還元などだ。

ウィンターミュートによると、同社の現物店頭取引に占める機関投資家などのカウンターパーティー比率は2026年上期に約72%となり、前年同期の約59%から上昇した。こうした資金は主要暗号資産だけでなく、収益を生み出している一部のトークンやトークン化された現実資産にも集中しているという。

具体例として注目されているのがハイパーリキッド(Hyperliquid)だ。同プロトコルでは取引活動から手数料が発生し、その経済活動とHYPEの買い戻しなどを結び付ける仕組みが存在する。このため投資家は時価総額順位だけでなく、取引量、収益、買い戻しに使われる資金などからトークン価値を評価しやすい。

ただし、暗号資産市場全体がすでにファンダメンタルズだけで価格形成されているわけではない。短期価格については無期限先物、レバレッジ、資金流入、センチメントなどの影響が依然大きい。現在確認できるのは、長期的な銘柄選別でファンダメンタルズを見る投資家が増えているという変化だ。

なぜ重要なのか?

暗号資産では長く、時価総額ランキングが銘柄の重要度を測る簡単な指標として使われてきた。しかし時価総額は、トークン価格に流通枚数を掛けた数字にすぎない。そのネットワークが実際に使われているか、どれだけ収益を生んでいるかまでは分からない。

特に機関投資家が参入する場合、株式や債券と同様に、なぜその資産へ価値が蓄積するのかを説明できることが重要になる。ブロックチェーンの利用者が増えても、発生した手数料がバリデーターやアプリだけに流れ、トークン自体には経済的利益が戻らない設計もあり得る。

そのため利用量と価値捕捉は分けて考える必要がある。トランザクション数が多い、預かり資産が大きい、取引量が増えているという事実だけでは、トークン保有者がその成長から利益を受ける構造になっているとは限らない。

市場構造への影響

この評価軸が定着すれば、暗号資産市場の資金配分も変わる可能性がある。これまでは時価総額上位のトークンへ幅広く投資する方法が分かりやすかったが、今後は同じカテゴリーの中でも収益構造や価値捕捉の違いによって資金が選別されやすくなる。

例えば二つの分散型取引所が同じ取引量を持っていても、一方が手数料収入をトークン買い戻しやステーキング報酬へ回し、もう一方ではトークンと収益がほとんど結び付いていない場合、投資家から見た経済性は異なる。

レイヤー1でも同様だ。利用者数やトランザクション数だけでなく、ネットワークが生み出した手数料のうち何がバーンされ、何がバリデーターへ渡り、トークン供給がどれだけ増えるのかを見る必要がある。高い利用量がそのまま高いトークン価値へ変わるわけではないためだ。

この考え方が広がると、暗号資産プロジェクト側にも変化を促す可能性がある。利用者を増やすだけでなく、手数料、買い戻し、バーン、ステーキングなどを通じ、ネットワークの成功とトークン保有者の経済的利益をどう結び付けるかが商品設計の一部になる。

資金・規制・流動性との関係

機関投資家がファンダメンタルズを重視する背景には、投資判断を社内や顧客へ説明する必要があることも関係する。単に時価総額上位だからという理由より、利用量、収益、競争環境、供給構造など検証可能なデータを使う方が投資判断を体系化しやすい。

一方、収益を重視すると新しい規制論点も生じる。トークン保有者へプロトコル収益を直接分配したり、特定主体が利益還元を約束したりする設計では、そのトークンの法的位置付けが問題になる場合がある。そのため価値捕捉を強化すればよいという単純な話ではなく、経済設計と証券規制を同時に考える必要がある。

また短期的な流動性は依然として価格形成を大きく左右する。ウィンターミュート関係者も、ファンダメンタルズが投資対象を絞り込む材料になる一方、実際の日々の価格は資金フローによって動くとの見方を示している。

つまり、収益が高いトークンが必ず短期的に上昇するわけではない。ファンダメンタルズは長期的な評価材料となり得るが、レバレッジ、デリバティブ、ETF、マーケットメーカーなどを通じた資金移動とは別の層として見る必要がある。

初心者向け補足

時価総額とは、一般にトークン価格へ流通枚数を掛けて計算する数字だ。市場規模を比較するには便利だが、それだけでプロジェクトの収益性や利用実績を判断することはできない。

プロトコル収益とは、ブロックチェーンや分散型取引所などが利用者から受け取る手数料のうち、ネットワークやプロトコル側へ残る経済価値を指す。ただし手数料と収益は必ずしも同じではなく、どの費用を差し引くかによって定義が異なるため比較時には注意が必要になる。

価値捕捉とは、そのプロトコルが成長した際にトークン自体へ経済的な需要や利益が戻る仕組みを指す。買い戻し、バーン、ステーキング用途などが例となるが、どの方式が優れているかはプロジェクトごとに異なる。

Web3Timesの視点

Web3Timesが今回注目するのは、暗号資産投資家が突然株式投資と同じ指標を使い始めたという話ではない。重要なのは、トークン価格とネットワーク内部の経済活動を結び付けて説明する必要性が高まっていることだ。

ブロックチェーンには株式のような統一された売上高や利益の定義がない。ネットワーク手数料、アプリ収益、バリデーター報酬、トークンバーンなど、価値が複数の参加者へ分散する。そのため単純なPERのような指標を当てはめるだけでは実態を捉えられない。

逆に言えば、これから重要になるのは「収益があるか」だけでもない。誰がその収益を受け取り、トークンを保有することで何の経済的権利や需要が生まれるのかまで追う必要がある。利用量が大きくても価値捕捉が弱いネットワークと、利用量は小さくても収益がトークンへ強く還元されるネットワークでは評価方法が異なる。

今後見るべきなのは時価総額ランキングの入れ替わりだけではない。プロトコルの利用者、取引量、手数料、実質収益がどこまで伸び、その経済価値がトークンへどの経路で戻るのかが重要になる。機関資金の参入が進むほど、暗号資産市場の銘柄選別は「何位だから買われるか」から「どの事業活動が、どの仕組みでトークン価値になるのか」を検証する方向へ広がっていく。

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