ジェミナイ株が上場後約80%下落し時価総額7.53億ドルへ縮小、取引所再編では規制ライセンスとカストディ基盤の取得価値が焦点に

Last Updated on 2026年9月22日 by oba3

暗号資産取引所ジェミナイ(Gemini)の株価が2025年9月の上場後から約80%下落し、時価総額が約7億5300万ドルまで縮小したことで、同社を買収対象として見る議論が浮上している。ただし、現時点で正式な買収提案や交渉が確認されたわけではない。注目すべきなのは株価そのものより、取引所事業が縮小しても、ニューヨーク州の信託会社資格、CFTC登録のデリバティブ市場・清算機関、カストディ技術、顧客口座などを一体で持つ企業には別の戦略価値が残る点だ。暗号資産企業のM&Aでは、取引量を買うだけでなく、米国市場へ参入するために時間をかけて構築された規制基盤を取得するという考え方が強まり得る。

目次

何が起きたのか?

ジェミナイ・スペース・ステーションは2025年9月、1株28ドルで新規株式公開を実施した。その後株価は大きく下落し、2026年9月20日時点では上場後の高値から約80%安、時価総額はピーク時の約40億ドルから約7億5300万ドルへ縮小したと報じられている。

背景には中核だった暗号資産交換事業の縮小がある。2026年第2四半期の交換事業収益は前年同期比38%減の約1250万ドルとなり、現物取引高は113億ドルから38億ドルへ約66%減少した。プラットフォーム上の資産も前年同期の182億ドルから84億ドルへ減っている。

一方で、会社全体の売上高まで同じ速度で落ちたわけではない。第2四半期の総売上高は前年同期比37%増の4550万ドルとなり、クレジットカードやステーキングなどを含むサービス収益と金利収入は2600万ドルへ増加した。取引所事業の縮小と会社全体の事業価値は分けて見る必要がある。

買収観測の一例として、アーク・インベスト(ARK Invest)のデジタル資産調査責任者ロレンゾ・バレンテ氏が、ハイパーリキッド(Hyperliquid)による取得を提案している。ただしこれは外部からの提案であり、ハイパーリキッドが買収交渉を行っている事実は確認されていない。

なぜ重要なのか?

ジェミナイの価値を現物取引高だけで見ると、事業縮小が目立つ。しかし米国の暗号資産市場へ新規参入する企業にとっては、規制上の許認可を一から取得すること自体に時間と費用がかかる。

ジェミナイ・トラストはニューヨーク州金融サービス局(New York State Department of Financial Services・NYDFS)の監督を受ける限定目的信託会社で、デジタル資産のカストディを提供している。また必要な州で送金事業ライセンスなどを持ち、全米で法定通貨との接続を提供している。

さらに傘下では、2025年12月に商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)の指定契約市場ライセンスを取得し、2026年4月にはデリバティブ清算機関の認可も得た。これにより予測市場だけでなく、将来的な先物やオプションなどを取引から清算まで自社グループ内で処理できる基盤を持つ。

市場構造への影響

暗号資産取引所の買収価値は、以前なら取引高や利用者数を中心に評価されやすかった。規制市場への参入条件が厳しくなるほど、すでに持っている認可、銀行接続、カストディ、清算機能の価値も無視できなくなる。

例えば海外やオンチェーンを中心に事業を展開してきた企業が米国でデリバティブ市場を構築しようとすれば、取引システムだけを用意しても営業できない。市場運営、顧客資産管理、清算、州単位の資金移動など複数の制度に対応する必要がある。

そのため企業価値が低下した取引所を取得し、既存の技術と規制事業体を組み合わせる方が、一から申請するより合理的だと判断されるケースも考えられる。暗号資産業界の再編では、利用者獲得型の買収から市場参入資格を取得する買収へ目的が広がることになる。

資金・規制・流動性との関係

ただし、企業を買収すれば保有ライセンスを無条件で自由に使えるわけではない。規制金融事業では支配株主や経営体制が変わる際に当局の審査や承認が必要になる場合があり、買い手自身の財務、コンプライアンス、ガバナンスも確認対象になる。

したがってジェミナイの時価総額7億5300万ドルを、規制ライセンス一式をそのまま購入できる価格と考えることはできない。負債、運営コスト、既存事業、株主構成に加え、買収後も各認可を維持できるかまで含めて評価する必要がある。

もう一つの要素が株主支配だ。共同創業者のキャメロン・ウィンクルボス氏とタイラー・ウィンクルボス氏は議決権の約94.5%を実質的に支配しており、第三者が市場で株式を集めるだけで支配権を取得することは難しい。仮に売却を進める場合も、両氏の意思が大きな条件になる。

初心者向け補足

暗号資産取引所のライセンスには一種類だけが存在するわけではない。現物暗号資産の保管、州をまたぐ資金移動、先物市場の運営、デリバティブの清算など、サービスごとに異なる規制制度が関係する。

そのため「米国で暗号資産取引所を買収する」という行為は、ウェブサイトや顧客名簿を取得するだけではない。規制法人、コンプライアンス部門、カストディシステム、銀行や市場参加者との接続まで含めた事業基盤を取得する意味を持つ場合がある。

また株価が80%下落したから買収が決まるわけでもない。現在報じられているのは買収の可能性を巡る市場関係者の議論であり、正式な買い手や提示価格は確認されていない。

Web3Timesの視点

ジェミナイを見る際、株価下落だけを取引所の失敗として読むと、米国暗号市場で価値を持つ別の資産を見落とす。第2四半期には現物取引高と交換事業収益が大きく減った一方、同社にはNYDFS監督下のカストディ、CFTCの市場・清算ライセンス、州レベルの決済接続、約58万人の月間取引ユーザーが残っている。

今後確認したいのは買収観測の名前ではなく、暗号企業が米国市場参入に必要な認可を自力取得するコストと、既存事業者を取得するコストの差だ。さらにカストディ資産、顧客基盤、清算機能を一体で取得することで、買い手がどの金融商品を短期間で展開できるかも評価材料になる。

一方、ライセンスは単純な譲渡可能資産ではないため、規制当局による支配権変更の審査を通過できるかが実際の価値を左右する。規制基盤を持つ企業だから高値で売れると自動的に決まるわけではない。

ジェミナイを巡る買収観測が示しているのは、暗号取引所の企業価値が取引高だけでは測れなくなっていることだ。市場が再編局面へ入れば、顧客を何人持っているかと同じくらい、どのライセンス、カストディ、清算経路をすでに持っているかが企業価値を決める要素になっていく。

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