レインのステーブルコイン決済がVisa加盟店網へ拡大、デジタルドルが利用者に見えないカード清算基盤へ浸透

Last Updated on 2026年8月20日 by oba3

ステーブルコイン決済インフラを提供するレイン(Rain)が、Visaカード網を通じてステーブルコインを日常決済へ組み込む事業を拡大している。レインの仕組みでは、利用者は通常のカードと同じ感覚で支払い、加盟店側も暗号資産を直接受け取る必要がない。その裏側でUSDCなどのステーブルコインを使った資金移動やネットワーク決済が行われる。レインはVisaのプリンシパルメンバーとしてカード発行基盤を提供しており、同社のカードプログラムは世界1億5000万超のVisa加盟店で利用できるとしている。ここで見るべきなのは暗号資産ウォレットの利用者数ではない。ステーブルコインを意識しない消費者や加盟店まで、その技術を既存カード網の裏側から利用する構造が広がっていることだ。

目次

何が起きたのか?

レインは、企業やフィンテックがステーブルコインを原資とするカードを発行できるインフラを提供している。カード発行、取引認証、コンプライアンス、ウォレット、法定通貨との交換、ネットワーク決済などを一つの基盤へまとめ、企業側が個別に銀行やブロックチェーン事業者を接続しなくてもサービスを展開できるようにしている。

利用者がレイン基盤のVisaカードで商品を購入した場合、加盟店から見える決済体験は一般的なカードと大きく変わらない。加盟店は通常のVisa決済として代金を受け取り、利用者側ではステーブルコイン残高などを支払い原資として利用できる。

レインは2025年からVisaとのステーブルコイン決済を拡大し、自社のVisaカードに関するネットワーク決済をUSDCで365日処理する仕組みを導入した。2026年にはアジア太平洋地域でもVisaメンバーシップを拡張し、消費者向けカード、法人カード、送金受取後の支払い、企業財務などへ用途を広げている。

なお、加盟店数については区別が必要だ。レイン自身が10万以上の店舗と個別契約したという意味ではない。同社が公表しているのは、レイン基盤で発行されたVisaカードが世界1億5000万超のVisa加盟店で利用可能というネットワーク上の受け入れ範囲だ。

なぜ重要なのか?

ステーブルコイン決済では、これまで利用者と加盟店の双方が暗号資産を理解し、専用ウォレットを導入することが普及条件と考えられがちだった。しかし既存カード網へ接続すれば、この条件は大きく変わる。

消費者はカードを使い、加盟店は通常のカード決済を受け付ける。その間の資金移動や決済処理だけをステーブルコインへ置き換えることができれば、利用者全員にブロックチェーン操作を覚えてもらう必要がない。

これはインターネット利用者が通信プロトコルを意識しないことに近い。ステーブルコインが普及するために、利用者がUSDCの送金先アドレスや利用チェーンを毎回意識する必要はない。決済アプリやカードの裏側で使われる方が、実利用の規模は大きくなる可能性がある。

市場構造への影響

このモデルが広がると、ステーブルコイン市場の競争軸はウォレット数やオンチェーン送金件数だけでは測れなくなる。既存カードネットワークの決済、資金調達、清算にどれだけ入り込んでいるかという別の指標が必要になる。

レインの特徴は、ステーブルコインを加盟店へ直接受け取らせるのではなく、既存のVisa決済と相互運用させる点にある。利用者側の原資がステーブルコインでも、加盟店側は従来の決済体験を維持できる。この構造なら、新しい加盟店ネットワークをゼロから作らずに既存カード網を利用できる。

さらに企業にとっても、ステーブルコイン対応カードを自社で一から構築する必要がなくなる。レインのAPIやカード発行基盤を利用すれば、ウォレット事業者、送金会社、フィンテックなどが自社ブランドのままステーブルコイン決済を組み込める。

そのため今後の競争は、VisaやMastercardとステーブルコインが直接競合するだけの構図にはならない。カードネットワークそのものがステーブルコインを清算資産として取り込み、既存決済網の効率を高める方向も同時に進む。

資金・規制・流動性との関係

カード決済では、利用者が購入した瞬間と、カード発行会社がネットワークへ資金を支払うタイミングにずれがある。カード会社はこの期間を埋めるための運転資金を必要とし、決済量が増えるほど資金効率が重要になる。

レインはVisaとのネットワーク決済にUSDCを利用し、週末や祝日を含めて毎日資金を移動できる仕組みを構築している。従来の銀行営業時間だけに依存しないため、カード発行会社が決済資金を長期間待機させる必要を減らせる可能性がある。

さらにレインはカード利用者から将来回収する債権をオンチェーン化し、それを使った資金調達も進めている。カード利用に必要な運転資金とステーブルコイン融資を接続することで、決済と信用供与の両方をブロックチェーン上へ持ち込んでいる。

一方、加盟店がステーブルコインを直接受け取っているわけではないため、規制や会計の負担を加盟店側へそのまま移す構造ではない。この点が、加盟店へ新しい暗号資産決済方式を導入させるモデルとの大きな違いになる。

初心者向け補足

カード決済では、利用者がカードを提示した瞬間に加盟店へ直接お金が移るわけではない。カード会社、Visaなどのネットワーク、加盟店側の金融機関を通じて、後から資金の清算が行われる。

レインがステーブルコインを利用しているのは、この裏側の資金移動部分だ。利用者は通常のカードを使い、店舗側も通常のカード決済として処理できるため、ステーブルコインの存在が利用者や加盟店から見えない場合もある。

またレインのカードが利用できる1億5000万超という数字は、レインがそれだけの加盟店を直接開拓したという意味ではない。Visaの既存加盟店ネットワークを利用できる範囲を示している。

この違いは重要だ。ステーブルコイン企業が巨大な店舗網を自ら作ったのではなく、既存の世界的カード網へ接続することで利用範囲を一気に広げているからだ。

Web3Timesの視点

Web3Timesが今回見るのは、ステーブルコインでカード決済できる店舗が増えたという利用拡大ニュースではない。焦点は、ステーブルコインが消費者向けの新しい決済商品として目立つのではなく、既存カード決済の裏側へ入り込んでいることだ。

ステーブルコインの普及をウォレット利用者数だけで測ると、この変化を見落とす。利用者がブロックチェーンを操作していなくても、カード発行会社の資金管理やVisaとの決済でステーブルコインが使われれば、実際の金融取引にはオンチェーン資金が組み込まれている。

このモデルでは、ステーブルコインの役割は決済画面に表示される通貨ではなく、カード会社とネットワークの間を動く清算資産へ近づく。消費者はカードを使い、加盟店は法定通貨を受け取り、その裏側だけが24時間動くデジタルドルへ置き換わる。

今後注目されるのは、ステーブルコイン対応カードの発行枚数だけではない。VisaやMastercardとの決済額のうちどこまでステーブルコインが使われるのか、カード会社の運転資金負担をどこまで削減できるのか、そして銀行預金や従来型の決済資産と比べてどの場面で選ばれるのかが焦点になる。ステーブルコインの大規模普及は、利用者全員が暗号資産を意識する世界ではなく、利用者には見えない決済バックエンドとして定着する形で進む可能性がある。

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