Last Updated on 2026年11月7日 by oba3

プライバシー保護機能を備える暗号資産ジーキャッシュ(Zcash/ZEC)のメインネットで2026年11月6日、ネットワークアップグレード「NU7」が有効になった。ブロック生成の目標間隔を75秒から25秒へ短縮したほか、取引手数料の一部を将来の採掘報酬に充てる仕組みも導入している。今回の変更は、送金の待ち時間を短くするだけでなく、長期的にネットワークを維持するための報酬設計にも関わるものだ。稼働状況はZecStatsのネットワーク記録で確認できる。
何が起きたのか?
NU7はブロック高3,543,405に達した日本時間11月6日11時34分ごろ、有効になった。新しいルールではブロック生成の目標間隔が従来の3分の1となる25秒に設定され、取引が最初の承認を得るまでの待ち時間を短縮する設計へ切り替わった。ただし、25秒はネットワークが目指す平均値であり、すべてのブロックが25秒ごとに生成されるわけではない。
実際、有効化後の初期段階ではブロック生成の平均間隔が約39秒となった時間帯もあり、採掘難易度の調整が進むにつれて目標値へ近づく仕組みになっている。こうした変更はNU7の技術仕様「ZIP 259」に定められており、プライバシー保護付き取引の処理量に制限を設け、ウォレットの同期負担を抑える対策も盛り込まれた。
一方、今回の更新では旧形式のバージョン4取引が無効になった。この形式に依存する初期のプライバシー保護方式「スプラウト(Sprout)」では、アップグレード時点で残っていた約12,224 ZECを現行ルールのもとで移動できなくなっている。資産そのものが焼却されたわけではないものの、利用を再開するには将来のネットワーク変更が必要で、回復方法は承認されていない。
なぜ重要なのか?
Zcashは、送金者や受取人、金額などの情報を保護できる点に特徴がある。ただし、プライバシーを守る技術が備わっていても、送金後の確認に時間がかかれば、日常的な支払いやサービス間の資金移動では使いにくさが残る。
今回の高速化により、最初のブロック承認を得るまでの平均待ち時間は短くなる見込みだ。もっとも、取引所への入金や決済サービスで資金を利用できるまでの時間は、各事業者が求める承認回数や内部処理によって異なる。たとえば3回の承認を必要とする場合、目標値だけで計算すれば従来の約225秒から約75秒へ短縮されるが、実際の入金反映時間が必ず75秒になるという意味ではない。
市場構造への影響
ブロックが生成される頻度を高めると、取引を処理できる機会が増える一方、採掘者やネットワーク参加者には短い時間で情報を共有する能力が求められる。新しいブロックが十分に伝わる前に別のブロックが作られると、競合するブロックが発生しやすくなるためだ。
NU7では、この負担を考慮してプライバシー保護付き取引の処理上限を調整している。単純にブロック数を3倍にするのではなく、取引処理能力と検証・同期にかかる負荷の釣り合いを取ろうとしている点が特徴だ。送金の使いやすさが改善しても、それを支えるノードの運用負担が大きくなりすぎれば、ネットワークへの参加環境にも影響しかねない。
資金・規制・流動性との関係
もう一つの変更が、ネットワーク持続可能性メカニズム(NSM)の導入だ。NU7以降、取引手数料の60%は公開された準備枠に移され、採掘者が当面受け取る手数料は残りの40%となる。準備枠の資金は焼却されるのではなく、ブロック高8,939,664、2031年ごろから将来の採掘報酬として段階的に再配分される予定になっている。
採掘による新規発行報酬も、ブロック当たり1.5625 ZECから約0.52083333 ZECへ調整された。ブロック数が約3倍になる分、一定期間に新しく発行されるZECの総量をおおむね維持するためで、発行上限の2,100万ZECや半減期の時期を大きく変更するものではない。
採掘報酬が将来減っていくなかで、ネットワークの安全性を支える資金をどのように確保するかは重要な課題になる。ただし、準備枠の導入だけで将来の採掘参加や安全性が保証されるわけではなく、実際の手数料収入や採掘者の収益環境によって効果は左右される。今回の変更は新たな資金流入を直接生む制度ではなく、既存の報酬を時間軸に沿って配分し直す仕組みとして捉えたい。
初心者向け補足
ブロックとは、ネットワークで確認された取引をまとめて記録する単位のことだ。Zcashでは新しいブロックに取引が取り込まれると最初の承認が付き、その後もブロックが追加されることで承認回数が増えていく。
今回の「25秒」は、このブロックを作る目標間隔を指している。送金ボタンを押してから25秒で必ず相手が使えるようになるという意味ではなく、ウォレットの対応状況、ネットワークの混雑、取引所や決済サービスが設定する承認条件なども関係する。
また、スプラウトに残る約12,224 ZECの移動不能は、通常の新しいウォレットで保有するすべてのZECが使えなくなったという話ではない。旧方式に依存する資産が対象であり、アップグレードによって過去の取引形式が利用できなくなる場合があることを示す事例となった。
Web3Timesの視点
NU7で注目したいのは、プライバシー送金を速くする技術的な変更と、そのネットワークを維持するための経済的な変更が同時に実施された点だ。利用者にとっては承認待ち時間の短縮が分かりやすい成果となる一方、その裏側では採掘者への報酬配分やノードの処理負担も調整されている。
今後は、実測のブロック生成間隔が25秒の目標値へどの程度近づくかに加え、競合ブロックの発生状況や各取引所の入金反映時間を確認したい。さらに、NSMに蓄積される手数料がどの程度増えるかによって、2031年ごろから始まる予定の再配分が持つ意味も変わってくる。
送金の高速化が利用者の利便性につながるのか、そして長期的な報酬設計が採掘者の参加を支えられるのか。Zcashの今回の更新は、プライバシー保護技術を実際の決済や資金移動に広げていくうえで、両方を継続して検証する重要な節目となりそうだ。
