Last Updated on 2026年8月31日 by oba3
暗号資産取引所バイビット(Bybit)が、スペースX(SpaceX)とエヌビディア(Nvidia)の株価に連動する永久先物を原資産としたオプション取引を、2026年9月17日から24時間365日で提供する。商品名はパープ・オプション(Perp Options)で、実際の株式そのものを受け渡すのではなく、バイビット上の株式連動永久先物を基礎に損益を計算し、USDTで決済する。今回見るべきなのは個別株オプションが増えることではない。米国株の価格エクスポージャーが、株式市場の営業時間から切り離され、暗号資産市場の24時間デリバティブ層で再構成され始めていることだ。
何が起きたのか?
バイビットは2026年8月28日、株式連動永久先物を原資産とするオプション商品を発表した。第1弾として9月17日20時UTCからSPCXとNVDAを対象に取引を開始する予定で、バイビットは株式永久先物を原資産とするオプションとして業界初と説明している。
取引は24時間365日対応し、決済通貨はUSDTとなる。一般的な米国株オプションでは1契約が100株を基準とすることが多いが、新商品では乗数を1とし、より小さな単位で取引できる。バイビットの統合取引口座から利用でき、買い・売りだけでなく、スプレッド、ストラドル、カバードコールなど複数のオプション戦略にも対応する。
今後はテスラ(Tesla)、ナスダック100ETFのQQQ、半導体レバレッジETFのSOXL、マイクロン(Micron)なども追加する計画だ。ただし現時点では取引開始前であり、実際の出来高や建玉、流動性はまだ確認できない。
なぜ重要なのか?
通常の米国株オプションは、基礎となる株式市場や証券市場の取引時間を前提として設計されている。決算、金融政策、地政学的事件などが市場終了後や週末に発生すると、投資家が既存のオプション市場で直ちにポジションを調整できない時間帯が生じる。
バイビットの新商品では、株式そのものではなく24時間動く永久先物を原資産にすることで、この時間制約を外す。つまり株式市場が閉まっている時間でも、エヌビディアやスペースXの価格変化を予想し、オプションによってリスクを取ったりヘッジしたりできる市場を別に構築する。
市場構造への影響
ここで重要なのは、オプションの原資産が実際の株式ではないことだ。例えばNVDAのパープ・オプションはエヌビディア株そのものではなく、バイビット上で株価に連動するNVDA永久先物を基礎にする。現物株式、株式永久先物、その永久先物を原資産とするオプションという複数の価格形成層が重なる。
この構造が拡大すると、米国株の価格発見は証券取引所だけで完結しなくなる。株式市場が閉じている時間帯にも暗号デリバティブ市場で永久先物とオプションが取引され、そこで形成された価格や予想変動率が翌営業日の現物市場へ影響する可能性がある。
暗号資産市場が株式の価格を単純にコピーする段階から、その価格を使ってレバレッジ、ヘッジ、ボラティリティ取引まで組成する段階へ進んでいる点が大きい。
資金・規制・流動性との関係
24時間化には流動性の問題もある。米国株市場が開いている時間帯なら現物株、先物、ETFなど複数市場を参照して価格差を調整しやすい。一方、週末など現物市場が停止している時間には、暗号デリバティブ市場だけで価格が動くため、永久先物と現物株の価格差が拡大する可能性がある。
その永久先物を原資産にさらにオプションを組成すれば、価格差だけでなくボラティリティや証拠金管理も重要になる。バイビットはポートフォリオ・マージンに対応し、永久先物とオプションを組み合わせたヘッジを可能にするが、現物市場が再開した際の価格調整リスクまでなくなるわけではない。
規制面でも、株式連動永久先物は各国で扱いが異なる。米国では株式を参照する永久先物を先物、スワップ、証券先物のどこへ分類するかについてSECとCFTCが検討を続けている。今回の商品が世界のすべての利用者へ提供されるわけではなく、地域ごとの利用制限が前提になる。
初心者向け補足
永久先物は満期がないデリバティブで、原資産の価格へ近づくよう資金調達率などを使って価格を調整する。オプションは、将来ある価格で買う権利や売る権利を取引する商品だ。
今回の仕組みでは、実際のエヌビディア株を直接オプションの対象にするのではなく、エヌビディア株に連動する永久先物をまず作り、その永久先物を原資産としてオプションを取引する。このため株主としての配当や議決権を得る商品ではなく、株価変動に対するデリバティブ上のエクスポージャーを取る商品になる。
Web3Timesの視点
今回のニュースをスペースXやエヌビディアを24時間取引できるようになる話だけで見ると、変化の大きさを捉えにくい。重要なのは、株式という伝統金融資産の価格発見機能が暗号資産取引所のデリバティブ市場へ移植されていることだ。
現物株式をトークン化するだけなら、所有権をブロックチェーン上へ移す議論が中心になる。しかし永久先物とオプションでは、株式を保有せずに価格、レバレッジ、変動率を独立した金融商品として24時間売買できる。ここでは証券のトークン化より、デリバティブ市場そのものの営業時間と流通経路が作り替えられている。
今後見るべきなのは個別商品の取引高だけではない。現物市場が閉まっている時間帯にどれだけ価格形成が行われるのか、その価格が米国株市場の再開時にどの程度参照されるのか、さらに他の株式や指数へ同じ構造が広がるのかが重要になる。株式市場の価格発見が証券取引所の営業時間だけに依存しなくなれば、暗号デリバティブ市場は伝統資産を取引する別の24時間市場として存在感を強めることになる。
