フィデリティがイーサリアムETFへのステーキング導入に向け変更を申請、現物保有にネットワーク収益を組み込む機関商品設計へ

Last Updated on 2026年8月13日 by oba3

フィデリティ(Fidelity)が、米国で上場するフィデリティ・イーサリアム・ファンドにステーキング機能を組み込むための変更を進めている。2026年8月に米証券取引委員会(SEC)へ提出された更新書類では、ファンドが保有するイーサリアム(Ethereum)の一部をステーキングできる権限や、カストディー事業者を通じてステーキングサービスを利用する契約が盛り込まれた。焦点はETFでイーサリアム価格へ投資できるかではない。ETFが保有するETHから発生するネットワーク報酬を、誰が受け取り、どのようにファンド価値へ反映するのかという次の制度設計へ議論が移っている。

目次

何が起きたのか?

フィデリティ・イーサリアム・ファンドは、イーサリアムの価格への連動を目的として2024年に取引を開始した現物型の商品だ。2026年8月7日付で更新された信託契約では、スポンサーであるFDファンズ・マネジメント(FD Funds Management)が、ファンド保有ETHをステーキングしたり、第三者を通じてステーキングを実施したりできる権限が明記された。

同時期に提出された契約資料では、暗号資産カストディーを手掛けるアンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)とのサービス契約に、フィデリティ・イーサリアム・ファンドが対象顧客として追加され、ステーキングサービスに関する付属契約も組み込まれている。

信託財産の定義にもステーキングされたETHが含まれ、スポンサー契約ではステーキングを手配する対価についての条項が新たに設けられている。つまり書類上は、単なる検討ではなく実際にステーキングを運用へ組み込むための契約構造まで準備されている。

ただし、提出書類にステーキング権限が盛り込まれたことと、すべての規制手続きが終了し直ちに全面運用が始まることは同じではない。実際にどの割合のETHをステークするのか、報酬からどの程度の費用が差し引かれるのかなど、最終的な運用条件は今後の開示を確認する必要がある。

なぜ重要なのか?

現物イーサリアムETFの初期設計では、投資家が得る経済的な価値は主にETH価格の変動だった。しかしイーサリアムのネイティブ資産であるETHには、ネットワークの検証に参加するステーキングという機能がある。ETHを直接保有する投資家は、一定のリスクを負う代わりに報酬を受け取ることができる。

ETFがステーキングを行わない場合、ファンドが大量のETHを保有していても、このネイティブな報酬は取得できない。反対にステーキングが組み込まれれば、ETFは単なる現物価格への連動商品から、基礎資産が生み出すネットワーク収益まで取り込む商品へ変わる。

これはETF承認後の次の論点だ。機関投資家が暗号資産を規制された証券口座から保有できるようになった後、基礎資産固有の機能をどこまでETF内部へ持ち込めるのかが問われ始めている。

市場構造への影響

ステーキングがETFへ本格的に組み込まれる場合、イーサリアムETF同士の競争軸も変わる。これまでは運用手数料、流動性、ブランド、カストディーなどが主な比較材料だった。今後はステーキング参加率、得られる報酬、バリデーター費用、投資家へ残る実質的な収益も商品設計を左右する。

さらにETFに集まったETHがステーキングへ回れば、資産運用会社とそのカストディー事業者がイーサリアムの検証基盤に占める位置も大きくなる。ETFの運用残高が増えるほど、誰がバリデーターを運営し、どの事業者へステークを委託するのかという問題はネットワーク側にも影響する。

一方、全保有ETHを自由にステークできるとは限らない。ETFには投資家からの売買に対応するための流動性が必要であり、ステーキング中の資産をどの程度すぐに引き出せるかも管理しなければならない。そのため価格連動性とステーキング収益の両方を成立させる資産配分が重要になる。

資金・規制・流動性との関係

ETFでステーキングが認められる意味は、追加的な収益だけではない。現物ETHを直接購入してウォレットやバリデーターを管理しなくても、証券口座を通じて価格エクスポージャーとネットワーク報酬の双方へアクセスできる商品設計が可能になるからだ。

機関投資家にとっては、カストディー、監査、会計、取引執行をETF内部へまとめられる点が大きい。一方で資産運用会社側には、スラッシングなどステーキング固有のリスク、ETHの引き出し時間、カストディー事業者への集中、報酬の会計処理といった新しい管理項目が加わる。

フィデリティの契約では、ステーキングされた資産をカストディー側の管理下に維持することや、第三者バリデーターに対する監督体制なども盛り込まれている。つまりETFへのステーキング導入は、単純に利回りを追加する機能ではなく、カストディーとバリデーター管理を含む新たな機関向けインフラを必要とする。

初心者向け補足

ステーキングとは、プルーフ・オブ・ステーク方式を採用するブロックチェーンで暗号資産をネットワーク運営に参加させ、取引の検証などに貢献する仕組みだ。イーサリアムではETHをステークしたバリデーターに報酬が支払われる。

ETFがステーキングする場合、投資家自身がETHをウォレットから送ったり、バリデーターを動かしたりするわけではない。ファンドが保有するETHの一部を運用会社や委託先がステークし、得られた報酬が費用控除後にファンド資産へ反映される形が基本となる。

ただし報酬は銀行預金の固定金利とは異なる。ネットワーク状況によって変動し、ステーキングには運用上のリスクも存在する。そのためETFへ導入された場合でも、単純な固定利回り商品として見るのは適切ではない。

Web3Timesの視点

Web3Timesが注目するのは、イーサリアムETFが承認されたという第一段階の先にある。ETFがETHを大量に保有するようになれば、次に問われるのは、そのETHが本来持っている経済機能を誰が利用するのかという問題だ。

ステーキングをしないETFでは、ネットワーク報酬を受け取る権利が事実上使われない。一方でステーキングを導入すれば、投資家、運用会社、カストディー事業者、バリデーターの間で新しい収益分配が生まれる。そこで重要になるのは表面的な報酬率ではなく、総報酬のうち何割がファンドへ残り、誰が運用コストを受け取るのかである。

フィデリティの動きは、暗号資産ETFが単なる価格連動商品から、ブロックチェーン固有の経済活動を内包する金融商品へ変化する可能性を示している。今後確認したいのは、実際のステーキング比率、報酬の分配方法、費用、流動性確保の方法、そして他のイーサリアムETFが同様の設計を採用するかだ。ETF競争の次の焦点は、どれだけETHを保有するかだけでなく、そのETHが生み出すネットワーク価値を誰が受け取るかへ移り始めている。

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