SECが移転代理人規則をブロックチェーン時代向けに刷新する改正案を提示、オンチェーン証券の所有者記録を支える制度基盤が焦点に

Last Updated on 2026年9月2日 by oba3

米証券取引委員会(SEC)が、1970年代から1980年代初頭を中心に整備された移転代理人の規則を、電子記録やブロックチェーンを利用する現在の証券市場に合わせて更新する改正案を示した。トークン化証券では取引速度や24時間取引が注目されやすいが、実際の制度設計では「誰が正式な所有者なのか」を記録し続ける仕組みが欠かせない。今回の改正案は、トークンの発行方法ではなく、証券の所有者記録、移転、企業行為を支える基盤を現代化しようとする動きとして重要になる。

目次

何が起きたのか?

SECは登録移転代理人に適用される規則と関連フォームを更新する改正案を提示した。現在の主要規則は紙の証券を前提として作られた部分が多く、その後、証券市場では電子的な記録管理や通信が一般化した。さらに近年は、ブロックチェーン上で証券の所有や移転を記録するトークン化証券も登場している。

改正案では、電子的な記録管理を前提としたルールへの更新に加え、ブロックチェーンを利用した記録や無券面証券にも対応できるよう、既存規則の用語や運用基準を見直す方向が示されている。移転処理、記録保存、資金や証券の保護、コンプライアンスなど、移転代理人が担う幅広い業務が対象となる。

ただし現時点では最終規則ではなく改正案の段階だ。今後の意見募集やSECによる検討を経て内容が変更される可能性があり、ブロックチェーン上の記録がどの条件で正式な証券記録として運用されるのかについても、実務上の整理を確認する必要がある。

なぜ重要なのか?

移転代理人は、証券市場の表面には見えにくい存在だが、株式やその他の証券について発行、取消し、移転を処理し、発行体の所有者記録を維持する役割を担う。配当や企業行為など、株主としての権利を正しく処理するためにも所有者記録の正確性が必要になる。

トークン化証券でも同じ問題は消えない。ウォレット間でトークンを送信できたとしても、そのブロックチェーン上の移転が正式な株主記録にどのように反映されるのかが曖昧であれば、既存証券市場との接続は難しい。

そのため、証券のトークン化を広げるには取引所やブロックチェーンだけでなく、所有者記録を管理する移転代理人の制度も同時に更新する必要がある。今回SECがこの部分に手を入れようとしていることは、オンチェーン証券を実際の市場インフラとして扱うための土台整備と見ることができる。

市場構造への影響

トークン化証券を考える際に重要なのは、ブロックチェーンに記録された残高と法的な所有者記録の関係だ。両者が別々に存在すれば、どちらを正式な記録として扱うのか、差異が発生した際にどう修正するのかという問題が残る。

移転代理人規則が電子記録やブロックチェーンを前提とした形へ更新されれば、オンチェーン記録を既存の株主名簿管理や証券移転の仕組みへ組み込むための制度設計がしやすくなる可能性がある。

これは単に株式をトークンとして発行できるようにする話ではない。取引所、ブローカー、カストディ、ブロックチェーン、移転代理人の間で、どの記録を基準に所有権を管理するのかという役割分担に関わる。トークン化市場が拡大するほど、この記録基盤を誰が担うかが市場設計上の重要な競争領域になる。

資金・規制・流動性との関係

機関投資家がトークン化証券を利用するには、売買できることだけでなく、所有権、保管、移転、決済が既存の証券法制と整合していることが重要になる。大量の資金を扱う金融機関にとって、ブロックチェーン上に記録があるという事実だけでは十分ではない。

特に企業行為では、配当を誰に支払うのか、議決権を誰が持つのか、譲渡制限がある証券を誰が保有できるのかなど、正確な所有者情報が必要になる。移転代理人の制度が電子化された証券市場へ適応すれば、こうした処理をオンチェーン取引と結び付ける経路が整う余地が生まれる。

一方で、規則改正だけで流動性が増えるわけではない。実際の市場形成には発行企業、取引所、証券会社、カストディ事業者などの参加が必要だ。今回の改正案は資金流入そのものより、資金が安心して入れるための記録と管理のルールを整える動きとして見る方が適切だ。

初心者向け補足

移転代理人とは、株式などの証券について「誰が保有者として登録されているか」を管理する事業者だ。株式が売買された際の名義変更や、新株発行、証券の取消し、株主への各種手続きなどを支える。

ブロックチェーンでは取引履歴を記録できるため、移転代理人が不要になるようにも見える。しかし証券の場合は、単なるトークンの移動と法律上の所有者変更が同じとは限らない。誰が正式な株主なのかを確定し、証券法上の制限を反映する役割が残る。

そのためトークン化証券の普及では、ブロックチェーン技術そのものと同じくらい、既存の証券記録をどうデジタル化するかが重要になる。

Web3Timesの視点

今回のSECの動きを「ブロックチェーンを認める規制」とだけ読むと、本質を狭く捉えてしまう。注目したいのは、オンチェーン証券が増えることを前提として、その裏側にある正式な所有者記録のルールまで更新しようとしている点だ。

これまでトークン化のニュースでは、どの企業が株式をトークン化したか、どのチェーンを採用したかが注目されてきた。しかし市場が大きくなるほど重要になるのは、誰が株主名簿を管理し、どの記録を正式なものとして扱い、配当や譲渡制限などを処理するのかという部分になる。

今後見るべきなのはトークン発行数ではない。SECの最終規則がブロックチェーン記録をどのように扱い、移転代理人、取引所、カストディ、発行企業の責任をどう分けるかだ。ここが明確になれば、トークン化証券は実験的なデジタル表現から、既存の証券制度と接続した市場へ広がるための重要な一段を進むことになる。

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