SECが最大7500万ドルの暗号資産募集制度を提案、トークン発行から投資契約終了までの制度経路が具体化

Last Updated on 2026年8月19日 by oba3

米証券取引委員会(SEC)は2026年8月18日、「Regulation Crypto Assets」と呼ぶ新たな暗号資産募集制度を正式に提案した。対象は暗号資産そのものを一律に証券として扱う制度ではなく、非証券の暗号資産が投資契約を伴って販売される場合の資金調達経路だ。提案には4年間で最大500万ドルを調達できるスタートアップ向け免除、12カ月ごとに最大7500万ドルを調達できる募集免除、さらに一定条件を満たした後に暗号資産を投資契約から切り離すセーフハーバーが含まれる。重要なのは「このトークンは証券か」という入口の分類だけではない。プロジェクトが資金を集め、開発を進め、発行者による重要な経営努力が終了した後に、暗号資産がどのような制度経路で投資契約から離れていくのかをSECが一つの流れとして示し始めたことだ。

目次

何が起きたのか?

SECは8月18日、Regulation Crypto Assetsを規則案として公表した。正式な対象は、暗号資産に関わる一定の投資契約について、1933年証券法の通常の登録制度とは異なる調整された募集経路を設けることだ。

第一の「スタートアップ免除」では、4年間に一度、最大500万ドルまでの募集を可能にする。第二の「資金調達免除」では、12カ月間に最大7500万ドルまで調達できる。どちらも無条件の規制免除ではなく、投資契約や暗号資産に関する原則ベースの情報開示が必要になる。

7500万ドルまでの免除ではさらに、発行者の財務状況に関する情報や継続的な報告が求められる。一定の資金調達規模を超えた場合には監査済み財務諸表も必要になる設計だ。詐欺防止や市場操作防止に関する連邦証券法も引き続き適用される。

もう一つの柱が「投資契約セーフハーバー」だ。発行者が投資契約で約束していた重要な経営努力を終了または恒久的に停止し、SECへの証明など所定の条件を満たした場合、対象となる非証券の暗号資産を投資契約に拘束されているものとして扱わない仕組みが提案されている。

さらにRegulation Crypto Assetsの免除を利用して発行された証券や一部の二次市場取引については、州証券法上の登録・資格要件を連邦規則で上書きする内容も含まれる。提案はまだ最終規則ではなく、官報掲載後60日間の意見募集を経て内容が変更される可能性がある。

なぜ重要なのか?

これまで米国の暗号資産規制では、あるトークンが証券なのか商品なのかという分類論争が中心になりやすかった。しかし実際にプロジェクトが米国内で事業を始めるには、その前後の制度経路も必要になる。

例えばネットワークが完成する前に開発資金を集める場合、購入者が発行者の開発努力による価値上昇を期待すれば、トークンそのものとは別に投資契約が成立する場合がある。その際、従来型の証券登録制度をそのまま適用すると、暗号資産プロジェクトの開発モデルと制度が合わないという問題が長く指摘されてきた。

今回SECが提示したのは、資金調達時には投資家向け開示と一定の証券規制を受けながら、ネットワークやプロジェクトが成熟し、発行者が約束していた重要な経営努力を終了した後には、条件付きで投資契約との結び付きを終了させる経路だ。

つまり発行時点の分類だけを固定するのではなく、プロジェクトの状態が変化することを制度側に組み込もうとしている。これはトークンを永久に同じ法的位置付けへ閉じ込めるモデルとは異なる。

市場構造への影響

Regulation Crypto Assetsが最終規則として導入されれば、米国でのトークン発行は「証券登録するか、海外で発行するか」という二択から変わる可能性がある。500万ドルと7500万ドルという異なる募集枠を使い、事業規模に応じて米国内で資金を集める経路が作られるためだ。

特に7500万ドルという上限は、実験的な小規模プロジェクトだけでなく、ある程度大きなネットワーク開発や事業拡大にも利用できる水準となる。一方で金額が大きくなれば財務開示や継続報告も重くなるため、単純な規制緩和ではなく、調達規模に応じて義務を増やす設計になっている。

さらに重要なのが二次市場への接続だ。セーフハーバーの条件を満たして投資契約との関係が終了すれば、暗号資産そのものについてSECの証券規制が永続的に残る構造を避けられる可能性がある。これにより発行段階と、その後のネットワーク利用・取引段階を異なる制度として扱いやすくなる。

ただしセーフハーバーは、一定期間が過ぎれば自動的にすべてのトークンが非証券になる制度ではない。発行者が約束した重要な経営努力を本当に終了したかなど、条件を満たす必要がある。したがって「4年経てば自由になる」といった単純な理解は適切ではない。

資金・規制・流動性との関係

今回の提案は、米議会でCLARITY Actなどの市場構造立法が最終成立していない中で出された。ただしSECは、議会が進まないため代わりに規則を作ったとは説明していない。ポール・アトキンス(Paul Atkins)委員長は、恒久的で将来に耐えられる市場制度には議会立法が不可欠だとした上で、SECも既存の証券法上の権限を使って資金調達経路を整備するとしている。

つまり議会立法とSEC規則は代替関係ではなく、異なる役割を持つ。CLARITY ActはSECと商品先物取引委員会(CFTC)の管轄を含む市場全体の法的土台を作ろうとしている。一方、Regulation Crypto Assetsは、現行証券法の下で暗号資産に関係する投資契約をどのように募集できるかという発行実務を具体化する。

資金面では、米国内で明確な募集免除が利用できれば、海外法人や国外販売へ依存していた一部プロジェクトが米国で資金調達を検討しやすくなる可能性がある。SEC自身も、既存制度が国内での資本形成を妨げ、海外発行を促してきたとの認識を示している。

一方、募集上限だけを見て資金調達が容易になると判断するのは早い。情報開示、継続報告、財務諸表、詐欺防止規則などは残るうえ、最終規則の内容も確定していない。実際の利用度は、コンプライアンス費用と米国内で調達できる資金規模のバランスによって決まる。

初心者向け補足

今回の制度を理解するには、暗号資産そのものと投資契約を分けることが重要だ。例えばあるネットワークで将来利用するトークン自体が証券ではなくても、開発企業が「この資金で事業を成長させる」と約束して投資家へ販売すれば、その販売関係が投資契約として証券法の対象になる場合がある。

募集免除とは、通常の証券登録をすべて行わなくても、一定の条件と上限の中で資金を集められる制度だ。今回の案では小規模な500万ドル枠と、最大7500万ドルの資金調達枠が用意されている。

セーフハーバーは、何をしても規制されない安全地帯という意味ではない。決められた条件を満たした場合に、暗号資産を投資契約へ結び付けていた状態が終了したと扱うための制度上の出口だ。

また今回の発表は提案段階であり、まだ企業がこの制度を利用できる状態ではない。意見募集とSECによる最終的な規則制定を経て初めて実際の運用条件が確定する。

Web3Timesの視点

Web3Timesが今回見るのは、7500万ドルまでトークンを売れるようになるという資金調達ニュースではない。重要なのは、米国の暗号資産制度が「証券か否か」という静的な分類から、発行、開発、成熟、二次流通までを時間軸で扱う制度へ踏み込み始めたことだ。

初期のネットワークでは、開発会社や創業チームの働きが価値形成に大きく影響する。その段階では投資契約として開示や投資家保護を求める。一方、重要な開発努力が終了し、暗号資産が独立したネットワーク上で利用される段階まで進めば、一定条件の下で投資契約との関係を終了させる。この入口と出口を一つの規則でつなげようとしている。

ここが実装されれば、プロジェクト側の戦略も変わる可能性がある。単に法的に証券ではないと主張するのではなく、どの募集免除で資金を集め、何を投資家へ開示し、どの状態になれば発行者の重要な経営努力が終了したと証明できるのかを事業計画に組み込む必要が出てくる。

今後注目すべきなのは500万ドルや7500万ドルという上限だけではない。最終規則でセーフハーバーの条件がどう定義されるのか、どのプロジェクトが実際にこの経路を利用するのか、そしてCLARITY Actなど議会立法とどのように接続されるのかが重要になる。米国のトークン規制は、資産の名前を分類する段階から、資本形成からネットワーク成熟までを制度の中で通過させる発行インフラを作る段階へ進み始めている。

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