ホワイトハウスが民主党に暗号資産倫理規制の妥協案受け入れを要求、利益相反への対応が市場構造法案の可決条件になる

Last Updated on 2026年7月25日 by oba3

米ホワイトハウスが、暗号資産市場構造法案を前進させるため、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の暗号資産事業への関与を制限する倫理規定について、民主党に妥協案を受け入れるよう求めている。政権側は大統領にも制限が及ぶことを交渉成果として評価するよう促しているが、民主党内には対象範囲や適用期間、執行方法が不十分だとの反発が残る。今回の争点は大統領個人の暗号資産保有だけではない。倫理規定への合意を、米証券取引委員会と米商品先物取引委員会の役割を整理する市場構造法案全体の採決へ進む交換条件として成立させられるかが問われている。

目次

何が起きたのか?

ホワイトハウスと上院共和党議員は、CLARITY法案を含む暗号資産市場構造法案の倫理条項を巡り、大統領にも一定の制限を適用する妥協案をまとめたと報じられた。交渉にはシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員やバーニー・モレノ(Bernie Moreno)上院議員らが関与し、政権側も法案の前進に向けて条文調整を進めている。

政権側は、トランプ大統領を規制対象から全面的に除外するのではなく、暗号資産の発行や支援などに一定の制約を設ける案を受け入れたこと自体が大きな譲歩だと位置付けている。そのうえで、民主党に対し、要求を拡大し続けるのではなく、この妥協を成果として受け入れて市場構造法案の審議を進めるよう求めている。

ただし、民主党側が最終文案へ合意したとは確認されていない。民主党議員や進歩派団体からは、制限の対象となる取引や事業、家族への適用、既存資産の扱い、違反時の執行主体などが十分ではないとの批判が出ている。共和党とホワイトハウスの間で案がまとまっても、それだけで上院通過に必要な超党派票が確保されたことにはならない。

法案の基礎には、下院を通過したH.R.3633のデジタル資産市場明確化法案2025年版(Digital Asset Market Clarity Act of 2025)がある。上院では市場区分に関する規定に加え、倫理、マネーロンダリング対策と顧客確認、ステーブルコイン報酬、分散型金融の扱いなどを盛り込んだ修正文案の調整が続いている。

なぜ重要なのか?

倫理条項は、暗号資産を証券と商品へどのように区分するかを直接定める規定ではない。それでも同条項で合意できなければ、市場構造法案全体が本会議採決へ進めない可能性がある。技術的な市場制度と政治家の利益相反規制が、一つの立法パッケージとして結び付いているためだ。

上院では通常、討論を終えて最終採決へ進むために60票が必要になる。共和党だけでは安定して到達できないため、複数の民主党議員から支持を得る必要がある。民主党側が倫理条項を法案支持の条件にすれば、政権と共和党は市場規制の内容だけでなく、トランプ大統領とその家族の暗号資産事業をどこまで制限するかについても譲歩を迫られる。

トランプ大統領や家族は暗号資産関連事業との関係を持ち、政策決定が関連資産や企業の価値へ影響する可能性を民主党側が問題視している。市場構造法が暗号資産企業の事業環境を改善する場合、公職者が同じ分野から経済的利益を得ていれば、制度が公益ではなく私的利益のために設計されたとの疑念が生じる。

一方、禁止範囲を広げすぎれば、法案の成立に必要なホワイトハウスの支持を失う恐れがある。どの関与を禁止し、どの既存資産を対象とし、誰が違反を調査するのかという設計が、法案全体を維持できる妥協点を左右する。

市場構造への影響

CLARITY法案が目指すのは、暗号資産全般を一律に証券または商品へ分類することではない。発行方法、資金調達との関係、取引段階、ネットワークの分散性などに応じ、証券性を持つデジタル資産や募集行為を米証券取引委員会が監督し、一定のデジタル商品市場を米商品先物取引委員会が監督する枠組みを整えることである。

この制度が成立すれば、暗号資産取引所、ブローカー、ディーラー、カストディー事業者は、登録先や顧客保護義務を判断しやすくなる。ただし、倫理規定の交渉がまとまらなければ、市場区分に関する条文で一定の合意があっても、法案全体が採決されない状態が続く。

つまり、米国の暗号資産市場基盤を整える速度は、米証券取引委員会と米商品先物取引委員会の権限設計だけでは決まらない。公職者による暗号資産の発行、宣伝、保有、収益受領をどこまで認めるかという政治倫理が、取引所登録や顧客資産保護を実現するための前提条件になっている。

法案が遅れれば、企業は既存の州免許、連邦登録、銀行監督、証券法などへ対応しながら、将来の制度変更も見込んでシステムを設計しなければならない。法律成立後にも規則作成や移行期間が必要となるため、倫理交渉による数カ月の遅延が、登録制度や新サービスの開始ではさらに長い遅れへつながる場合がある。

資金・規制・流動性との関係

倫理条項への合意が市場構造法を前進させれば、企業は将来の登録制度を前提に人員、カストディー、取引監視、顧客資産管理へ資金を振り向けやすくなる。一方、交渉が決裂すれば、連邦市場構造の不統一が続き、事業者は複数の法的解釈や免許制度へ対応する費用を負い続ける。

規制上の不確実性は、すべての企業へ同じ影響を与えるわけではない。大手取引所や金融機関は専門法務や規制対応部門を維持できるが、小規模事業者は米国市場への参入や商品追加を延期する可能性がある。ただし、法案成立後の登録費用が高ければ、制度整備そのものが大手優位を強める場合もある。

倫理規定には市場への信頼を支える役割もある。政策決定者が暗号資産事業から利益を得られる状態で業界向け法案が成立すれば、制度の中立性に疑問が残る。投資家や金融機関が新しい市場基盤へ参加するには、分類基準やライセンスだけでなく、制度を作る側の利益相反が管理されていることも重要になる。

一方、ホワイトハウスの妥協案を拒否して交渉が長期化すれば、倫理性を高めるための要求が市場制度全体の停滞を招くという反論も出る。民主党側には、現在の案で得られる制限を受け入れるか、より強い規定を求めて法案成立の可能性を下げるかという選択が生じている。

今後確認すべきなのは、妥協案が大統領本人だけを対象とするのか、配偶者や家族、関連企業まで含むのか、既存の暗号資産収入へ適用されるのかという点である。適用期間や執行機関、違反時の措置も、民主党が支持できる内容かを判断する材料になる。

初心者向け補足

利益相反とは、公的な判断をする立場の人物が、その判断によって自分や家族の資産を増やせる状態を指す。暗号資産市場の法律を作る政治家が、関連トークンや企業から収益を得ていれば、判断が公共の利益に基づいているのか疑われやすくなる。

倫理条項は、暗号資産の売買方法を定める市場規則とは異なる。大統領や議員などが暗号資産を発行したり、宣伝したり、事業収益を受け取ったりする行為をどこまで制限するかを定める規則である。

今回重要なのは、倫理条項だけを単独で採決する話ではないことだ。倫理規定への合意が得られなければ、取引所の登録や規制当局の役割分担を定める市場構造法案にも必要な票が集まらない可能性がある。

Web3Timesの視点

今回の交渉を、トランプ大統領にどの程度厳しい制限を課すかという個人規制の論争だけで読むと、市場制度との接続を見落とす。倫理条項は、暗号資産市場の分類や取引所監督を実現するために民主党票を引き出す交換条件として機能している。

ホワイトハウスが求めているのは、民主党が妥協案を十分な倫理改革と認めることだ。民主党側が受け入れれば、法案は60票確保へ近づく可能性がある。受け入れなければ、倫理条項の再交渉に時間を使い、市場構造法全体の年内法制化がさらに難しくなる。

ただし、妥協の成立だけで法案通過が保証されるわけではない。マネーロンダリング対策、ステーブルコイン報酬、分散型金融、上院銀行委員会と農業委員会の文案統合など、他の論点も残る。上院で修正文案を可決した場合には、下院との文面調整も必要になる可能性がある。

今後見るべきなのは、政権が譲歩を宣言したかではなく、最終条文が公開され、民主党議員が具体的に支持を表明し、本会議で必要な票が確保されたかである。米国の暗号資産制度整備は現在、市場規則の内容だけでなく、その制度を作る政治家の利益をどう制限するかによって成立経路が決まる局面にある。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Web3をやさしく解説するOba3

目次