ペイワードがGTNと提携し香港株のトークン化へ拡大、各国市場を結ぶ発行・保管・流通網の構築が始まる

Last Updated on 2026年7月23日 by oba3

暗号資産取引所クラーケン(Kraken)の親会社ペイワード(Payward)は、金融取引基盤を提供するGTNと提携し、トークン化株式サービスのエックスストックス(xStocks)を米国株以外の市場へ広げる。最初の対象は香港上場株で、その後は英国、欧州連合、韓国の株式へ順次拡張する計画だ。

今回の重要点は、香港株の商品が追加されることだけではない。GTNが各国市場での注文執行、原資産の保管、残高記録を担い、ペイワード側が株式をオンチェーンで流通させる枠組みを組み合わせる。国ごとに分断されてきた証券市場と、24時間動くブロックチェーン上の流通基盤を接続する取り組みである。

目次

何が起きたのか?

ペイワードとGTNは2026年7月22日、エックスストックスの対象を米国株と米国上場ETFから国際市場へ拡大する提携を発表した。香港上場株のトークン化を最初の案件とし、英国、欧州連合、韓国の上場資産を数週間以内に追加する方針を示している。

GTNは一つの接続基盤を通じ、90を超える市場の株式やその他の資産へアクセスできる金融インフラ企業である。今回の提携では、トークンの裏付けとなる現地株式の注文執行、保管、帳簿管理を担う。ペイワード側は、その原資産に対応するトークンをエックスストックスの流通網へ載せる。

エックスストックスはこれまで、米国株とETFを中心に展開してきた。公式発表によると、対象商品は500銘柄を超え、累計取引額は350億ドル超、保有者は約20万人に達している。各トークンは原則として対象株式を1対1で裏付け、対応する取引所、ウォレット、分散型金融サービスの間で移転できる設計となっている。

ただし、香港株を含むすべての商品が世界中で一律に利用できるわけではない。提供地域は現地の規制要件と事業者の免許に左右される。米国居住者など対象外となる地域があり、GTNの機関顧客への提供も必要な認可を取得した後に始まる予定だ。

なぜ重要なのか?

外国株へ投資する場合、通常は対象市場を扱う証券会社の口座、現地通貨、取引時間、清算制度に対応しなければならない。米国株と香港株を保有するだけでも、注文経路、保管機関、休場日、決済通貨が異なる。

株式をトークン化すれば、原資産が上場する国とは別の共通基盤で残高を管理し、対応するサービス間で移転できる可能性が生まれる。利用者から見ると、米国株と香港株を同じウォレットや取引画面で扱えるため、市場ごとに口座を分ける負担を減らせる。

一方、トークン化によって現地の証券制度が消えるわけではない。裏付け株式は従来の市場で取得され、規制された保管機関が保有する。トークンの発行量と原資産の残高を一致させるには、注文執行、保管、発行、償還を国境を越えて連動させる必要がある。

市場構造への影響

これまでのエックスストックスは、流動性の厚い米国市場をオンチェーンへ移すことに重点を置いていた。GTNとの提携後は、複数国の証券を共通のトークン規格で扱う段階へ進む。これは単一市場の商品展開から、各国の証券市場を接続する流通網への転換である。

原資産は香港、英国、欧州、韓国の市場で取引される一方、対応トークンは複数の暗号資産取引所、ウォレット、分散型取引所で流通する可能性がある。発行市場と流通市場が別の場所と時間帯で動くため、従来の証券取引所だけでは完結しない価格形成が生まれる。

この仕組みが広がれば、証券会社、カストディ企業、トークン発行会社、ブロックチェーン、暗号資産取引所が一つの株式取引を分担する。競争軸も、取扱銘柄数から、各国株式を正確に取得し、裏付けを確認し、複数の流通先へ安全に届けられるかへ移る。

ただし、オンチェーンで24時間売買できても、裏付け株式の現地市場が閉まっている時間には、裁定取引が制限される。夜間や休日のトークン価格が原資産から大きく離れた場合、現地市場の再開まで価格差を解消できない場面も想定される。

資金・規制・流動性との関係

国際株式をトークン化するには、トークン購入資金だけでなく、現地市場で原資産を取得するための資金と通貨交換が必要になる。香港株では香港ドル、英国株では英ポンドなど、各市場の決済通貨へ変換する経路を確保しなければならない。

GTNが注文執行と保管を担うことで、ペイワードは国ごとに証券会社やカストディとの接続を一から構築する負担を抑えられる。一方、GTN側の接続障害や保管記録の不一致が起きれば、複数のトークンへ影響が広がる可能性もある。市場拡大と同時に、基盤事業者への依存も高まる。

規制面では、原資産の取引、トークンの発行、顧客への販売、オンチェーン移転が異なる法域にまたがる。エックスストックスは現地上場企業が直接発行する株式そのものではなく、別の発行体が株式を裏付けとして提供する商品である。株主総会での議決権、配当、企業行動がどのようにトークン保有者へ反映されるかも確認が必要だ。

流動性についても、現地株式の売買高とオンチェーン市場の売買高は同じではない。利用者が増えても、発行と償還を担う事業者やマーケットメーカーが十分に参加しなければ、トークン価格と原資産価格の差が広がる場合がある。国際展開の成否は、銘柄数ではなく、両市場を結ぶ裁定経路の厚さに左右される。

初心者向け補足

トークン化株式とは、上場株式の価格や経済的権利に連動することを目指し、ブロックチェーン上で発行されるデジタル商品である。通常の株式をブロックチェーンへ直接移す場合もあれば、別の発行体が保有する株式を裏付けとしてトークンを発行する場合もある。

エックスストックスでは、裏付けとなる株式を規制下の保管先で持ち、その数量に対応するトークンを発行する仕組みが使われている。ただし、トークン保有者が上場企業の株主名簿へ直接登録されるとは限らない。

24時間取引できることは、いつでも同じ条件で売買できることを意味しない。原資産市場が閉まっている時間は新しい価格情報や裁定取引が限られ、売値と買値の差が広がる可能性がある。

Web3Timesの視点

今回評価すべきなのは、香港株という新カテゴリーの追加ではなく、国境別に分かれた証券インフラをエックスストックスへ接続する仕組みである。GTNは現地市場で原資産を取得・保管し、ペイワードはその残高をオンチェーン商品として流通させる。両社の役割分担が国際展開の土台になる。

株式のオンチェーン化では、トークンを発行する技術より、原資産との一致を維持する運用が難しい。取引停止、株式分割、配当、上場廃止、通貨換算などが起きた際、トークン側の残高と価格へ正確に反映しなければならない。対象国が増えるほど、この事務処理は複雑になる。

また、ブロックチェーン上の移転可能性と、各国での販売可能性は別の問題である。技術的にはウォレット間で動かせても、特定地域の利用者へ販売できない場合がある。国境を越えるのはトークンの記録であり、証券規制そのものではない。

今後確認すべきなのは、香港株の具体的な対象銘柄、発行・償還の条件、配当や議決権の扱い、現地市場外の時間帯における価格差である。英国、欧州連合、韓国への展開についても、発表された予定と実際の認可取得を分けて見る必要がある。

ペイワードとGTNの提携は、世界中の株式を単純に一つの取引所へ集める計画ではない。各国の取引所と保管制度を残したまま、その上に共通のオンチェーン流通層を構築する動きである。国際株式へのアクセスと取引時間の境界を変えられるかは、発行数よりも、現地証券市場とトークン市場を継続的に同期できるかで決まる。

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