Last Updated on 2026年8月18日 by oba3
トークン化株式の市場規模が約28億ドルに達し、RWA市場に占めるシェアが年初の約5%から15%へ約3倍に拡大した。8月17日に公表されたThe Blockの集計では、オンド・ファイナンス(Ondo Finance)、バイナンス(Binance)のbStocks、xStocksの3陣営だけで市場の77%を占める。ここで重要なのは、株式をブロックチェーンへ載せる市場が大きくなったというだけではない。現在流通を先行して獲得しているのは、既存株式の価格や経済的利益をトークンで再現する仕組みだ。一方、セキュリタイズ(Securitize)やスーパーステート(Superstate)は、株主としての法的権利そのものをオンチェーンへ移す方向を進めている。オンチェーン株式市場の次の競争は、価格エクスポージャーを素早く配るモデルと、株式そのものをブロックチェーン上の証券として流通させるモデルのどちらが資金と流動性を集めるかに移っている。
何が起きたのか?
The Blockの2026年8月17日時点の集計によると、トークン化株式の市場規模は約28億ドルとなり、RWA市場全体に占める割合は約15%へ上昇した。年初時点のシェアから見ると約3倍となり、2026年に入って成長が目立つRWAカテゴリーの一つになっている。
市場はすでに上位事業者へ集中している。オンドが約9億5700万ドルで最大となり、バイナンスのbStocksが約6億2200万ドル、xStocksが約6億ドルと続く。3陣営を合わせるとトークン化株式市場の約77%を占める計算だ。
RWA全体の資産移転量も8月には約200億ドルへ拡大し、前月の約90億ドルから倍以上になったとされる。ただし市場価値と取引量は同じ指標ではなく、28億ドルという残高だけから実際の流動性を判断することはできない。
さらに「トークン化株式」という呼び方の中には異なる法的構造が混在している。オンド、bStocks、xStocksなど現在の主要商品は、実際の株式やそれを保有する仕組みを裏付けとしながら、投資家には株価や配当などの経済的成果をトークンで再現する設計が中心だ。元の企業の株式を直接保有した場合と同じ議決権や株主としての法的地位が、そのままトークン保有者へ移るとは限らない。
なぜ重要なのか?
株式をオンチェーンへ持ち込む方法は一つではない。最も早く市場を広げやすいのは、既存の株式市場を裏側で利用し、その価格や経済的利益をトークンへ写す方法だ。発行企業自身の株主管理システムを全面的に変更しなくても、暗号資産取引所やウォレットへ商品を配布しやすい。
この利点を示しているのが現在の上位3陣営だ。すでに存在する米国株の価格形成と流動性を利用しながら、ブロックチェーン上では小口化、ウォレット保有、ステーブルコイン決済、DeFiとの接続といった機能を追加できる。
一方、このモデルには限界もある。トークンを持っていることと、企業の株主名簿上で株主になることは同じではない。商品によっては議決権などがなく、投資家の権利は発行体、特別目的会社、カストディアンなどとの契約関係に依存する。
そこで別の方向として進んでいるのが、株式そのものをオンチェーン上で発行・記録するモデルだ。こちらではブロックチェーン上の記録と法的な株主持分を直接近づけることができるが、証券規制、名義管理、取引所制度、本人確認など既存市場との調整はより重くなる。
市場構造への影響
現在の約28億ドル市場を見ると、先に流通を獲得しているのは合成的な表現を使うモデルだ。オンド、bStocks、xStocksが77%を占めていることは、初期市場では株主制度そのものを作り替えるより、既存株式の経済的エクスポージャーを暗号資産の流通網へ接続する方が規模を作りやすいことを示している。
ただし、ここでいう合成型は必ずしも無担保という意味ではない。例えばオンドはトークンを実際の証券で裏付け、bStocksも規制された仕組みを通じて実株を裏付けに利用している。論点は担保の有無ではなく、トークン保有者が原株を直接所有する法的構造なのか、それとも原株の経済的成果を別の証券や契約を通じて受け取るのかという違いだ。
セキュリタイズやスーパーステートが目指す真正なオンチェーン株式では、ブロックチェーン上のトークンそのものを法的な株主持分へ近づける。そのモデルが普及すれば、オンチェーン市場は既存株式の価格をコピーする場所ではなく、発行、保有、移転、決済までを担う証券市場へ発展する余地がある。
結果として、今後の競争軸はトークン化できる銘柄数だけではなくなる。誰が原株への法的権利を管理するのか、どこから流動性を調達するのか、トークンをDeFiで利用できるのか、規制された取引所やブローカーへ接続できるのかという市場設計の違いが重要になる。
資金・規制・流動性との関係
オンチェーン株式市場では、流動性をゼロから作る必要があるとは限らない。既存の米国株市場を裏側で利用する商品なら、発行・償還を通じて原株市場の価格や売買能力へ接続できる。この仕組みは、新しいトークン市場だけで独立した注文板を育てるより早く規模を拡大できる。
バイナンスはこの違いをさらに明確にしている。同社は2026年6月、対象となる米国外利用者向けに7000銘柄以上の米国株・ETFを規制ブローカー経由で直接売買できるサービスを開始し、別途bStocksというオンチェーンで利用可能な商品も展開した。つまり実株へのアクセスと、ブロックチェーン上で組み合わせやすいトークンという二つの需要を別々に取り込もうとしている。
一方、真正なオンチェーン株式が大規模化するには規制制度の整備が不可欠になる。米国ではSECがトークン化証券を新しい取引基盤で扱うための制度を検討し、DTCCなど既存の証券インフラも株式のオンチェーン化を進めている。ここまで進めば競争相手は暗号資産企業同士ではなく、取引所、証券会社、清算・保管機関まで含むことになる。
そのため現在の77%というシェアが長期的な勝者を決めたとは言えない。初期市場では配布力と既存株式への接続が優位でも、法的な株主権を持つオンチェーン証券が規制市場で広く流通できるようになれば、資金の集まる場所が変わる可能性がある。
初心者向け補足
トークン化株式とは、株式に関連する価値や権利をブロックチェーン上のトークンとして扱う仕組みだ。ただし「トークン化株式」という名前だけで、通常の証券口座で株を買った場合と同じ権利を持つとは限らない。
合成型では、実際の株式を裏付けとして保有したり、金融契約を利用したりして、株価や配当などの経済的成果をトークンへ反映する。利用者は株式に近い値動きを得られる一方、議決権や発行企業への直接的な株主権を持たない場合がある。
真正なオンチェーン株式では、ブロックチェーン上の記録そのものが法的な株主持分と結び付くことを目指す。技術的には似たトークンに見えても、破綻時の請求権、議決権、配当、名義管理などの扱いは大きく異なる。
そのため市場規模を比較する際には、何ドル分のトークンが存在するかだけでなく、そのトークンが何を法的に表しているのかを確認することが重要になる。
Web3Timesの視点
Web3Timesが今回注目するのは、トークン化株式がRWAの15%まで増えたという成長率だけではない。より重要なのは、オンチェーン株式市場で最初の流動性を誰が、どの法的構造で獲得するかという勢力図が形成され始めたことだ。
現在はオンド、bStocks、xStocksのように、既存株式の価格形成と保管インフラを利用しながら暗号資産の流通網へ持ち込むモデルが先行している。これは市場を素早く立ち上げるうえで合理的だ。既存の株式流動性を利用しながら、ウォレットやステーブルコイン、DeFiという新しい配布経路を追加できるからだ。
しかし最終的な市場が同じ形になるとは限らない。セキュリタイズ、スーパーステート、さらに既存証券インフラが真正なオンチェーン株式を広げれば、投資家は価格へのエクスポージャーだけでなく、法的な株主権を持ったままブロックチェーン上で資産を移動できるようになる可能性がある。
今後見るべきなのは28億ドルが50億ドルへ増えるかだけではない。合成型の商品が流動性とDeFiでの利用をどこまで囲い込むのか、真正なオンチェーン株式が規制と株主権を維持したまま同じ使いやすさを実現できるのかが重要になる。トークン化株式の競争は「株価をブロックチェーンで取引できるか」という段階から、株式市場の権利、流動性、決済を誰のインフラ上で再構築するかという段階へ入り始めている。
