Last Updated on 2026年8月16日 by oba3
暗号資産運用会社のビットワイズ(Bitwise Asset Management)が、スーパー・ステート(Superstate)と連携し、既存ETFの持分をブロックチェーン上で保有できる仕組みの検討を始めた。最初の候補となるのは、ニューヨーク証券取引所で取引されているビットワイズ・ソラナ・ステーキングETFのBSOLだ。今回の動きで重要なのは、新たな暗号資産ETFを作ることではない。すでに証券市場で取引されているETF持分そのものをオンチェーン上の記録へ接続し、従来の証券口座とブロックチェーンの間を行き来できる仕組みを構築しようとしている点にある。
何が起きたのか?
ビットワイズは2026年8月、スーパー・ステートと共同で、同社が運用するファンド持分をトークン化された形で保有できる仕組みを検討すると発表した。最初の対象候補として挙げられたのが、ビットワイズ・ソラナ・ステーキングETFのBSOLである。
BSOLは2025年10月に取引を開始した商品で、ソラナ(Solana)のSOLを直接保有しながらステーキング報酬の獲得を目指す。ビットワイズは保有SOLの100%をステーキングする方針を掲げており、現物価格への連動とネットワーク報酬を一つの上場商品へ組み込んでいる。
今回検討されているトークン化では、ブロックチェーン上で保有する持分も通常の帳簿形式で保有するETF持分と同じ法的・経済的権利を持つ設計が想定されている。スーパー・ステートはSEC登録の名義書換代理人として、オンチェーン上の持分記録と正式な株主記録を結び付ける役割を担う。
ただし、現時点でBSOLのトークン化が承認されたわけではなく、トークン化持分がすでに提供されているわけでもない。また今回確認できる発表は、ビットワイズとスーパー・ステートによるトークン化の検討であり、新たなトークン化承認を求めるSECへの個別申請が完了したと断定できる段階ではない。提供開始には適用される証券法や規制要件を満たす必要があり、実現時期も確定していない。
なぜ重要なのか?
これまで暗号資産ETFを巡る議論では、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)、SOLなどを証券市場の商品として保有できるかが中心だった。投資家はブロックチェーン上で暗号資産を直接管理する代わりに、証券会社の口座からETFを購入できるようになった。
今回の構想は、その流れを逆方向にも広げる。ETFがオンチェーン資産を証券市場へ持ち込むだけでなく、そのETF持分自体をブロックチェーン上へ記録しようとしているためだ。
実現すれば、一つの商品について従来型の証券口座で保有する方法と、規制されたオンチェーン記録を利用する方法が並存する可能性がある。これは暗号資産をETFへ包むだけの第一段階から、ETFという証券そのものの保有・移転インフラを変更する第二段階への移行と見ることができる。
市場構造への影響
ETF持分のオンチェーン化で重要になるのは、単に株式を表すトークンを発行することではない。ブロックチェーン上の記録と、法的に有効な受益権の記録を一致させる必要がある。
スーパー・ステートが提供する仕組みでは、トークン化された持分を単なるETF価格への合成的な連動商品として作るのではなく、実際のファンド持分そのものをオンチェーンで記録することを目指している。この違いは大きい。価格だけをコピーしたトークンであれば、投資家は元のETFに対する直接的な権利を持たない場合がある。一方、正式な名義記録と連動する仕組みなら、ブロックチェーン上の持分が規制商品の所有権と接続する。
ただし、トークン化されたBSOL持分が自由にウォレット間を移転できるとは限らない。ビットワイズ側は、トークン化持分も既存の記録管理制度の中で扱われ、規制要件に従う必要があるとしている。そのため、誰でも無制限に送受信できる暗号資産と同じ流通モデルになるとは考えにくい。
それでもETF持分がオンチェーン記録へ接続されれば、証券市場とブロックチェーン市場の境界は変わる。従来は証券会社、取引所、名義書換代理人などが管理していた所有記録の一部を、ブロックチェーン上でも確認・処理できる可能性が出てくる。
資金・規制・流動性との関係
トークン化ETFが本格的に利用されるためには、保有記録だけでなく資金移動や流通方法も重要になる。オンチェーンでETF持分を持てても、購入や償還が従来の営業時間や決済経路に完全に依存したままであれば、利用方法は限定される。
一方、将来的にトークン化された現金やステーブルコイン、オンチェーン証券決済と接続できれば、規制ETFとデジタルマネーを同じネットワーク上で処理する余地が生まれる。そこではETFを証券取引所で売買するだけでなく、カストディー、担保管理、資産移転などへ利用できる可能性も出てくる。
ただし、こうした用途がBSOLで認められているわけではない。ビットワイズが現在示しているのはトークン化された保有形式を検討する段階であり、自由な二次流通や分散型金融での利用まで確定しているわけではない。
制度上の焦点は、オンチェーン記録をどこまで既存の証券法上の所有記録として扱えるかにある。ETFである以上、投資家保護、名義管理、譲渡制限、カストディーなど既存市場の要件は残る。トークン化はそれらを消すのではなく、規制された証券インフラをブロックチェーンへ接続する形で進むことになる。
初心者向け補足
ETFは、複数の資産や特定の資産価格へ連動するよう設計され、証券取引所で売買できる金融商品だ。BSOLの場合はSOLを保有し、その価格変動に加えてステーキングから得られるネットワーク報酬も取り込むことを目指している。
今回のトークン化は、ETFが保有するSOLをトークン化する話ではない。すでにブロックチェーン上の資産であるSOLを保有するETFについて、そのETFの持分そのものをオンチェーンで記録するという構想だ。
また、トークン化されたETF持分と、ETF価格へ連動する独自トークンは同じではない。今回想定されているのは、通常のETF持分と同じ権利を持つ所有記録をブロックチェーンへ接続するモデルだ。この法的な接続が成立するかどうかが、単なるデジタルトークンとの大きな違いになる。
Web3Timesの視点
Web3Timesが今回注目するのは、SOLへの投資商品が増えたことではない。ETFという伝統金融の商品そのものが、オンチェーン上の資産へ変わり始める可能性が出てきたことだ。
これまで暗号資産ETFは、オンチェーン資産を証券市場へ取り込むための入口だった。投資家はウォレットを持たずに暗号資産価格へアクセスできる。その次にETF持分までオンチェーン化されれば、今度は証券市場側の資産がブロックチェーンへ戻ってくる。
ビットワイズにはすでにスーパー・ステートと運営するトークン化プライベートファンドの実績があり、そこではファンド持分をイーサリアム、ソラナなど複数ネットワーク上で保有できる。BSOLで同様の考え方が上場商品へ広がれば、トークン化は私募ファンドから公開市場の商品へ一段進むことになる。
今後見るべきなのはBSOLのSOL保有量だけではない。トークン化持分が実際に提供されるのか、どのブロックチェーンが採用されるのか、通常の証券口座との間で持分を移行できるのか、さらにオンチェーン決済や担保利用まで認められるのかが重要になる。暗号資産ETFの次の競争は、どのトークンを証券市場へ上場するかだけでなく、ETFという規制商品そのものをどこまでブロックチェーン上で保有・移転できるかという制度設計へ広がり始めている。
