Last Updated on 2026年8月27日 by oba3
ハイパーリキッド政策センター(Hyperliquid Policy Center・HPC)とトレードXYZ(tradeXYZ)が、米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission・CFTC)に対し、原油などエネルギー商品を対象とする永久先物を米国の規制市場で提供できる枠組みを整えるよう求めた。焦点は暗号資産で普及した永久先物をそのまま米国へ持ち込むことではない。WTI原油やブレント原油のような伝統的商品を24時間取引できるデリバティブへ変え、オンチェーンの執行、証拠金管理、清算を既存の商品先物規制へどう組み込むかという制度実験だ。
何が起きたのか?
HPCとトレードXYZは2026年8月26日、CFTCが進めているエネルギー永久先物と24時間取引に関する意見募集へ共同意見書を提出した。CFTCは6月、原油のように現物受渡しや保管が可能なエネルギー商品を参照する永久先物について、価格形成、清算、顧客保護、市場監視などの論点を市場参加者へ問いかけていた。
トレードXYZはハイパーリキッド(Hyperliquid)上で第三者が市場を展開できる仕組みを利用し、WTI原油、ブレント原油、ヘンリーハブ天然ガスなどの永久先物を提供している。HPCによると、2025年10月の開始以降、同社の市場は累計5000億ドルを超える取引高を記録した。
両者はCFTCに対し、特定のブロックチェーン技術を前提としない原則ベースの制度、24時間稼働する取引所や清算機関への明確な扱い、継続稼働市場での営業日の定義、ステーブルコインやトークン化された伝統資産を証拠金として使う経路、オンチェーン技術を執行・証拠金・清算・決済・記録へ利用することの明確化を求めた。
なぜ重要なのか?
米国では2026年5月、暗号資産を参照する永久先物が規制された先物として初めて認められた。CFTCの登録商品一覧では、ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、XRPに連動する永久先物が認証されている。一方、原油など実物商品については追加検討が必要とされている。
HPCとトレードXYZが求めているのは、この制度経路を暗号資産からエネルギーへ広げることだ。永久先物には満期がなく、一定期間ごとに限月を乗り換える必要がない。価格差を調整する資金調達率を利用して参照価格との連動を維持するため、継続的な価格リスクを管理したい市場参加者には、従来の期限付き先物とは異なる選択肢になる。
市場構造への影響
原油永久先物が米規制市場へ入れば、オンチェーンデリバティブと伝統的な商品先物の境界は薄くなる。これまで永久先物は暗号資産取引所を中心に発展してきたが、その市場設計自体はビットコインだけに依存するものではない。原油価格を参照し、証拠金と清算を適切に管理できれば、同じ形式を商品市場へ持ち込む余地がある。
特に24時間取引は大きな論点になる。従来の原油先物には取引停止時間があり、週末に地政学的な事件が起きても規制市場が再開するまでポジションを調整できない時間帯がある。HPCは2026年初めの中東情勢悪化時、既存市場が閉まっている間にもオンチェーン原油永久先物で価格形成が続いた事例を挙げている。
ただし永久先物が既存の期限付き先物を置き換えると決まったわけではない。期限付き先物は特定月の現物受渡しや価格曲線を管理する役割を持つ。今回の提案も、永久先物を既存市場の代替ではなく、継続的な価格エクスポージャーを提供する補完商品として位置付けている。
資金・規制・流動性との関係
24時間取引を実現するには、取引画面だけを常時開けておけばよいわけではない。証拠金の追加、価格変動に応じた清算、破綻処理、担保移動まで週末を含めて動く必要がある。銀行決済が止まっている時間帯にドル資金を移せなければ、取引所だけを24時間化しても資本管理が追いつかない。
そのためHPCとトレードXYZは、規制デリバティブの証拠金としてステーブルコインやトークン化された伝統資産を認めることも提案している。オンチェーンで移転できる担保なら、週末でも証拠金を追加し、清算処理を続けられるという考え方だ。
一方、CFTCはまだ原油永久先物を承認したわけではない。価格操作への耐性、参照価格の設計、レバレッジ上限、清算方法、顧客保護などを検討している段階である。HPC側も資産ごとのレバレッジ制限や、資金調達率と清算方法の明確な開示などを安全策として提案している。
初心者向け補足
通常の原油先物には満期があり、例えば特定の月を対象とした契約を取引する。長期間同じ価格エクスポージャーを維持したければ、満期前に現在の契約を閉じて次の限月へ乗り換える必要がある。
永久先物にはこの満期がない。その代わり、永久先物の価格が原油の参照価格から離れすぎないよう、ロングとショートの間で資金調達率による支払いを行う。暗号資産市場では一般的な仕組みだが、今回の論点はそれを原油のような伝統商品へ適用できるかにある。
Web3Timesの視点
今回の提案を、ハイパーリキッド型の暗号永久先物が米国へ進出する話だけで読むと重要な変化を見落とす。制度上の本丸は、24時間動くオンチェーン市場を米国の商品デリバティブ規制の中へ組み込めるかだ。
原油は航空会社、製油会社、運送会社、資産運用会社などが実際の事業リスクを管理する巨大な市場である。そこへ永久先物が加われば、オンチェーン市場は暗号資産の投機基盤ではなく、企業が原材料価格をヘッジするインフラとして伝統金融と競合することになる。
今後注目すべきなのは原油永久先物の商品化だけではない。CFTCが24時間清算をどう認めるのか、ステーブルコインを証拠金として扱えるのか、オンチェーンの取引記録や自動清算を既存の取引所・清算機関規則にどう適合させるのかが重要になる。ここが制度化されれば、永久先物は暗号資産固有の商品ではなく、原油や天然ガスを含む世界のデリバティブ市場を再設計する一つの契約形式へ広がる余地が生まれる。
