SECが暗号資産カストディ規則の再策定をホワイトハウス審査へ、機関投資家の資産を誰が合法的に保管できるかが競争軸に

Last Updated on 2026年8月27日 by oba3

米証券取引委員会(SEC)が、投資顧問会社や投資会社による暗号資産の保管ルールを見直す新たな規則案をホワイトハウスの審査へ送った。規則案の名称は「Amendments to the Custody Rules」で、2026年8月25日に行政管理予算局(OMB)傘下の情報規制問題局(OIRA)が受理した。重要なのは暗号資産カストディ規制が単純に復活することではない。資産運用会社が顧客の暗号資産を預ける際、銀行、証券会社、暗号資産専門カストディアンなどのうち誰を制度上認めるのかという市場の入口が再設計されようとしている。

目次

何が起きたのか?

OIRAの公開情報によると、SECの規則案はRIN 3235-AN46として8月25日に審査入りした。規則は提案段階で、経済的に重要な規則として分類されている。一方、規則本文はまだ一般公開されておらず、具体的にどの事業者を適格カストディアンとして認めるのか、暗号資産をどのように分別管理させるのかといった詳細は判明していない。

SECの規制計画では、投資顧問会社の顧客資産と投資会社のファンド資産について、暗号資産を含むカストディ規制を改善・現代化すると説明している。市場や証券保有方法の変化によって不要になった一部の負担を取り除くことも目的としており、今回の規則は規制緩和方向の措置として分類されている。

SECは2023年にも「Safeguarding Advisory Client Assets」と呼ばれる大規模な改正案を提示していた。この案では従来の資金と証券だけでなく、暗号資産を含む幅広い顧客資産へ保管規則を拡張し、分別管理やカストディアン破綻時の保護を強化する内容が盛り込まれていた。しかしSECは2025年6月にこの提案を正式に撤回し、再び規制措置を取る場合には新しい規則案を提示するとしていた。今回の動きは、その新たなルール形成に当たる。

なぜ重要なのか?

現在の投資顧問向けカストディ規則では、顧客の資金や証券を保管する場合、原則として適格カストディアンを利用する。対象には銀行、登録ブローカー・ディーラー、一定の先物取次業者、条件を満たす海外金融機関などが含まれる。

しかし暗号資産では、すべての資産が証券に該当するわけではなく、秘密鍵の管理方法も従来の証券保管とは異なる。このため投資顧問会社からは、現在の規則の下でどの暗号資産を誰に預ければ適法なのかが分かりにくいという問題が以前から指摘されてきた。

新しい規則でこの境界が明確になれば、資産運用会社が暗号資産商品を提供する際の保管先選定にも直接影響する。暗号資産を扱えることと、SEC規制下の運用会社から顧客資産を預かれることは同じではないからだ。

市場構造への影響

カストディ規則は表面的には資産保管のルールだが、実際には機関市場への参入条件を決める。大手資産運用会社がビットコインやトークン化証券を運用しても、その資産を規則に沿って預けられる事業者が限られていれば、機関市場の資金は少数のカストディアンへ集中する。

逆に、新ルールが州認可の信託会社や暗号資産専門企業など幅広い事業者に制度上の経路を認めれば、銀行と暗号資産ネイティブ企業の競争が広がる可能性がある。自己管理やマルチシグ、MPCなど新しい保管方式をどこまで認めるかによっても市場構成は変わる。

ただし現時点では、SECが適格カストディアンの範囲を実際に拡大すると決定したわけではない。公開されているのは規則の目的と審査状況までであり、具体的な条件は正式な提案文を確認する必要がある。

資金・規制・流動性との関係

機関投資家にとってカストディは、単なる秘密鍵保管サービスではない。顧客資産と会社資産の分離、取引記録、監査、破綻時の権利関係、資金移動の承認管理などを含む金融インフラである。規則上利用できる保管先が少なければ、そこに機関資金と取引フローが集中しやすい。

一方、適格な事業者が増えれば、保管手数料だけでなくステーキング対応、トークン化資産への接続、取引執行、担保管理といった周辺サービスでも競争が起きる。暗号資産ETFやファンド、投資一任口座などが増えるほど、資産を誰が保管するかは取引所選びと同じくらい市場流動性に関係してくる。

今回の規則案は投資顧問会社だけでなく投資会社の資産保管も対象としているため、最終的な内容によっては暗号資産ファンドやトークン化証券を扱うより広い運用市場へ影響が及ぶ可能性がある。

初心者向け補足

カストディアンとは、投資家や金融機関に代わって資産を安全に保管する事業者だ。暗号資産の場合は秘密鍵の管理が中心になるが、機関投資家向けでは誰が資金移動を承認できるか、顧客資産が会社の資産と分離されているかなども重要になる。

適格カストディアンとは、単に技術的に安全な会社という意味ではない。法律やSEC規則が、投資顧問会社の顧客資産を預ける先として認める条件を満たした事業者を指す。そのため新しい規則でこの条件がどう定義されるかは、暗号資産保管業界の参入条件そのものになる。

Web3Timesの視点

今回のニュースを、2023年に撤回された厳格な暗号資産規制が再び戻ってきたと捉えるのは早い。SEC自身は今回の規則を、暗号資産への対応を明確化しながら古くなった負担を取り除く現代化策として位置付けている。しかも規則本文はまだ公開されていない。

見るべきなのは、最終的に「誰なら機関投資家の暗号資産を預かれるのか」という境界線だ。銀行だけに近い条件を求めるのか、暗号資産専門カストディアンにも広い経路を設けるのか、技術を使った自己管理まで認めるのかによって市場の集中度は大きく変わる。

暗号資産がETFや投資ファンド、トークン化証券として既存金融へ入るほど、その裏側では必ず資産を保管する主体が必要になる。今後の焦点は規則案の公表後、適格カストディアンの範囲、資産分別、破綻時保護、暗号資産固有の秘密鍵管理をSECがどう整理するかだ。カストディ規則は地味に見えるが、機関資金がどの企業を経由して暗号資産市場へ入れるかを決める基礎インフラのルールになる。

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