チェイナリシスが2025年の課税対象となり得る暗号資産活動を4570億ドルと推計、税務報告の焦点が取引所データからオンチェーン捕捉へ

Last Updated on 2026年8月28日 by oba3

ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)が、2025年に世界で発生した課税対象となり得るオンチェーン暗号資産活動を少なくとも4570億ドルと推計した。対象はビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム(Ethereum)、ソラナ(Solana)、トロン(Tron)、BNBスマートチェーン(BNB Smart Chain)、ベース(Base)の6チェーンだ。注目すべきなのは推計税額の大きさではない。経済協力開発機構(OECD)の暗号資産報告枠組みCARFで直接把握しやすい活動は分析対象の14%にとどまり、残る86%にはDEX、P2P送金、ステーキングや融資などのオンチェーン活動が含まれる。暗号資産課税では、取引所から報告書を受け取る仕組みだけでなく、公開ブロックチェーン上の資金移動をどう税務情報へ変換するかが次の課題になっている。

目次

何が起きたのか?

チェイナリシスは2026年8月26日、2025年の世界の暗号資産活動を税務の観点から分析したクリプト・タックス・レポートの内容を公表した。6つの主要ブロックチェーンについて、資産売却による利益、マイニング、ステーキング、レンディング、暗号資産ギャンブルなどから生じる所得、さらに商品・サービスへの暗号資産決済などを分析し、課税対象となり得る活動を少なくとも4570億ドルと推計した。

国別では米国が約1126億ドルと最大だった。地域別では北米が約1346億ドル、EUが約1251億ドル、東アジアが約547億ドルとなった。ただし4570億ドルは実際の納税額を示す数字ではない。各国では売却益や所得に対する課税方法、非課税条件などが異なるため、チェイナリシスは税法上最終的に課税される金額ではなく、課税判定に関連し得る経済活動を推計している。

さらに、この数字には中央集権型取引所内部で完結するすべての取引が含まれているわけではない。取引所内部の注文帳だけで行われた売買、ステーキング、融資などはブロックチェーンから直接観測できないため、同社は4570億ドルを全体の下限に近い推計と位置付けている。

なぜ重要なのか?

各国が暗号資産課税を強化するうえで大きな役割を持つのがOECDのCARFだ。CARFでは中央集権型取引所、ブローカー、一部のウォレット事業者などに顧客情報と暗号資産取引の報告を求め、参加国間で情報交換する。数十カ国が2027年から情報交換を開始する予定となっている。

しかしチェイナリシスの分析では、CARFによって把握されると考えられるイベントは、今回分析したオンチェーン課税対象活動の14%程度だった。残る86%にはDEX取引、P2P移転、自己管理ウォレットでの活動、オンチェーン所得、暗号資産による支払いなどが含まれる。

これは86%が非課税という意味ではない。課税義務と情報報告制度は別の問題だ。利用者に税務上の申告義務があっても、その取引を税務当局へ自動報告する金融仲介業者が存在しないケースが多いということになる。

市場構造への影響

伝統金融では銀行や証券会社が取引記録を持ち、税務当局は金融機関から報告を受け取ることで所得や売却情報を確認できる。暗号資産でも中央集権型取引所については同じモデルへ近づけやすい。

ところがDeFiでは、利用者が自己管理ウォレットからスマートコントラクトへ直接アクセスできる。DEXで交換し、レンディング市場へ資金を預け、ステーキング報酬を受け取り、その後別のウォレットへ資産を送るまで、一つの中央事業者を通過しないことも珍しくない。

その結果、税務インフラも口座単位の報告だけでは不十分になる。誰がどのウォレットを利用しているのか、どの取引が売却なのか、どの入金が所得なのか、取得原価はいくらだったのかを複数のオンチェーン履歴から再構築する必要が出てくる。

資金・規制・流動性との関係

CARFにも自己管理ウォレットとの接点を把握する仕組みはある。例えば利用者が自己管理ウォレットから報告対象の取引所へ資産を送り、そこで売却すれば、その移転や処分に関する情報を取得できる場合がある。しかし、それ以前にDEXで何度も交換していた場合や、別のウォレットでステーキング報酬を受け取っていた場合まで完全に把握できるとは限らない。

取得原価も課題になる。ある取引所で購入した暗号資産を自己管理ウォレットへ移し、別の取引所で売却した場合、売却側の事業者は購入時の価格を持っていない可能性がある。売却額だけでは正確な利益を計算できないため、複数サービスをまたぐ履歴を結び付ける必要がある。

さらにCARFは過去のすべての取引を遡って報告する制度ではない。制度開始前から自己管理ウォレットに保有されている暗号資産については、取得履歴や移転経路の把握が別の課題として残る。税務当局にとってオンチェーン分析は、取引所報告を置き換えるのではなく、その空白を補う役割を持つことになる。

初心者向け補足

CARFは暗号資産そのものへ新しい税金をかける制度ではない。暗号資産サービス事業者が顧客や取引に関する情報を税務当局へ報告し、国境を越えて情報交換しやすくするための枠組みだ。

一方、DEXやP2P取引では銀行や証券会社のような中央管理者が存在しない場合がある。ブロックチェーン上には取引記録が残っていても、そのアドレスを誰が所有しているか、どの国の納税者なのかは記録だけでは分からない。そこで取引所のKYC情報とオンチェーン履歴を組み合わせる作業が必要になる。

Web3Timesの視点

今回の4570億ドルという数字で見るべきなのは、暗号資産からどれだけ税収を得られるかではない。より重要なのは、暗号資産の経済活動が中央集権型取引所の外側へ広がったことで、従来型の税務報告モデルだけでは取引全体を把握しにくくなっていることだ。

CARFによって中央集権型サービスの報告網が整えば、暗号資産税務の入口は大きく改善する。一方でチェイナリシスの推計では、今回分析したオンチェーン活動の86%がその直接的な報告範囲の外側に位置する。DEX、自己管理ウォレット、P2P、ステーキング、レンディングが拡大するほど、この差は制度上の重要な論点になる。

今後注目すべきなのはCARF参加国の数だけではない。取引所報告とブロックチェーン分析をどう接続するのか、複数ウォレットをまたぐ取得原価をどう復元するのか、DEXやオンチェーン所得をどの主体が報告するのかが重要になる。暗号資産税制は税率を決める段階から、仲介者が存在しない市場でも経済活動を追跡できる税務インフラを構築する段階へ移りつつある。

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