ECBがPontesを開始しトークン化証券投資も準備、中央銀行マネー決済と証券市場をつなぐ欧州基盤が稼働

Last Updated on 2026年9月23日 by oba3

欧州中央銀行(European Central Bank・ECB)とユーロシステムが2026年9月21日、トークン化資産の取引を中央銀行マネーで決済する「Pontes」を開始した。ECB自身も自社資金の一部を使ってトークン化証券へ投資する準備に入り、購入時の決済にはPontesを利用する方針だ。今回の重要点は、中央銀行が新しいトークンを発行したことではない。民間のDLT市場で売買される証券と、既存の中央銀行決済基盤を接続し、証券の受け渡しと資金決済を一体化する市場インフラを実運用へ移したことにある。

目次

何が起きたのか?

ユーロシステムは9月21日、Pontesの初期運用を開始した。Pontesは市場側の分散型台帳技術(DLT)プラットフォームと、ユーロシステムのTARGETサービスを接続し、トークン化された金融商品のホールセール取引を中央銀行マネーで決済する仕組みだ。

初期参加者にはドイツ銀行(Deutsche Bank)、サンタンデール(Santander)、欧州投資銀行など13の市場参加者が含まれ、DLT運営事業者としてクリアストリーム(Clearstream)、Cashlink、SWIAT、Axiologyが参加している。ドイツ連邦銀行も市場参加者として接続している。

ECBは同日、自らの非金融政策ポートフォリオの一部を使い、トークン化証券へ投資するための準備作業も始めた。初期対象はユーロ建てで、ユーロ圏の中央政府、地方政府、政府機関、欧州の国際機関などが発行する証券を想定する。実際の投資時期や運用条件は準備完了後にECB理事会が決めるため、現時点で購入額や開始日は確定していない。

なぜ重要なのか?

トークン化証券を発行できても、売買後の代金をどの資産で決済するかが不安定なら、機関投資家は大規模には使いにくい。民間ステーブルコインや商業銀行マネーだけに依存すれば、決済資産そのものの信用リスクを考える必要がある。

Pontesはこの現金側に中央銀行マネーを使えるようにする。市場参加者はユーロシステムのDLT上のキャッシュトークン、またはリアルタイム総額決済システムT2を使って支払いを完了できる。T2で決済した場合は、中央銀行マネーで最終性が確定する。

つまり欧州のトークン化市場は、証券をデジタル化する段階から、その証券を中央銀行マネーで安全に交換する段階へ進んだ。

市場構造への影響

Pontesの中核は、証券側のDLTを一つに統一することではない。複数の市場DLTとTARGETを相互接続し、既存の金融市場インフラと新しい分散型台帳を同じ決済工程へ組み込む点にある。

さらにHash-Linkと呼ばれる仕組みを使い、証券の受け渡しと代金支払いを同時に成立させるDvPに対応する。一方だけ成功する状態を避けられるため、取引相手が資産を渡したのに資金を受け取れないといった決済リスクを抑えられる。

これは既存の証券決済をすべてブロックチェーンへ置き換える構想とは異なる。中央銀行側のT2を残しながら、市場側のDLTと同期させる設計であり、欧州は既存基盤とオンチェーン市場を橋渡しする方法を選んでいる。

資金・規制・流動性との関係

Pontesに参加できるのは誰でもではない。初期段階ではT2へのアクセスを持つ金融機関のほか、認可された中央証券保管機関、EUのDLTパイロット制度下の取引・決済システム、中央清算機関、銀行、投資会社などが対象になる。

そのため、中央銀行マネーがパブリックチェーンへ無制限に開放されたわけではない。既存の金融規制と監督を受ける主体を入口にしながら、トークン化市場との相互運用を広げる設計だ。

ECB自身が投資家として参加することにも意味がある。取引執行、決済、システム運用、ポートフォリオ管理まで実際に経験することで、中央銀行が外部から制度を監督するだけでなく、市場インフラの利用者として課題を把握できる。

初心者向け補足

中央銀行マネーとは、中央銀行に対する直接的な債権として使われる決済資産だ。銀行同士の大口決済では信用リスクが非常に低い決済手段として利用されている。

Pontesは一般消費者向けのデジタルユーロとは別の仕組みだ。対象は銀行や市場インフラが行うホールセール金融取引で、トークン化証券の代金を中央銀行マネーで決済できるようにする。

またPontes自体が株式や債券を発行するわけではない。民間や公的機関が別のDLT基盤で発行・取引する資産と、ユーロシステムの決済基盤をつなぐ役割を担う。

Web3Timesの視点

今回の変化を「ECBもトークン化証券へ投資する」とだけ見ると、市場への影響を小さく捉えてしまう。より重要なのは、欧州でトークン化された証券と中央銀行マネーを同じ取引工程へ組み込む常設基盤が動き始めたことだ。

今後確認したいのは、Pontesを経由する決済件数や金額、参加DLTの増加、DvP利用の割合、そしてECB自身がどの種類のトークン化証券を実際に購入するかである。さらに運用時間は段階的に延長され、2028年までに機能拡張する計画が示されている。

欧州のRWA市場で次に問われるのは、資産を何件トークン化したかではない。発行された証券を規制金融機関がどの決済資産で受け渡し、どの時点で法的な最終性を得るかだ。Pontesはその現金側へ中央銀行マネーを持ち込み、証券市場と決済インフラを一体化するための実運用基盤として位置付けられる。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Web3をやさしく解説するOba3

目次