CFTC議長がCLARITY Act停滞時の独自ルール策定を示唆、米暗号資産制度が議会立法と行政規則の二重経路へ

Last Updated on 2026年8月21日 by oba3

米商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ(Michael Selig)議長が2026年8月20日、CLARITY Actが議会で成立しない場合、既存のCommodity Exchange Actに基づく権限を使って暗号資産市場向けの規則策定へ進む考えを示した。セリグ議長はすでに職員へ、暗号資産市場構造に関するルールの検討を指示しており、法案が成立しなければ正式な規則提案へ速やかに移る方針も明らかにしている。ただし、CFTCが新たな法的権限を自ら作るわけではなく、現時点で正式な規則案も公表されていない。今回の焦点はCLARITY Actの成否だけではない。議会が制度を固定できない場合、既存法を使う監督当局がどこまで先に市場構造を実装できるのかという、立法と行政の役割分担が重要になっている。

目次

何が起きたのか?

セリグ議長は8月20日に開かれたCFTCのInnovation Advisory Committee初会合で、暗号資産市場に関する今後の規制方針を説明した。最優先はCLARITY Actによって、暗号資産証券とその他の暗号資産の管轄線や現物市場に必要な基本原則を議会が法律として固定することだとした。

その一方で、法案が停滞した場合に備え、CFTC職員へ既存権限を使った暗号資産市場構造ルールの検討を指示していることも明らかにした。セリグ議長は、議会に採決の機会を与えた後も進展がなければ、正式な規則提案へ進む考えを示している。

具体的な構想の一つが、現在のCFTC登録事業者や未登録の暗号資産取引事業者について、指定契約市場であるDCMの枠組みを応用した「crypto asset market」と呼ばれる市場カテゴリーへ接続する方法だ。とくに、レバレッジ、証拠金、資金供与を伴う個人向け暗号資産取引を、目的に合わせたルールの下でCFTC監督市場へ取り込む案が示されている。

また、オンチェーン金融プロトコルについても、開発者との協議を進め、米国内で適法かつ規制に適合した形で提供できる経路を検討するよう職員へ指示した。ただし、セーフハーバーや登録免除が正式決定したわけではない。

なぜ重要なのか?

CLARITY Actの役割は、単に暗号資産を証券か商品かに分類することではない。証券取引委員会(SEC)とCFTCがどの市場を監督するのか、現物暗号資産市場にどのような基本原則を適用するのかを法律として固定する点にある。

議会立法で制度が作られれば、監督当局が変わっても簡単には枠組みを変更できない。一方、CFTCが既存のCommodity Exchange Actを根拠として行政規則を作る場合、制度化できる範囲は現在与えられている権限に限られる。

それでも今回の発言が重要なのは、CLARITY Actが成立しなければ制度整備が止まる、という状態ではなくなったことだ。CFTCは議会の結果を待ちながら、既存権限を使う第二の制度経路をすでに準備している。

ただし、この行政経路だけで米国の現物暗号資産市場全体を包括監督できるとは限らない。とくにセリグ議長が具体的に示しているのは、既存のDCM制度や個人向けレバレッジ・証拠金取引に関する権限を活用する方法であり、CLARITY Actが想定する包括的な市場構造法とは範囲が異なる。

市場構造への影響

米国の暗号資産市場では、これまでSECとCFTCの管轄境界が事業者の大きな不確実性となってきた。ビットコイン(Bitcoin)のように商品として広く扱われる資産がある一方、その他のトークンでは証券法が適用されるかどうかを個別に判断する必要があった。

CLARITY Actはこの境界を議会が法律として整理する経路だ。一方、CFTCが独自規則へ進めば、既存のCommodity Exchange Actを利用して市場構造の一部を先に実装することになる。

とくに重要なのが、レバレッジや証拠金を伴う暗号資産取引だ。Commodity Exchange Actには、一定の個人向け商品取引について、レバレッジや資金供与を伴う場合にDCMなどの規制市場で取引させる既存規定がある。今回の構想は、その制度を暗号資産市場へ合わせて具体化するものと読める。

これが実装されれば、米国外へ集中してきた高機能な暗号資産取引の一部を、米国の規制市場へ戻す経路が広がる可能性がある。ただし実際の流動性移転は、レバレッジ上限、証拠金要件、本人確認、税務、マーケットメーカーの参加条件などによって左右される。

さらに制度競争の軸も変わる。これまで注目されてきたSEC対CFTCという管轄争いだけでなく、議会が恒久的な制度を決めるのか、監督当局が既存法の範囲で先に市場を設計するのかという、立法対行政の時間軸が市場参加者にとって重要になる。

資金・規制・流動性との関係

暗号資産事業者に明確な登録経路ができれば、米国内へ資本やマーケットメーカーを呼び戻す条件の一つになる。とくにレバレッジ取引や永久先物に近い商品を規制市場で提供できるようになれば、これまで海外市場を利用していた取引需要の一部が国内へ移る余地が生まれる。

一方、行政規則による制度には法律と比べて変更余地が残る。もちろん規則は政権交代だけで即座に変更できるものではなく、通常は正式な規則制定手続きや理由説明、場合によっては司法審査も必要になる。それでも議会法に比べれば、将来の当局が解釈や制度設計を見直せる余地は大きい。

この違いが、業界がCLARITY Actを重視する理由の一つだ。法律でSECとCFTCの権限や現物市場の基本原則が固定されれば、企業は長期間を前提にライセンス、システム、資本へ投資しやすくなる。行政規則は市場を先に動かす手段にはなるが、長期的な制度の安定性では議会立法の方が強い。

またCLARITY Actの停滞について、セリグ議長は民主党側の反対を強く批判しているが、議会では政治家と暗号資産事業の利益相反や倫理規定など複数の論点が残っている。法案が進まない理由を一つの政党や一つの争点だけに還元するのは適切ではない。

初心者向け補足

CFTCは米国の先物、オプション、スワップなど商品デリバティブ市場を監督する連邦機関だ。暗号資産ではビットコインなどに関連するデリバティブを監督しているが、現在の法律ではすべての現物暗号資産取引を包括的に監督する一般的な権限を持っているわけではない。

CLARITY Actは、その不足部分を議会立法で整理しようとする法案だ。SECとCFTCの管轄線や現物市場の基本ルールを法律で定めることが中心になる。

一方、CFTCが今回示したのは、法案成立を待つだけではなく、現在持っている権限を使って一部の市場制度を先に作る方法だ。とくにレバレッジや証拠金を伴う取引では、既存の商品先物法の枠組みを利用できる余地がある。

ただし現時点では正式な規則案はまだ出ていない。暗号資産市場向けルールの探索と準備が進んでいる段階であり、具体的な登録要件、対象商品、施行時期は今後の規則制定手続きを確認する必要がある。

Web3Timesの視点

Web3Timesが今回見るのは、CLARITY Actが成立するかという議会ニュースだけではない。焦点は、議会が市場構造を固定できない場合、誰がその空白を埋めるのかという制度形成の順番だ。

米国ではすでに、SECとCFTCがProject Cryptoなどを通じて既存権限を使った暗号資産制度の整理を進めている。CFTCも永久先物やレバレッジ取引について、現在の法体系からどこまで規制市場へ取り込めるかを検討してきた。今回の発言は、その流れを暗号資産市場構造全体のrulemakingへ広げる準備と見ることができる。

重要なのは、CFTCがCLARITY Actを不要と考えているわけではない点だ。議会が管轄線と現物市場の基本原則を法律として固定することを最優先としつつ、それが実現しない場合にCommodity Exchange Actの既存権限で可能な部分から制度化するという二段構えになっている。

今後見るべきなのは、CFTCが正式な規則案へ進むか、crypto asset marketというDCM型カテゴリーをどこまで具体化するか、レバレッジ・証拠金取引の対象範囲をどう定めるか、オンチェーン金融プロトコルへどのような適法経路を示すかだ。そしてCLARITY Actが後から成立した場合、それらの行政ルールが新しい法律へどう組み込まれるのかも重要になる。米国の暗号資産制度は、議会が完成形を一度に作るだけでなく、行政が既存権限で先行実装し、その後に法律が恒久化する可能性を持つ二重経路へ入っている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Web3をやさしく解説するOba3

目次